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マユ・ヴァイオレット誕生

第61章

 ミオの中に宿っていた小さい繭は、成長して、厳戒態勢の中、小さな産声をあげた。


 「おめでとうございます。やはり、可愛らしい女の子でしたよ」と言いながら、ジュリエールは、ミオに小さくて真っ赤な赤ちゃんを手渡した。


 「ああぁぁ! マユ、産まれて来てくれて、ありがとう。母は、これから頑張ってあなたを育てます。大丈夫よ。お父様がいなくても、大丈夫、大丈夫・・・」


 そう言いながら、眠りについたミオを見て、タクシンは、ため息をつきながら、小さいマユに挨拶をした。


 「マユ、君は父上には、会う事ができないが、その分、僕は、絶対に君を守ると誓うよ。どんなに泣いても大丈夫だ。ここには、君を愛している人しか存在していない」


 タクシンの言葉を聞いて、マユは、大きな鳴き声で泣き出した。


 新しく建てられたプラスムスの執務する宮殿は、1階しかなく、多くの人々が訪れやすいように設計されている。執務が終わると、ヴァイオレット邸に戻るので、隣接する宮殿は、オフィスと言える。


 そして、マユの誕生を、トハルト家令は、息を切らせて、プラスムス国王に報告する。


 「国王陛下、美しい女の子がお生まれになりました。おめでとうございます」


 プラスムスの周りには、ミオの使用人のほかに、国内外から集められたプラスムスの部下たち大勢いる。


 「そうか・・、今回は、流石に、忙しくて、何もしてやれなかった。しかし、アイシンがミオに寄り添っていると思うと、何故か安心出来た。上出来だ。アイシン・ヴァイオレット、君が残してくれて姫君は、この国を救うために、今日、産まれて生きた。儂もこれで、より一層、頑張れる! 」


 「こらからは、国民全員で立ち上がり、この国を造っていく、どうか、ミオの近くで見守って欲しい。おめでとう、アイシン、おめでとう、ミオ! 」


 プラスムス国王は、大きな執務室で、大勢の人々に囲まれ、忙しくしている手を止め、青空を見上げ呟いた。


 ヴァイオレット邸の中では、マユの誕生は、ミオが、すでに女の子だと、告げていたので、準備は整っていた。今回は、アイシンが不在以外は、全員が、経験済みだったので、出産には、誰もが余裕を持っていた。


 「母上、お祝いのお品が早朝から続々と、届いています。皆さん、用意していたのですね」


 「タクシンは、どう?マユが産まれて来て、自分の中に変化はない?」


 「ーーーーーー」


 少しやつれたミオは、手招きして、タクシンを近くに呼び寄せる。


 「タクシン! わたくしも、最初は戸惑いました。占いと言う、選択の正解?そして、未来の予測?」


 タクシンは、びっくりした顔で、ミオを覗き込んで、真剣な顔で、話を聞いていた。


 「タクシン、大丈夫です。あなたは、安心して生きて下さい。その事を、私の周りには、理解してくれている人達が集まっています。そして、彼らは心からわたくしを、信じてくれています」


 「それは、国王陛下もですか?・・・父上は・・?」


 「ええ、そうです。しかし、旦那様は、みんなの信頼よりも少なかった・・」


 「それに、わたくしにも、アイシンとの未来は、ずっと、不確定で見えていなくて、自信がありませんでした」


 「母上は、ご自分の中にあるこのように、不確定な物をずっと抱えていたのですね」


 「ええ、確かにそうです。そう言えるかも・・・。もしかして、どうしてもアイシン・ヴァイオレットと結婚したかったのは、この国の為だったのかも知れません。タクシンが不確定な物と表現するのは、正解でしょう」


 「初めて、正式に、ヴァイオレット家で、彼と話をしても、彼との未来が見えない事は、変わりませんでした。しかし、結婚して、一緒に生活し、アイシンを愛して、好きで、好きで、仕方がなくて、どのような不安の中でも、いつも、彼を信じていました。だから、結局、愛する事は不確定な物だったのです」


 「しかし、母上・・・・。マユは・・?」


 「マユが産まれて、マユの未来が、見えましたか?」


 「はい、マユは必ず、選択を誤ります。どうしたらいいのでしょうか?」


 「タクシン、ごめんなさい。わたくしは、あなたとマユに、ずっと寄り添う事が出来ません。その意味が、わかりますか?」


 「母上・・・・。どうして、そのような・・・」


 タクシンは、マユが産まれて来た瞬間に、ミオの能力を受け継いだ。自分の中に産まれて来たばかりの妹を抱いた時に、マユの未来が頭の中に入って来たのだ。その事は、勿論、誰にも言えないし、幻をみたと、自分の中では、そう思う事にしていた。


 「母上、僕には、そのような事は、わかりません」


 「うん、今は、まだ、見えないかも知れませんが、結局、わたくしの体は、健康には程遠いのでしょう。勿論、これからも食事に気をつけ、運動もして、薬も沢山飲みます。生きたい・・、ずっと、あなた達に寄り添っていたい。でも・・・・」


 「それは、多分・・、できません」


 「だから、何時、わたくしがこの世を去ってもいいようにしておきたいのです。わたくしは、これから、この国の発展の為に、色々な提案をします。国王陛下は、迷うことなく、その提案を採用して下さるでしょう」


 「お爺様も、この能力をお持ちですか?遺伝かなにか・・ですか?」


 「いいえ、お爺様は、娘、可愛さに、実は信じて下さっているのです。そして、わたくしと離れた後に、ご自分では、何もご決断できない事に、気が付きました」


 「お爺様・・・意外に・・・」


 「ジュリエールは?ジュリエールは知っているのですか?」


 「彼女は・・・、まったくわかりません。しかし、敵ではないと、いつも占いには出ています」


 「母上は、いつもどのように占いをしているのですか?」


 「水面です。池の水面が、一番多いです。後は、自然の中で探します。緑、枯葉、空、雨、雲を見ていると、円の中に言葉、サイコロ、杯、本棚やカード等が現れて、自然に動き出し、言葉や映像で、教えてくれます」


 「占いには、多少の訓練が必要です。だから、わたくしがこの世を去るまでに、あなたに伝承したいと思っています」


 「母上、・・・母上は、今は、一番大切なのは・・・・、もしかして・・?ち・・・」


 「あなたとマユです」


 「しかし、あなたの未来はすでに決まっていて、あなたの未来が、輝かしい事は、この国は、これから存続して行くと言う事です」


 「そして、マユが産まれて、今回、わたくしは、マユを不幸にする人間が見えました」


 「この事を、必ず、あなたに伝える必要があったの、わかりますか?大切な事だから、忘れないでね。お願い、タクシン! 」


 「はい、母上は、見えたのですね?マユが間違った選択をして、不幸になるのが?」


 「ええ、オリザナダ領のアンユン皇子には、内縁の妻が存在しています。二人には、すでに、男の子が誕生していて、3歳になっています。アンユン皇子にとっては初めての嫡男です」


 「彼は、きっと、その子を大切に育てていくでしょう。そして、何年も一緒に暮らしていなかった王都の家族は、その子の存在を認めるでしょう」


 「しかし、王都の惨状を経験していないアンユン皇子は、どんなに彼の本妻が説得しても、あなたが王位を継承する事を、納得できない時がきます。その時・・、一番最初に狙われるのは、年が近くて、タクシンの町が好きな、身分の高いマユです」


 「今、この事を、話せる人間は、タクシンだけです。だから、どうか、どうか、年ごろになったマユを、その男から守って下さい。お願い」


 「母上、僕に残された道は、この道しかないのであれば、僕は、全力で母上の教えを受け継ぎ、妹を全力で、守ります。だから、どうか、母上は、長生きして下さい。お願いします。これからも、僕たちに付き添って居てください」


 「タクシン・・・・」


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