女・・・力
第62章
プラスムス国王陛下の国造りは、この国の技術者、研究者など、優秀な人材を集め、意見交換をしながら進められた。厄介な貴族たちがいなくなって、この国の水準は、毎日のように上がって行く事が、肌で感じる様に理解できた。
宮殿での会議が終わり、設計図などを持ち帰り、食事の時に、プラスムスは、いつも何気なくミオの意見を聞いている。
タクシンは、今までは、気にも留めていなかったが、本当に祖父は、最後の決定は母上の意見を求めている事が確信できた。
「ガス灯は、今後、設置しないが、夜の暗闇は、今の王都では本当に恐怖と感じる市民が多い、やはり電気の街路灯を増やして行きたい」
「父上、これからは、何をするにも電気が必要になります。川の整備を父上の最重要目標に掲げているのであれば、将来的には水力発電にもつながるようにした方がよろしいでしょう」
「父上が水を制するまでには、何十年もかかると予想されますので、街路灯などは、前の宮殿近くの山に、風力発電を建設して、町全体を明るく灯しましょう」
「王都の街で成功したら、各地域に先ずは、風力発電をすすめ、町に灯りを増やして行きましょう」
「うん、わかった」
次の日の夕食の時も、その次の日も、ずっと、毎日、プラスムスは、最終決断の時には、ミオの意見を必ず聞く。
ミール夫人は、とっくに気が付いていて、タクシンを呼び止めて、話し始めた。
「タクシン、お爺様が得意な事は、いい物を見き分ける目を持っている事なの、大きな取引と一緒に、必ず、ついでを装って、一番、欲しい商品を手に入れて来ていた」
「その商品は、何ですか?」
「食べ物の苗よ。タクシンの町には、大きな植物園があったでしょう?あの植物は、この国では流通していない物ばかりなの。私たちが小さい時、貧しい町で生まれて、食べる事が一番、困難でした。ボロを着ても、雨風はしのげても、食事が出来ないと人間は、必ず死にます」
「だから、プラスムスは、この国を豊かにする物は、沢山の食べ物だと決めていると、私は思っています。どこかの国が、干ばつや台風、その他の災害で、食物が育たなくなった時には、必ず援助してきた」
「例え、その国がかつて彼を裏切っても、飢餓にあえぐ人々を救う事が、彼の使命だったのよ。だから、今回、周りの国々からは、沢山の援助と技術協力がある」
「だから、お爺様を情けなく思わないでね」
「勿論です。そんな事を思った事はありません。お爺様は僕にとって偉大過ぎる程に、偉大なお方です」
「タクシン、実は私も、ずっとそう思って生きて来ました。しかし、ミオが結婚して、アイシンと王都に行ってしまってからは、少し違っていたの・・・・」
「上に立つ人間は、実は孤独で、弱い人なのかも知れません。そのことに気づくのが遅すぎたと、反省もしました。でも、幸いにも、彼には、私達家族がいます。わたくし、ミオ、ホウライン、そして、タクシン、マユです。だから、大きくなったらタクシンにも、信頼できる家族を作って欲しいと、今、思いまいした」
「おばあ様、僕にも、あなたとお爺様、母上、ホウライン兄、マユ、ヴァイオレット家のお爺様やおばあ様、ジュリエールがすでにいます」
「でもね。やはり、愛する人と一緒になる事は、大切な事です。それだけは、覚えておいて下さい」
「はい」
この後、タクシンは、胸に、つかえている事を調べる為に、やはり、行動に出た。
「トハルト家令、ガムシャとロックを呼んでくれ」
タクシンは、やはり、アンユン皇子の隠し子を、少し調べる事にしたのだ。
「坊ちゃん、この事は・・・、内密に行った方がよろしいのでしょうか?」
「うん、今は、まだ、お忙しい国王陛下に知らせるべきではないと、考えている。その子の存在も疑わしいのに、心配をかける事も出来ない」
トハルト家令とガムシャ、ロックは、黙ったまま、考えて、
「坊ちゃん、坊ちゃんのご指示通りに、内密にオリザナダ領に出向き、調べて来ます」
「ああ、そうしてくれ! 」
ミオは、今までとは打って変わって、現代社会で役立っていた事や物、法律等をどんどんプラスムスに提案して、マユが歩き始めた頃には、今までとは全く違った街が少しずつ姿を現し始めて来た。
「兄上・・こっち、こっち・・・、池、池、船、船・・・遊ぶ・・・・」
マユは歩き出し、言葉も増えていって、誰もが、この国で、一番可愛い王女と呼ぶ。
マロンがそうだったように、マユもいつもタクシンの側を離れる事はなく、タクシンも常に、マユの事を気にしていた。
「マユ、僕は、今日は学校に行かなくてはならない。だから、船で遊ぶのは、お休みの日にしてくれ。その日、母上の許可がでたら、船を出そう」
「兄上、兄上・・・・」
「タクシン様、ジュリエール校長が、放課後、訪ねて欲しいと申してました」
「うん、わかった。それでは、母上、マユ、行ってきます」
王都にはモデル校として、すべての国民が通える学校が建設され、初代、校長は、ジュリエールが就任した。この学校が上手く運用されたら、それぞれの町や村にも病院、役所、学校が併設された物を建設して行く。
始まったばかりの授業は、タクシンには物足りないが、ジュリエールは、放課後に、必ず、タクシンと話をすることを日課にしている。
「失礼します、校長」
「タクシン、今日の授業はどうでしたか?」
「はい、この国には、知識を持った人が多いと改めて感じました。その土地土地の領主による領土の説明は、視野が広がり、勉強になります」
「ええ、これからは、領土同士で切磋琢磨して、情報の共有なども同時に行い、発展して欲しいと思います。彼らには、知恵を絞り、優秀な広報部を設立して、各地の学校に回ってもらう予定です」
「それは、本当にいいアイデアです。お互い知らない事ばかりで、地方の学校は、大人も学べるようにしていて、誰もが真剣に学んでいると、聞いています」
「ーー1年目は、多くの国民に、この国を知ってもらう事が、一番の目標です」
「はい」
「さて、タクシン、所で、オリザナダ領の小さな村の親子を調べて、結果はどうでしたか?これから、どうするつもりですか?」
「大おばあ様・・・・」
「どうして、その事を・・・?」
「タクシン、これは二人だけの秘密ですが、わたくしが王宮でメイド長を務めていた事は知っていますよね?その頃、先王と知り合い、エレナミを授かりました。彼は、王都の中心にあった崩れ落ちた王宮の敷地内を鎮魂の意味を込めて封鎖していました」
「呪いでは?ないのですか?」
「シキオールには、そのように言いましたが、本来は、内戦で亡くなった人々の慰霊の為です。だから、あの場所を守る必要がありました。今回、東の王宮で、多くの犠牲者が出なかった事は本当に良かったと思っています。しかし、先王が、あの場所を封鎖しただけで、わたくしとエレナミを守れる事は出来ません」
「僕も、そう思います」
「だから、先王は、王宮でわたくしの部下だったメイド達を全員、わたくし専用の部下にして下さいました」
「え?」
「そうです。前王朝の、王宮内のメイド達は、すべて、わたくしのスパイや護衛です。彼女たちは、今、全国に滞在していますが、オリザナダ領には、特に多く派遣してあります。ガムシャとロックが、その村を訪ねた事は、半年前に知っていましたが、その親子の素性を調べるには時間がかかりました」
「大おばあ様・・、あなたは、本当にすごい人です。ーーーこの件は、僕も、ずっと考えています。あの男の子は、僕とも多少なりとも血が繋がっている。と思うとどうしていいのか・・・」
「タクシン、血は繋がっていません。アンユン皇子は、ヴァイオレット男爵に流行り病を移した張本人です。ヴァイオレット男爵は、エレナミの為、朝、訪ねて来た人の名前を公表していませんが、当時のヴァイオレット家のメイドは、当然、わたくしの息のかかったメイドで、報告は上がって来ていました」
「アンユンは、自分は若く、病に罹っても大丈夫だと高を括ったのでしょう。実は、結局、あの時、彼も、高熱にうなされ生死を彷徨いました。その後も良薬に出会えず、体調を崩すと、直ぐに熱を出しています。結局、彼自身が傷つきました」
「ーーーーどういう事でしょうか?」
「その熱の為に、子種がありません。だから、妃は、安心してオリザナダ領に送りだしたのです」
「ほ、本当ですか?」
「ーーー本当です。メイド達の間でも有名な話だそうです」
「いや・・・、いや、女性は怖い・・」




