最終章
第71章
アイシンが指さした先に、ミオが目にしたのは、田んぼの中に作られ美しい池と、側には整地されたウッドデッキに無数のキャンドル、テーブルには、豪華な食事と、シャンパン、椅子等が用意されていた。
その池を見た時から、すでにミオの涙は止まらない。
「アイシン・ヴァイオレット・・・、あなた・・、思い出したの?」
「ああ、はっきりと、思い出した。ミオが、たまに泣いている理由がわからず、どこか具合が悪いのかとも考えたが、それなら、必ず伝えてくれると思った。だから、自分の中に小さな想いを、探し始めた。もう、二度と、離れる事がないように、一生懸命考えた」
「そして、その時、おかしなことに気が付いた。二度と離れない?と言う事は、どのような事なのか・・。僕たちは、離れた事があるのか?」
「それから、自分の記憶の整理に時間がかかったが、ミオが僕の為に、今までしてくれた事を、一つ、一つ、思い出していったよ。ありがとう、ミオ。本当に、愛している」
それから、突然、アイシン・ヴァイオレットは膝まづいて、ミオに向けて、ヴァイオレット家の紋章の指輪を、差し出した。
「ミオ・プラスムス、もう一度、僕と結婚して下さいますか?僕たちには、既に子供や孫が存在しているが。僕は、あの時、君を置き去りにしたまま、死んだことを本当に後悔している。だから、もう一度、僕と一緒に、この世界で、共に生きて欲しい。二人の人生は、これからもう一度始まり、ここで終わる」
ミオの目からは涙が溢れ、長年の片思いが報われた気持ちになった。彼は私を愛して、私も彼を愛してる。だから、ミオは、嬉しそうにアイシンに返事をした。
「あなた・・・・、はい、喜んで、お受けします」
ミオが、アイシンに抱き着いた瞬間に、沢山の花火が上がった。
「お母さん、おめでとう」とマユが花束を渡してくれた。
「ダルマル池と、すべての演出は、私の夫が魔法で作ってくれました。それから、澪さんがお母さんだと思い出せなくてごめんなさい。あと・・・・、いつも、一緒にいてくれてありがとう」
「マユ・・・、幸せになってくれて、ありがとう」
托師が、
「父上、母上を抱き上げなくていいのですか?」
アイシンは、托師から催促され、ミオをいつもの様に抱き上げ、美しい花火は夜空を輝かせるのを見ていた。
「あなた、托師は・・タクシンなのですね」
「ああ、そうだ、タクシンだ。タクシンは、君からしか産まれない」
「主は、今日の事を知っているのですか?」
「知っている。すべて知っていて、僕たちを幸せにする為に、導いてくれていた」
「ーーーそれは、どうでしょう?主で、先王ですよ。あなたは本当にいい孫です」
「とにかく、座って、みんなで昔の事を話しましょう。マユは、覚えているの?」
「はい、父上が思い出した瞬間に、私たちも思い出しました。全ては父上の記憶がカギだったのです。でも、何度も生まれ変わっても、私たちが家族でいれる事が、本当に嬉しかった」
「でも、その旅もこの生涯で終わります。記憶が残っている事は、いいこともあるけど、辛いこともあります。だから、普通の人間のように、輪廻を待って、新しい人生を歩くことも、必要になるでしょう」
「しかし、僕たちは、本当に、この人生で終わりなのか?」
「え・・?」
「先王が、紫家の主だと知って、主の家を訪ねた」
「どうでしたか?」
「う〜〜〜ん、高校生くらいに一気に若返っていた人は、たぶん、主だったんだ。全くわからなかったよ」
「主が若返る為には、自分の部下を一人一人解放する事が必要だったらしい・・・?」
「90歳で子供作ったのに、どう言うこと?」
「ジュリエールが、この世界に生まれて来る事がわかっても、老人の姿では、どうにもならなかったらしい」
「だから、わたくしを解放するのは・・・・、必然だったの?」
「それは、どうかな?結局は、僕たちは彼の家族で、ミオがいなければ僕たちはどうなっていたか・・・」
「でも、ジュリエールも主と同じ高校生なのかしら?」
「その事も聞いてみたが、若返りの調整がうまくいかずに、ジュリエールは、その学校の新人教師らしい」
「え???なんと・・・最後の詰めが甘い・・・、こんなに子孫たちに迷惑をかけて、年下なんて・・・、あの大人のジュリエールが相手にしてくれるでしょうか?」
「それは、きっと、大丈夫だろう。主ならどんなに汚い手でも使ってもジュリエールを手に入れるさ・・・。なんでもする人だ」
ーーー最後の花火が上がって、マユは自分の国に戻り、残った3人は、マユを見送った。
その後、ミオは影になったタクシンの話を、アイシンに話し、主は、影のタクシンも解放してくれた事を告げた。
「そうか・・・、もう一人のタクシンが存在していて、ずっとミオの側にいてくれたんだね」
「そうです。本当に、感謝しかありません」
「ミオ、僕は、君に本当に誓うよ。これからはずっと一緒だ。一緒に、人生をまっとうしよう」
「はい」
◇◇◇◇◇◇
一方、思った以上に若返ってしまった主人は、緑風と言う名前で、高校3年生の転校生になった。
職員室で、担任に、挨拶をしながら、ジュリエールを探す。
「緑風くんは、希望する大学とかは決まっているの?」
「いいえ、まだ、決まっていません」
「もしも、受験に関してわからない事が、あったら、学生指導室に新人の先生がいますから、相談して下さい」
「はい」
「あっ、丁度、先生がいらしたわ・・・。樹里絵先生、転校生の緑風くんです。都会の学校は初めてらしいので、受験に備えてご指導よろしくお願いします」
樹里絵先生は、冷たい視線を緑風に送り、軽く会釈をして、その場を離れた。
その後ろ姿は、昔のままのジュリエールで、嬉しくて仕方がなかった。
次の日からは、毎日、学生指導室に通い、くだらない内容の相談をして、緑風は、樹里絵先生に、あからさまな態度で接していた。
「樹里絵先生の指導で、東京の一番いい大学に合格したら、それは、先生の役に立つのでしょうか?」
「そうですね。私の実績になるのであれば・・、海外の大学がいいです」
「海外は・・遠いのでは?」
「大丈夫です。あなたは転校して来たばかりで、学年トップの成績を収めています。校長先生も大変お喜びです」
緑風は、強行手段に出て、ジュリエールに近づく、
「海外の大学に行ってしまったら、先生とは、もう・・、会えないのでは?」
「高校生は、高校を卒業すると、教師と会う機会はありません。普通の事です」
この学校の学生指導室に通う生徒は、殆んどいない。主が、そうしているのだが、そんな中、毎日、欠かさず通って来る学年トップの生徒の気持ちを理解できないハズがない。
「先生・・・、では、教えて下さい。樹里絵先生が、卒業しても会いたい生徒は、どのような生徒ですか?僕たちには、どういう理由か、年齢の差があります。だから、僕が、卒業後も会いたい人間になって見せます」
ジュリエールは、しばらく考えて・・・、
「先ずは、毎回、メモとペンを携えてくる人間は、信用していません。後、己が死んだあとも、その世界を支配するような人も嫌いです。その為に、自分の部下を引き込み、娘や孫・・、ましてやひ孫までに面倒かける独裁者も許しがたいです」
「・・・・・・」
「あの時、正直に、気持ちを伝えて下されば、それでよかったのです。その後の事は、わたくしがどうにでもしました」
「あなたは、わたくしを、溺愛しすぎで、むかつきます!! 」
「ジュリエール!! もう、思い出したのか?」
「いいえ、子供の頃に、ミオ様が訪ねて来ました。それだけです・・・・。私を誰だと思っているのですか?」
「・・・・・・」しばらくの間、主は、話すことが出来ずに、じっと、美しいジュリエールを見て、その後、大声で笑い出し、何度も、何度もジュリエールを抱きしめ、笑っていた。
「ハハハハ・・ジュリエール! 最高だ! 」
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この小説を、読んでくださったすべての方に、感謝します。この後、誤字等の修正を行う事がありますが、内容の変更はない予定です。ありがとうございました。感謝、感謝です。
ーーー最後は、・・・、やはり、主人公。




