ラミベースベース国
第64章
「母上、家の周りに結界を張りましたか?」
「タクシン、あなた、わたくしと合流する前に、主とどこで暮らしていたのですか?」
「普段は、主の家にいて、それから色々な世界を見て回っていました」
「そう・・・、この結界は、ミオの占いの能力と交換に手に入れた物です」
「わたくしが出来る事は、きっと、あなたも出来るのかしら?」
「どうでしょうか?まだ、母上の様には上手く張れないかも知れません」
「ーーーー、タクシン、嘘はいけません。あなたの方が、若い分、能力は上でしょう。さぁ、折角、結界を張って、安全を確保したのですから、少し、外にも出て見ましょう」
ミオとタクシンは、外に出て見て、この世界の二人に感心する。
「畑があります・・・。雪の下に、野菜が・・・・。母上、この世界の母上は、立派なお方ですね」
「ええ、記憶の整理が終わったからわかるのですが、彼女、意外に料理が出来て、野菜も食べます」
「・・・・・・」
「寒い・・、部屋に、戻りましょう」
「どうして、国王陛下の父上と母上の間に、僕が産まれたのですか?」
「それは、父上自身が、この国の後継者争いに、巻き込まれて、この家に辿り着きました。その時は、大怪我をしていて、ご自分が皇子だと言う事も、わからなかったみたいです」
「え?記憶喪失・・・?」
「多分、そうです。それから、数年間は、3人で暮らしていましたが、突然、父上はいなくなり、1年前に、国王の座に就いています」
「残されたミオは、新聞記事を読む前から、アイシンの正体を知っていたみたいで、ある日、彼がいなくなる覚悟は、出来ていたみたいです。しかし・・最近になって、アイシンが優秀な国王とわかると、アイシンが消えていた数年を調べた人達によって、毒殺されたみたいです」
「とにかく、町に出て見ましょう。ある程度は、変装して身を守り、買い物して、情報を集めなくては・・・・」
「母上、お金はどうするのですか?」
「お金は、沢山あります。ミオの記憶が教えてくれています」
ミオと、アイシンは、台所の壺の中に、大量のお金を発見した。
「母上、父上は、とっくに記憶が残っていて、母上と僕の為に、この家を出たのではないでしょうか?」
「ええ、きっと、そうね。彼のいけないところが、リアルに表現されています」
「ーーー僕たちを守る為に、去る」
「はぁぁぁぁ・・・。ご自分が王宮に戻る事で、私たちが危険な目に遭う事がなくなると、きっと、思われたのでしょう。まったく!! ・・・・・・何も変わっていません!! 殺されてしまっています」
「とにかく出かけて見ましょう」
「母上、馬があります」
「馬に乗って行きましょう」
「馬に、乗れるのですか?」
「当然です。これが何度目の転生だと、思っているのですか!」
「・・・・・・」
馬を降り、男装に着替え、馬を馬車に変え、町の食堂で、食事をしながら、聞き耳をたてて、大きな肉を頬張った。
「母上・・・、」
「タクシン、この国の肉は、美味しいです」
食堂内では、この国の王室についての噂話で持ち切りだった。
「今回は、国王陛下もこの国の為に、ご結婚なさるだろう・・。お世継ぎが産まれないと、致命的だ。他国から狙われる可能性も出てきている。・・・男色か?」
「まさか!! そんな話は、絶対にない! 」
「しかし、ご本人は、結婚もしないし、世継ぎを作るつもりはないと、側近に断言している。どういう事だろう?」
その後、食料、日用品、衣服、新聞などを馬車に詰め込み、ミオは、馬を走らせて、家に戻った。
「ねえ、タクシン、この国は、まるで、もう一つのラミベース国のようですね」
「ええ、僕もそう思いました。王室の皇子達が争い、内乱を起こし、王室関係者がすべて亡くなって、王都は焼け野原・・・、貴族たちは、最後に、行方不明だった王室の血筋のアイシンを探し出し、国王に迎え入れ、国の安定を図った」
「そして、内乱が収まり、アイシンの手腕で、国内が安定し始めると、貴族たちは権力争いを始め、国王陛下に王妃を娶るように進言する者が、出てくる。王妃の後ろにいる貴族は、それにより大きな力を得る事ができると、考えている。しかし、アイシンは、ミオとタクシンがすでに存在する為に、決して、王妃は娶らずにいる」
「ご自分は記憶喪失を装い、その方が、わたくし達の為だと、判断なさったのだわ・・・」
「あの家にいれば、自由で、のびのびタクシンも育てられて、ミオも、王室に縛られて苦労する事もなく、危険も少ないと・・・・。ご自分は、どんなに孤独で、辛くてもわたくし達を守り抜く決心をなさっている」
ミオとタクシンは、声を揃えて、
「はぁ~~、甘いですね。父上! だから、僕たちは結局、毒殺されてしまいます」
「もう少し、様子を見ましょう。結局、この屋敷には、結界が張られいて、この屋敷に近づいて来る人は、必ず、ケガをして、その辺で、苦しむ事になるのですから・・・」
「毒殺が成功しているか、確認に来る人間がいたら、その人が犯人でしょう」
「馬車はどうしますか?後ろの納屋に隠しておきますか?」
「いいえ、結界をもう少し広げて、絶対にここまでたどり着けなくします」
「それでは、犯人を見つける事が出来ません」
「大丈夫です。この結界に、悪意を持って入って来た人間は、必ず骨折します。馬が暴れるか?石につまずくか?その場から動けなくなります。そのヒントを彼は、しっかり調べて下さる事を祈りましょう」
「それまで、ゆっくりしましょう」
「タクシンは、この国はどう思いますか?」
「はい、きっと、父上は、大変、苦労なさっていると思われます」
「そうですね。アイシンが苦労しているのを、ミオは、ずっと、気に病んでいまいした。わたくし達は、どうにかアイシンを助けたいですね」
「先ずは、父上を利用しようとしている人間、前王朝の残党などを一掃しましょう」
「それは、どのようにするのですか?」
「最初の犯人が悲惨な状況で見つかれば、きっと、噂が流れます」
「どのような噂ですか?」
「あの湖畔の近くには、国王陛下の愛人が住んでいると・・・・」
「僕たちが餌になって、ネズミたちに罠を掛けるのですか?」
「そうです。悪人には悪人の情報網があって、これから、わたくし達は、狙われる事が多くなるでしょう。その噂は、きっと、アイシンにも届き、わたくし達を迎えに来て下さると信じています」
「母上、結界って、いいシステムですね・・・。あちらから罠に引っ掛かってくれるのを待てばいいのですから・・・」
「タクシン、結界だけで満足してはいけません。主は、もっと便利な魔法を持っています」
「魔法ですか?」
「魔法なら、僕も、少し習いました・・・・」
「え?あの主が教えたのですか?」
「まだ、少しですが、主は、なんでも教えてくださり、母上が、来るまでに沢山の事を習いました」
「やはり・・・、ご自分の子孫には、誰もが本当に甘いですね」
「しかし、教え方は、ジュリエールとまったく一緒で、ジュリエールで鍛えてなかったら、ついて行く事が出来ませんでした。彼らは、似た者同士です」
「それは、同感です」
「母上・・・、今日、随分と食材を購入していましたが、本当に料理が出来るのですか?」
「タクシン、任せて下さい。この国のミオは、お料理上手です。今日は、暖かいシチューにしましょう。手を洗って来て下さいね」
その日の夕食は、野菜たっぷりのシチューが、テーブルに並び、タクシンは、びっくりしながらも、ミオの作ったシチューを味わった。
「母上、2日後に、犯人らしき人間が、湖の向こうで、骨折しているみたいです」
「タクシン・・、腕を上げましたね。わたくしには、まだ、見えていませんでした」
「はい、主に、こき使われましたから・・・。上達もしました」
「・・・・・・」




