プラスムスの反逆
第58章
主からお腹に子供がいる事を聞かされたミオは、目を覚ますことにした。
目を覚まして、すぐにタクシンが、手を握りながら眠っている事に気が付いた。
「タクシン、お母様を許してね。ごめんなさい・・・・。タクシン、お母様を許して下さい」
タクシンは、手を伸ばして、ミオの頬の涙を拭き、そのまま二人でベットの中で眠った。
次の日、ミール夫人は、二人の側にやって来て、しっかりとタクシンを抱きしめているミオを見て、
「ミオ! ミオ!! 目が覚めたの?これからの事は心配しないでも大丈夫よ。でも、少しだけでもいいから、食事を取りましょう。あなたの体が心配です・・。お願い・・、食べて・・」
「お母様、心配をおかけしました。私は大丈夫です。アイシンは・・、私に小さな繭を・・、私のお腹に赤ちゃんが・・・」
「え???」
その大声を聞いたタクシンも目が覚め、
「母上、本当ですか?お腹に赤ちゃんがいるのですか?」
「ええ、夢の中で、旦那様が、私たちに、生きて、お腹の子を守って欲しいと話されました」
「母上・・・・・。わぁ~~~~~! 」
タクシンは、この時、初めて大声で、泣いて、ミオやミール夫人に抱き着いて、3人抱き合ったままでいると、フィージアや他の使用人達も駆け付け、ミオとタクシンの回復を喜び、そして、また、みんなで、泣いた。
◇◇◇◇◇◇
あの日、あの夜、王都が襲撃された日をプラスムスは、忘れる事が出来ない。それ程、彼は怒りに震えていた。
ミオが、数年前に、ナツ皇子によるガス灯を設置する事に対して、懸念を現していたので、ガスを止めるバルブを、ヴァイオレット家の敷地内まで密かに延長する事を、国王陛下と密約していた。
しかし、突然のロイの王都への攻撃は、ピーポイントでガス灯を狙った攻撃だった為に、バルブを閉めても、爆発力が高く、大勢の市民を巻き込む事になった。ガス灯を狙われ、その後、軍部が狙われ、次にヴァイオレット家が狙われた。
ガスの供給を止めた事により、爆発が多発する事がなくなったが、プラスムスは、アイシン宰相が留守だと言う事を知っていると、確信していたので、屋敷の警備を強化し始めた。
しかし、背面を狙われた。整備が進んだ川からの侵入を許し、表からは、大きな爆撃を受け、その間に、ミオとタクシンをさらわれてしまった。大きな爆撃を受けながら、駆け寄って来る、真っ黒になったミールとホウラインを見た!
「あなた、あなた・・・・。ミオとタクシンが・・・さらわれました。あなた~~~!! わぁ~~~~!! ミオが・・・・」と言いながら、泣き崩れる妻を抱きしめる事しか出来なかった。
「ヤラレタ・・。彼らの狙いは、ミオ達だったのだ・・・。ミオの言う通りだ。ミルク王女はオトリだ・・・。シマッタ・・・」
プラスムスは、前回、帰省した時に、川の近くにある三又に分かれる村にも、ガス灯が設置されていると報告が上がっていたので、ヴァイオレット男爵とも警戒を強めていたのに・・・。自分の失態だった。
プラスムスの後悔は、最大級の怒りへと代わり、国外の軍隊をラミベース国へ派遣し、ラミベース国を救いながら、全国へ、兵を配置し、攻め込んで行った。
ブーメン子爵は、軍長として、ミルク王女の救出の為に、全国を遠征中で、王都へ戻る事が遅くなり、1日、1日と酷い状況へ変わって行った。
プラスムスの要請により、第2皇子だったモクカツ皇子が、直ぐに、クミン国の軍隊を連れて参戦してくれ、プラスムスが援助しているその他の国も、続々と兵を投入して、ロイとヒューイは、1週間後には処刑され、このクーデターは終わった。
その後、最悪の中、アイシン宰相の死亡が発表され、ミオの生死は不明で、タクシンは酷いPDSTで、まったく口が聞けず、眠る事も出来ずに、ただミオの手を握り締めていた。
ヴァイオレット家は、深い悲しみの中、プラスムスの怒りは収まる事はなかった。
自分の家族を傷つけられたプラスムスの怒りが、収まらなければ、多国籍軍は、退去する事をせずに、王都の街を占領していた。
まだ、爆撃の臭いが残る王都の街は、昔の栄華を見る事が永遠に出来ないような状況にまで荒んでいた。
その様な中で、1回目の国王陛下とプラスムス公の話し合いは、平行線で、どちらからも良案が、提出される事はなかった。その頃の、二人は、話し合いよりも悲しみや憎しみ、後悔の方が多く、今後の事を、考える事が出来なかったと言える。
さすがのジュリエールも、半分、この国を諦めていた頃、オリザナダ領から、ヴァイオレット男爵が、二人の仲裁の為に、王宮を訪ねて来た。
そして、エレナミ夫人も、ミオとタクシンの為、そして、我が子を埋葬する為に、王都にやって来た。
ヴァイオレット男爵とエレナミは、ジュリエールを抱きしめ、国王陛下やユーリア王妃に、報告した。
「ミオは、目が覚め、お腹に子供を宿していると話し、夢の中でアイシンが付き添い、子供を産む為に、健康になって欲しいと、ミール夫人に告げ、タクシンも話が出来る状態に好転した」と告げた。
ジュリエールは、そのまま崩れ落ち、エレナミやユーリアと共に泣きながら、抱き合った。
「本当ですか?ミオ様が、ご懐妊していると・・?」
「はい、パンネルたちは、まだ、確認が取れていないらしいですが、ミオは、お腹に子供がいると信じて、食事を始めました」
「タクシンも、ミオと一緒に食事を取り、眠っています。アイシンは、きっと、そばで、二人をいつまでも守り続けています」
「ええ、彼の意志を、私たちが引き継ぎ、二人にとって、何が一番いいのか考えましょう」
その夜、ジュリエールは、ヴァイオレット家の屋敷に、使用人として戻った。そして、プラスムスに願い出た。
「プラスムス様、あなたのお怒りは、ごもっともです。王室は、既に、何十年も、愚策で、多くの国民の命を失いました。私は、今後、国策からは一切、手を引きます」
「国王陛下とあなた様の取り決めにも、一切、関わりません。でも、もしも、また、ここで雇って頂けたら、ミオ様の側で、タクシンと生まれてくる赤ちゃんの側で、働かせて頂けませでしょうか?」
「アイシンの子供たちに、教えたい事がたくさん有ります」
プラスムスは、何も答えなかったが、ジュリエールは、ずっと頭を下げていたので、肩を少し叩き、ジュリエールが、ミオやタクシンの側にいる事を許した。
フィージアは、ジュリエールに抱き着き、しばらく泣いて、ミオが、今日、食べた物や、タクシンの様子などを書き溜めたノートを見せながら、次に指示を待っていた。
「数日後に、懐妊が確認されてから、少し体調が崩れるかも知れません。今は、特に、食べたい物を、召し上がって頂いて、体力を上がる事に重点を置きましょう」
「はい、後は、足のマッサージは、始めても大丈夫でしょうか?お茶や牛乳などは、どのように致しましょうか?」
プラスムスは、廊下で、二人の会話を聞いて、昔に戻ったように思え、少し笑って、頭を振った。
ミオは、ジュリエールが戻った事により、ミオは、朝起きる時間から食事、運動、入浴、すべての管理が始まり、完璧な状態に戻ってから、再びパンネルたちの診察が行われ、本当に妊娠が確定した。
ミオは、厳しい顔をしたプラスムスに、
「お父様、今度、産まれる子は、女の子ですよ」
「そうか?ミオに似ているのか?」
「ええ、ただ・・・男運がないみたいで、少し心配です」
「・・・・・・」




