ラミベースベース国②
第65章
ミオとタクシンは、寒い冬、のんびりと過ごしている。
結界の境界線付近には、大勢の人間が現れ始めたが、落馬が相次ぎ、誰も二人の家には近づけない。
「母上、昨晩も3,4人やって来ましたが、結局、ここまでは辿り着く事が出来なかったみたいですね」
「もうすぐ、この国には、大雪が降ります。その後、色々な事がわかるのではないでしょうか?」
「父上も、こちらの事は常に把握していると、思われます。大丈夫、わたくし達は、大きなヒントを与えました。後は、きっとご自身で解決して、わたくし達を迎えに来てくださります」
「母上、雪に備えての食料はどのようにしますか?」
「雪が降り始める前に、もう一度、必要な物を買い出しに行きましょう。その後、外の納屋に保管して置けば、自然の冷蔵庫になって、春まで持ちます。結界効果で動物たちも寄って来れません。それに、目の前の湖には、魚がたくさん存在しています」
「母上、魚を釣って、たべるのですか?」
「そうよ。この湖は、誰にも知られていないので、本当に沢山の種類の生き物が生息しています」
「父上のお仕事が、解決するまで、釣って、釣って、食べましょう!」
その後、男装したミオとタクシンは、町に買い物に出かけて、春まで必要な物を取り揃えて、ついでに、ゴシップ雑誌やこの国に就いて書かれた書物なども購入して、戻る途中に、面白い事に遭遇した。
「母上、後ろから馬車がついてきます」
「あの馬車・・、紋章が付いていますね」
「さっき購入した雑誌には、この国の貴族ランキングが乗っていました。誰だかわかりますか?」
「はい、あります」
「調べると・・、キーズリー家の紋章です。国王陛下の側近です」
「敵かしら?味方?ーーーどう思いますか?」
「僕は、まだ修業が足りず、そこまではわかりかねます」
「一度降りて、様子を見ましょう」
「最初に、わたくしがおります。タクシンは、馬車の中で、待機していて下さい」
「母上・・・」
「大丈夫です。すぐに、結界の中に入れます。野草を見つける為に降りたように見せます」
「はい、剣を購入して置いて良かったですね。小型ナイフを投げる技は、習得済みです」
ミオは、馬車を止め、道端の本当に珍しい薬草を採取し始めた。
「この薬草・・・、ラミベース国でも、珍しいと言われていたあの薬草にそっくりだわ・・」
ミオ達の馬車が止まってから、キーズリー家の馬車も隠れる様にずっと停車している。
外は、真冬、食料が傷む事はない。折角、見つけた薬草を、ここで見失う事は出来ないと、ミオが本気で夢中になって取り始め、既に、1時間が経過した。
タクシンは、本当に、気をもみながらミオを見守っていた。そして、1時間後に、キーズリー公爵は、行動を起こした。
キーズリー公爵が、馬車を降り、ミオに近づいてきた。
「すいません。さっきから沢山の草を集めている様ですが、この草を食べるのですか?」
「え??ハハハハ・・、違います。もうすぐ雪が降って、寒さが厳しくなります。町にも出かけられなくなるかも知れません。その前に、この薬草で解熱薬を作り置きしておきたいです」
「ーーーーーー」
「寒い冬には、必ず風邪を引くんです。その為の準備をしておきます」
「そうですか・・・、では、私も手伝います」
それから、キーズリー公爵の従者たちもミオを手伝い、大量の薬草が手に入った。
「ありがとうございます。こんなに沢山の薬草があれば、10年は大丈夫です」
「公爵様もお持ちになりませんか?」
「ーーーどうして、私を公爵と?」
「ええ、馬車に紋章が・・・」
「そうですね、うっかりしていました。申し遅れましたが、私は、クーガ・キーズリーと申します。今日、初めてお会いして、親切に薬草の事を教えて頂いて、ありがとうございます。家に帰って、洗って、乾かして、煮て、炒って、粉末にしておきます」
「ええ、きっと、役に立つ時が来ます。それでは、失礼します」
ミオは、馬車を見送り、直ぐに自分の馬車に薬草を詰め込み、家路を急いだ。
「母上・・・、父上は、春になる前に、僕たちを探しに来そうですね」
「見えましたか?」
「はい、彼は、なかなか優秀な人材で、母上の薬の作り方を一回で覚えて、本当に挑戦して行くみたいです。・・・そして、流感が流行った時に、ご自分で服薬します」
「その頃には、王都でも流感が広がり、薬不足で、その為に彼も服薬に挑戦して、回復するようです」
「回復後に、彼は、母上の10年分の解熱薬を思い出し、アイシン国王陛下に進言する」
「彼は、父上に、比較的近い官僚で、噂を聞いて興味本位で、母上を見に来たらしいが、きっと、この事で、母上を信頼して、父上の味方になってくれそうですね」
「ーーそうなればいいのですが・・・、流感は本当に心配です。だから、明日からは、私達は、釣りをしながら、薬を作って行きましょう」
「そうそう、雑誌の中にキーズリー公爵の評価はどうでしたか?」
「・・・下位に近いです・・・」
「ーーーーーー」
ミオとタクシンは、次の日から降り注いだ雪の中、薬草を洗い始めた。その後、2ケ月間、毎日のように、薬草の世話をして、魚を釣り、二人はのんびり過ごした。
「母上、肉がいち早くなくなり、これからは、毎日、魚を食べて行くのですか・・?」
「ええ、仕方がありません。肉を食べ過ぎました」
「母上は、本当は、お肉も野菜も大好きだった事に、本当に驚いています」
「ラミベース国のミオは、本当に食が細い女性でした。それに合わせて生きる事は、試練でした」
「ーーーーーー」
「しかし、この国の母上は、生活の能力が素晴らしいですね。このキッチンも大きくて、薬を炒りながら、魚の燻製も作れてしまいました」
「本当です。いくらアイシンの為だとはいえ、家中が薬草と魚の臭いになってしまいました」
「でも、母上、明日です。明日になったら、父上が訪ねて来ます。今日の夜は、絶対にお風呂に入った方がいいですね」
「やっと、薪で沸かすお風呂にもなれました。クッキーやパンを焼いて、魚を外の小屋に移して、家中をきれいにしてから、お風呂に入って、今日は、早めに寝ましょうね」
「この燻した家にずっといたお蔭で、僕たちは、風邪も引かずにこの冬を過ごせたと思います」
「しかし、臭すぎます。しばらくは換気に気をつけて、再会を待ちましょう」
ミオ達が、この世界に来てから、結界を張り、罠を仕掛けた事により、失脚して行く貴族や官僚も多くなり、国王の力が強くなってきた。しかし、この冬の雪は予想以上に多く、国民の生活にも影響が出始め、アイシン国王陛下は、雪が止むまでは、仕事を休み、屋内に留まるように告げていた。
「国王陛下、国民は、あまり外には出ていないにも関わらず、流感が広がりを見せています。その為、病院や薬局に人が溢れ始めて、この雪の中、死者が出始めました」
「保健部はなんと報告しているのか?」
「はい、寒さの為、体が弱り、ちょっとした風邪でも、熱が下がりにくいと・・・・」
「王宮内の職員たちにも広がり始めました」
それから、本当に、王宮内でも流行り始め、アイシン国王陛下の周りでも寝込む人間が多くなった。
その時、高熱から復帰したクーガ・キーズリー公爵が、報告にやって来た。
「国王陛下にご報告します。アチラ領土から購入予定だった、薪や食料等は、2週間ほど遅れるようです」
「そうか、この雪では、仕方がない無理は禁物だ」
「はい」
「キーズリー公爵は、熱が引いて、復職されたと聞いたが、優秀なホームドクターをお持ちか?」
「いいえ、国王陛下の愛人と噂されている方から、薬草で薬を作る方法を教えて頂き、自分で作ってみました。熱が出た時に、試しに飲んでみたらよく効いて、次の日には復活出来ました。ありがとうございました。春になったら、改めて、お礼に伺うつもりです」
「・・〇※△・・×▼◇・・・!!! 」




