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食事と女主人

第7章

 初夜がないまま、アイシン男爵が王宮に出勤する日が近づいて来る。


 体調も戻り、今までのミオの記憶の整理も終わり、一番最初の問題は食事だと気づく。


 新しく雇ったフィージアは意外に使える女の子で、


 「奥様が、あの店で、召し上がっていたスープは作れます」と、お抱え料理人のシェフのマカフィに伝えた。


 アイシン男爵からも、ミオにわからないように、野菜を少しづつ食事に取り入れる様に、指示を受けていたので、その小さな女の子のレシピを参考にしながら、シェフのマカフィは、苦難の道を進んで行く事を覚悟していた。


 「はぁ・・・、その作戦・・・お嬢様が小さい頃から、沢山の料理人が試しましたが、お嬢様は、何をしても気づいてしまいます。・・・・」


 しかし、現在のミオは、なんでも食べられる。そして、この究極のダイエット娘の体では、生きて行けない。


 今は、虫でも食べれそうな程に、栄養を求めている。


 周りにバレないように、偏食生活を、どうにかすることも考えなくてはいけない。そこで、ミオは、フィージアに指示を出す。


 「フィージア、今は、バタバタして、果物を食べるにも埃がかかってイヤです。だから、シェフにすべての果物を砕いてスムージーにしてもらって来て」


 「・・・スムージーですか?」


 「そう・・・果物をジュースになるまでつぶして、果肉がストローで口まで運ばれるくらいにしてくれる?」


 「・・・はい、シェフのマカフィさんにそのように伝えて見ます」


 「後、卵サンドをお願いします。埃がこの空気の中を回っているうちは、正式な朝食や昼食は無理でしょうから・・・」


 「わかりました」


 フィージアが出て行って、ミオは一安心。


 「しかし、お腹が空いたわ・・・・。この部屋は、お菓子出来ていると思える程、お菓子はあるけど、今は、とにかく、肉が食べたい! 」


 その後、厨房では、そのスムージーと言う物に取り掛かり、色々な試作品が作られていた。たまたま、水を飲みに来たアイシン男爵も、試作品を飲んで、


 「美味しい、素晴らしく美味しい。これをミオに?」


 「はい、一度試しに、お出ししてみようと思います」


 アイシン男爵は、その大量に残っているスムージーの残骸を見て、


 「この中に、あの貴重な果物も入っているの?」


 「はい、プラスムス様から、ミオ様にどうしても食べさせたい果物だと、手渡されましたから・・」


 「そう、でも、こんなに大量にミオは飲めないよね。今いる使用人たちと町の職人たちにも分けてくれるか?」


 「ええ・・、私はいいですけど、お嬢様にお聞きしてみないと・・・・」


 「ミオには、私から話すから、大丈夫。それに、ミオは僕の奥さんだ。そう呼んでくれ! 」


 「はい、わかりました。気をつけます」


 「それと、彼女は見た目で判断することが、多く、スープも平たい皿に入れるのではなく、・・壺のような入れ物に、入れて出してみたらどうだろうか?」


 「壺ですか?」


 「当然だが、見た目の良い壺がいい、中身が見えなくて、覗き込む行為は、行儀が悪いだろ?

だから、見えないように、肉とか魚、そして、野菜入れてくれ」


 「彼女は、今、何日も、食べていない飢餓状態で、親元を初めて離れ、慣れない王都での新生活、精神的に辛いハズだ。そういう時こそ、栄養をつけた方がいい。だから、食事は一番大切になる。よろしく頼むよ」


 「はい、わかりました。より一層、努力します」


 「とにかく、今日は、昼食が出来たら、ミオと一緒に、庭で食べるよ」

 「はい」


 ミオの連れて来た使用人たちに、アイシン男爵は、徐々に溶け込んでいる。人柄の良さがにじみ出ていて、安心して、お嬢様を任せられると感心していた。


 それから、ミオとアイシン男爵は、埃から逃れる為に、庭の古いパーゴラの下にテーブルと椅子を出し、ランチを楽しむ。久しぶりの夫婦の会話が始まる。


 フィージアが、食事を運び、簡単な料理が並べられる。ミオは、どれも美味しそうだと思いながら、うっかり手が出て、バレる事を心配している。


 ミオは、注文したスムージーを手に取り、一口飲んで、人参を感じたが、そこは気づかない振りをして、自然に飲み続けた。


 「今、ミオが飲んでいるそのスムージーと言う物、厨房にたくさんあったから、使用人や、今いる職人たちにも配ったけど、いいかな?」


 「はい、いいです」


 次は、謎の壺をガン見している。

 「フィージア、これは何?」


 アイシン男爵が答える。

 「食器もまだ揃っていないみたいで、この壺にスープが入っている」


 ミオは中身を覗こうとして、止めて、見たい、止める、を繰り返し、最後にフィージアを見た。


 フィージアが、

 「あのお店のスープと同じレシピで出来ています」といい。


 その白と金色で出来ているマグカップの様な大きさの壺にミオはスプーンを入れ、一口飲んだ。

 (ラッキー! ベーコンがものすごく細かく入っている。美味しい! )


 そのまま、卵サンドを食べ、スープも飲み干し、スムージーもすべて飲んでミオは、久しぶりに、お腹一杯になった。


 ミルクに蜂蜜が入ったお茶が運ばれて、会話が始まる。アイシン男爵が、


 「この家に、家令を置きたいと思う。ミオは推薦する人はいるか?」


 「家令はトハルトでいいのではないでしょうか?一番、頼りになると、父が申していました」


 「それと、僕に誰か一人貸してもらえるかな?」


 「ーーーそれは、従者と言う事ですか?そうなると、私の使用人から選ぶと、旦那様のすべてが、私や父に筒抜けになりますが、よろしいのでしょうか?今までの従者を、領地から、お呼びになるお考えはないのですか?」


 「今まで、僕についていた従者たちは、父の従者で、彼らが、病気の父の側を離れる事は、辛い選択で、できないだろう。それに、君の使用人達以上の人物を、これから探し、教育するには時間がかかる。どうだろうか?」


 「ええ、わたくしは構いませんが、その辺の事は、トハルトとご相談なさってください」


 「それから、この屋敷が整ったたら、メイドを増やすか?」


 「これから王宮に出勤してから、給金が決まるだろうが、1人位なら僕も君の為に雇い入れる事ができると思う。これからは、君はこの屋敷の女主人として、色々、忙しくなるだろうから・・・」


 「旦那様、わたくしが、本当にそのような事ができるとお考えですか?」


 「それに、この屋敷にメイドを増やす事はありません。フィージアだけで大丈夫です」


 「ミオ、私も王都での貴族間の付き合いはわからないが、特殊な場合は、君にも助けてもらいたいと思っている」


 「旦那様、大丈夫ですよ。わたくしは貴族ではありません。わたくしとお付き合いしたいと申してくるお方はきっといません。その辺の事は、母から聞いています」


 「・・・・・・」


 「旦那様、それより、この庭には、池がありませんね?」


 「??????」


 「池を作ってもよろしいでしょうか?」


 テーブルの近くに来たトハルトは、アイシン男爵に助言する。


 「ミオ様は、池がお好きなようで。池の中に魚がいるとずっと見ています。・・・心の癒しの様な物だと思われます」


 「そうか・・その辺は、女主人として、好きにすればいい。庭や池は、ミオの好きにするといいだろう」


 「ありがとうございます」


 アイシン男爵は、知らなかった。その池を作る為に、土地を買い、川から水を引き、ミオが納得できる池が出来るまでは、その後、2年もかかる事を・・・・。


 アイシン男爵が王都に登庁する前日、トハルトはヴァイオレット家の家令となり、その次の位置にいる。トナカリは、アイシン男爵の第一秘書のような役割で、従者と発表され、一緒に初出勤に同行して行った。


 朝食を食べ、ミオとその仲間たちは、ヴァイオレット家象徴である、緑色に黄色い縁で出来上がった立派な門から出勤する、ヴァイオレット男爵とトナカリを見送った。


 「・・なぜ?緑?・・・さぁ、お買い物に行きましょう」


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