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王都

第59章

 国王陛下とプラスムスの2回目の会談が、ヴァイオレット男爵立ち合いのもと開催された。


 今回、二人の意見は、同じもので、タクシンにこの国の未来を託すことだった。その為、国王陛下は、ナツ皇子の起こしたクーデターの責任を取り、国王陛下の地位をすべて降り、王室は廃止される事になった。


 王室の人間は、すべての地位がなくなり、一般の貴族に格下げされる。


 貴族たちも、王都で暮らすことは、今の王都では不可能な状況になったので、領土を所有している貴族は、領土への帰省をすすめた。


 「国王陛下は、どちらに行かれるのですか?」


 「私は、オリザナダ領のヴァイオレット家に、世話になると思う。貴族の地位は残るが、この国からの給金は、すべて停止となり、王都の街は、区画整備が進み、貴族の屋敷も没収となる」


 「そんな・・・・」


 「今まで、王都貴族と言うだけで、特権を得て、国民の税金で生活出来ていた事の方が、おかしかったのだろう。これからは、すべての国民が、働き、プラスムス国王のもと、ラミベース国を発展させて欲しい」


 国王陛下のお言葉に異論を述べる人間は、いなかった。それほど、王都は壊滅していた。


 国王陛下の悲しみのお顔だけが、すべての貴族たちに深く印象に残り、その後、1ケ月程で、王都からは、王都貴族、地方貴族たちがいなくなった。


 その後、プラスムス国王が誕生して、国外に貯めてあったプラスムスの資本金が注入され、王都に残った人々は、職を得て、復興事業が始まった。


 「国王陛下、王都の復興を見届ける前に、オリザナダ領に向かわれるのですか?」


 「いや、ユーリアを連れて、レンダー領を訪ね、ナツを埋葬してから、オリザナダ領へ、向かうとするよ。今回、アンユンの王都に残っていた家族も、同行する事になり、これからは、あちらからプラスムス国王を支えていく。本当に、無理を言ってすまない」


 「もうすぐ、ミオが出産するでしょう。せめて、その子を見届けてからでもいいのでは?」


 「アイシン宰相の娘が産まれる事は、ユーリアもミルクも、本当に楽しみにしているが、今、ヴァイオレット家と、親しくし過ぎていると、他の貴族たちが疑念を持ち始め、後々、面倒になる。彼らは、私達の密約を知らないで、王都を去ったのだから・・・」


 「それに、ユーリアが、早く、ナツに会いたがっている・・・・」



 ミオが、再び妊娠している事がわかって、プラスムスの心がとけ、二人の気持ちは、ラミベース国の国民の為、アイシン宰相とミオの子孫の為に、この国にとって一番いい方法を探し、協力する事がすでに決まっていた。その為には、今回、邪魔な、利権ばかり主張する貴族を一掃したかった。


 「そうですね。アイシン宰相は、すでにオリザナダ領に眠っています。ナツ皇子は、そのままレンダー領に埋葬されるのですか?」


 「ああ、あそこは、ナツとキラリが、幼い頃を過ごした思い出の場所だ。今回、二人をあの地に埋葬する事が、何よりも供養になると、ユーリアが話すので・・・・」


 「ミルク王女は・・・・・?」


 「うん、少し回復した。幼いミルクの傷を癒す為にも、一日早く、ミルクが好きなタクシンの町に出発させた。今回・・・、ダルマル達が付き添ってくれて、先に向かう事とした」


 「・・・・・・」


 一番可愛がってくれていた兄に、誘拐されたミルクは、救出された時は、衰弱しきっていて、地下の牢屋で発見された。


 誰もが、アイシンやミオ、タクシンを探す中、ダルマルだけは、必死に城の中を探し、牢屋の鍵をどうやって壊したのかも覚えていない程に、血だらけになった手で、ミルクを抱き上げた。


 ミルクは、薄れて行く意識の中で、ダルマルに手を伸ばし、

 「ダル・・マ・・ル・・・、ずっと、待っていました」と、だけ告げ、意識不明になった。


 今回の部隊の中で、一番、戦力がないのは、ダルマルだと誰もがわかっていたが、彼には、知識があり、ミルク王女を助けると言う強い意志があるのも、わかっていた。


 ミオの部隊は、当然の様に、ミオやタクシンの為に、全力を尽くす、誰もミルク王女を探す時間が、その時はなかった。しかし、ダルマルは、ただミルクの為、愛するミルクを救う為に、やせ細ったミルクを抱き、階段を駆け上り、パンネルやコメネルの指導に従い、ミルクを治療して行く。


 口から水分が、摂れないとわかると、迷わずに自分の口から、水や薬をミルクに流し込み、汚れた体を拭き、全身をマッサージし、熱が出たら冷やし、悪寒が始まれば、抱きしめて温め、一睡もすることなくミルクに寄り添い、ただ、ひたすら彼女が目覚める事だけを、願った。


 次の日、少し落ち着いてから、パンネルに、

 「ミルク王女は、これから数日、熱が出る危険な状態になる。ーーーこのままでは十分な治療が出来ない」と告げられた。


 「ーーーミオ様も目を覚まさない、急いで、王都の屋敷にもどらないと・・・・!」


 その時、ダルマルは、


 「一刻でも早く、戻る事で、3人を救えるのでしたら、僕は、船をすすめます。船なら1日で、屋敷の近くに戻る事ができかも知れません。・・・、しかし、これは、大変危険な賭けです。皆さんが僕を信じられないのでしたら、・・僕は、一人でもミルク王女を連れて、王都の診療所に戻りたいです」


 「流れはどうだ・・?」


 「はい、ここに潜伏した数日間、川を観察していましたが、陽が昇り始めた時が、一番、緩やかです。それでも、陽のある時間に、王都にもどれるかは不明ですが、このままでは・・、今、決断しないと、ミルクを・・、彼女を救う事が出来ません」


 アイシン宰相と言う指揮者を失った部隊は、決断を下す為に、時間がかかった。しかし、パンネルとコメネルも、まったく目覚めないミオを、ここで治療するにも、限界がある事が、明確にわかっていた。


 トナカリが、

 「私は、責任を持って、アイシン宰相をお連れして、王都に向かいたいです。船にはミオ様とミルク王女を・・・、馬車には、タクシン様とアイシン様で、向かうのはどうでしょうか?」


 「・・・・・・」


 「タクシン様をミオ様を、離す事は、今は、危険がともなわないか?」


 「しかし・・・、タクシン様も船で移動して・・・、もしもの事があった場合は・・?」


 パンネルが、直接、タクシンと話をすることにした。


 「タクシン様、お母様は、一刻も早く、治療が必要です。その為、ダルマル達と不安定な船で、屋敷に戻る事が最善と考えられます。その場合、タクシン様と離れ離れになります。ーーーアイシン宰相とご一緒に、タクシン様は、今回、馬車で、戻る事はいかがでしょうか?」


 「タクシン様は、お父様に、付き添って頂く事はできますでしょうか?」と聞き、長い間、タクシンの返事を待った。


 話をしないタクシンは、遂に頷き、次の朝、タクシン一行は、ミオとミルクを乗せた船を見送り、タクシンとアイシン宰相のご遺体を乗せた馬車は、静かに、レンダー領の城を出発して行った。


 この時の、辛い朝を、忘れる事は一生出来ない。



 ダルマルの船は、急いで制作したにも関わらず、順調に進み、たまに船が岩に上がった時には、ダルマルは、迷いもせずに、飛び降り、ビショビショになりながら、無言で、船を運行させた。


 この時、ダルマルは、まだ、12歳だったが、既に、成人の様な体に成長していて、力は、誰よりの強く、体力も一番あったのかも知れない。


 ダルマルのその勇姿を見て、パンネルたちは、

 「アイシン宰相が、一番に、選出した兵は、ダルマルだった意味が、今、本当に理解出来た」


 「ああ・・、弱虫ダルマルは、今、誰よりも、立な男に成長している」


 まだうっすら日が残っている空の下に、


 「ダルマル、ヴァイオレット家の森だ! ヴァイオレット家の森が見えて来た。我々は王都に戻って来た!! もうすぐ、屋敷に戻れる。やった~~~!!! 」


 そこは、例え、どんなに悲惨な状態でも、ダルマル達には、ヴァイオレット家は、聖地で、ミオとミルクを助ける事が出来る輝く場所だった。


 「ミルク王女・・・、もうすぐです。頑張って下さい! 」


 ダルマルは、何度も、何度も、心の中で呟きながら、川の流れをずっと、見ながらミルクを思っていた。




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