異世界恐るべし!
第66章
アイシン・ヴァイオレット国王は、ミオやタクシンの事を考えない日はなかった。
雨が降れば、濡れていないか、雪の多い日が続き、薪は足りているのか、毎日、毎日、心配していたが、誰かを向かわせる事は、決してしていなかった。それは、ミオ達の家の近くで、多くのトラブルが発生していたからだった。
国王陛下の命令で、調査をすることは、彼女たちを白日の元にさらす事になる。そのことで、二人を不幸にすることは、絶対に避けたい。彼女たちを傷つけるくらいなら、一生、会えなくても仕方がないと、考えていた。
「馬車の用意を!!! 急いで外出する! 」
アイシン国王陛下は、さらりとマントを羽織り、大急ぎで部屋を出て、王宮の入り口に到着して、馬車に乗り、愛する二人の元へ急いで駆け付けた。
沢山の馬車の音が鳴り響き、タクシンは、ミオに言う。
「母上、父上が来ました。父上に会えます。・・・・・父上」
ミオは、急いで玄関に向かい、久しぶりに会うアイシン・ヴァイオレットの姿に言葉がでない。
二人は、抱き合い、久しぶりの抱擁で確かめ合った。
「ミオ、すまない。君を裏切る事になってしまって、僕は君たちを捨てたんだ。すまない」
「あなたが、わたくし達を大切に思っている事を知っています。黙って去る事がわたくし達の為だった事も、そして、あなたが一生、誰とも結婚しない事も、町に出て知りました」
「でも・・・、わたくしとタクシンは、それでも、あなたと一緒に生きる事を望みます。例え、どんなに過酷な運命が待っていても、あなたは、毎日、側にいて、私たちを抱きしめるべきです」
「ミオ、すまない。許してくれ・・・」
「ーータクシン・・、こっちへ・・・」
「父上!! 」
3人は、しばらく抱き合い、家の中に入って行った。
「この臭いは・・・?」
「ええ、雪が降る前に、沢山の薬草を見つけましたので、タクシンと二人で薬にしていました」
「10年分もあると聞いたが・・・?」
「はい、あります」
「ミオ、その薬が、今、この国には必要になる。私たちに手渡してくれるか?」
「勿論です。但し、あたなが一生、私達から離れないと誓って下さるなら、お分けします」
「ミオ、タクシン、一生、側にいてくれ。寂しくて、辛かった。会いたかった」
それから、ミオとタクシンは、王宮に入り、薬草効果で、国民にもすんなり受け入れられた。
新聞には、国王陛下はすでに王妃を娶り、立派な皇子も誕生していた。と、号外が発令された。
国王陛下直々に、王妃と皇子を迎えに行った事は、大きな出来事で、その地位を脅かす事は誰にもできなかった。ましてや、今回、ミオは大量の解熱薬を国民の為に持参し、湖で捕れた魚もスープなどで煮込むと、その効果を発揮していた。
「ミオ、魚を釣ったんだね。昔は、あまり魚を食べなかったと思うが?」
「ええ、お肉が好きだったのですが、雪の為に、買い物に出られなくなってしまって・・・」
「それに、タクシンと釣りをすることは、本当に面白かったです」
「この国は、魚を食べる事はあまりしないが、今回の事で、多くの国民が、川や湖に目を向け始めた。ーーあの魚は、薬草で燻ってあって、それなのに実に美味しかった。暖かい鍋に入れるだけで、体がものすごく温まり、熱も引いて、本当にありがとう」
「国王陛下・・・、魚は、偶然に出来たもので、そのように感謝いただくものではありません」
「しかし、小さい子供達には、美味しい薬で、誰でも食する事ができた。ミオは本当に素晴らしい」
「しかし、あなたは、今回もわたくし達を置いて行きました」
「今回も?」
「ウウウウッツ! 母上・・」
「今回・・・・」
「すまない、この方法しか、思いつかなかった。この国を滅亡させる事も出来ず、伏魔殿の中に二人を放り込む事も出来ずに・・・、もしかしたら、二人の命を狙われかねないと考えた」
「二人の命は、何よりも大切だ。君たちを失う事は、絶対に出来ないと・・」
「しかし、陛下、わたくし達は、毒殺されかけました」
「え!!! 」
アイシン国王陛下は、震え、驚きを隠さない。
「ーーーサーベンか?」
「陛下、わたくしの様な者が、貴族や官僚の事がわかるはずありません。どうして、そのように思われるのですか?」
「半年前程、ミオ達の家の周りで、不審者が、続出して、安全の為に、彼ら全員を調べた。その結果、全員が黒だった。表向きは、私に仕えているようにしていたが、自分の利権を守るために、国民から多くの賄賂をもらい、国の政策に口をはさみ、早急にしなくてはいけない公共事業を後回しにしていた。・・・あまりの忙しさに、私の目も届いていなかったよ」
「ミオ達の事が、王宮内で噂になっていたことも、気づかず、失態と思っている」
「陛下は、わたくし達を捨てた事を反省していますか?」
「反省している。ミオやタクシンを失うと思うと、心が壊れそうだ。すまない」
「それでは、これからは、わたくし達を置いて逝かないで下さい。それだけは守って下さい。それを誓って下されば、わたくしとタクシンは、あなたを許します」
「ミオ、タクシン、ありがとう。本当にありがとう。二人とも愛しているよ」
春になり、ミオとタクシンは、国民の前で、お披露目と誓いの言葉を述べ、アイシン国王陛下は、二人を披露し、この国の為に全力で、仕事をすることを伝えた。
バルコニーに立ったミオとタクシンは、誰よりも王室が似合っている二人に見えて、この国は、のんびりと復興を果たして行った。
しばらくすると、マユが産まれ、アイシンとタクシンは、初めてマユに会い、二人とも本当に、マユの誕生を喜んだ。
「母上、マユは本当に可愛いですね。ラミベース国でもこのように可愛かったですか?」
「ええ、マロンの様に、ずっと、あなたの後を、ついて回っていました」
二人は声を合わせて、
「クーガ・キーズリーの息子だけには気をつけましょう」
二人は、産まれたばかりのマユを見ながら固い決心をして、家族4人、前世では一緒に過ごせなかった時間を大切にして暮らして行った。
その後、何度も、ミオは、アイシン国王陛下にラミベース国のヒントを与えるも、この世界で、アイシンは、前世のミオを思い出す事はなく、二人は、年を取り、仲良くこの世界を去って行った。
しばらくすると、また、新しい世界に転生していた。
「母上、今度の世界は・・・・・」
「ダンジョンのようですね」
「そうなると、父上は・・・、勇者か魔王か?」
「はぁ~~~、タクシン、この世界では、彼が、私たちを思い出す事は、難しいでしょう」
「母上!!! モンスターが攻めて来ます」
「タクシン! 逃げましょう。では、父上に会うのは、次の世界で・・・幸い、リセット機能が備わっています、だから、さっさと、この世界は消滅させます!! 」
「母上~~~~!! 」
その次に訪れた国では、なんと・・・学生。攻略対象は、当然のように、アイシン皇子???
「母上・・・」
「タクシン、どうしたの?どうして、すでにあの時と同じくらい成長しているの?」
「また、ゲームの世界?」
「はい、どうやら乙女ゲームのようです。しかし、このゲーム・・・・。一番人気の第1皇子は・・・、あちらの太った・・・方で・・・・。父上は、第2皇子と設定されています」
ミオは、17歳のタクシンが指さす方を、見ると・・、
「ダルマル?・・・・ええええぇ・・・、どうして、ダルマルなの?・・リセット機能はないの?」
「ありません!! 自然にセーブされます」
「なに~~~!! 」
「当然ですが、ダルマルが相思相愛になるのは、・・・・庶民のミルクです」
「そして、母上と僕は、同級生です」
「ーーーーーー」




