捜索活動②
第56章
アイシン宰相は、国王陛下への伝言を頼み、ひっそりと北の地へ向かった。
レンダー領土は、ナツ皇子の妃だったキラリ妃の母方ゆかりの地でもあった。ミオから北と聞いた時から、アイシンは、この地を目標に置いていた。
「アイシン宰相、北は広くて、どのあたりから捜索を開始しますか?」
「うん、ミオは、泣いてばかりで、その後の事は聞き出せていない。困ったな・・・・」
「そう言えば、ミルク王女は、ナツ皇子も船には興味があるみたいで、良く、船の事をミルク王女に聞いていると、話していました。だから、先ずは、川を探して、川沿いの建物を探して行く方がいいのではないでしょうか?」
「そうしよう。先ずは川を探して、上流に進んで行こう!」
アイシン男爵が、レンダー領の地図を広げ、捜索を開始始めた時に、王都のナツ皇子の軍隊は、開戦した。先頭で、指揮にあたるのはナツ皇子ではなく、部下の一人のロイが担当している。
ロイが、一番、最初に攻めたのは、人手の減った軍部本部。
軍部本部は、この時、既にブーメン軍長の屋敷へと変貌していて、武器、弾薬等は、ジュリエールの指示通りに、別の場所に移動していたが、ミミルー達には、寝耳に水で、慌てふためいて、地下に用意してあった格納庫に急いで降りて、何日もその中で身を隠すことになった。
「ジュリエール様に、感謝します。格納庫を地下に作るように提案を頂き有難うございました」
ミミルー達使用人は、呪文のようにこの言葉を言い続け、暗い格納庫で3日間を過ごし、爆撃の音が消えるまで、震えながら過ごした。
「坊ちゃん、坊ちゃんは、どこに向かわれたのでしょう。王都が戦場となっているのに・・・。一体、どこへ・・?」
「今回、坊ちゃんの的が外れて、王都が全滅したら、我がセンチュオン家は、没落するか、滅亡するのではないでしょうか?」
「誰が坊ちゃんに出世を望んだ。没落するよりも、ずっと、貧乏貴族の方が良かった」
「今更、言っても遅いです。坊ちゃんが王都に戻り、活躍して下さることをお祈りしましょう」
「大丈夫です。坊ちゃんは不死身で、きっと、私たちを助けにくて下さいます」
センチュオンの屋敷は、結局、使用人を増やすことなく、あのままの状態を維持し、当然の事ながら、ヴァイオレット家を見習い、お茶会や夜会への出席もしないで、慎ましく暮らしていた。
それでも、ここ数年は、美味しい物を、沢山食べられた事に感謝して、何とか王都の生活にも慣れ始めた時に、爆撃を受けた。
その頃、同時に襲撃されたのは、オリザナダ領近くの3つの川が分岐するところを攻められている。
そっちは、ヒューガが担当しいて、アイシン宰相の計画を遅らせる目的があると、すぐにわかった。
そちらには、ヴァイオレット家の軍隊が、いち早く鎮静に向かったと知らせが入った。
王都に急いで戻ったブーメン軍長は、王宮の国王陛下の元に駆け付け、
「陛下! 大丈夫でしょうか?」
「ブーメン軍長・・・、君の家のある軍部は全滅だ。王都は火の海になり・・・、ロイたちは、ヴァイオレット家の方に向かっている」
「それでは、急いで、ヴァイオレット家へ、向かいます」
「ああ、そうしてくれ・・・」
ロイたちの襲撃が始まって、既に、3日が経ち、国王陛下は、すでに、半分以上諦めている。
「私が生きている間・・・、もう一度、この光景を王宮から見るとは思ってもいなかった。私は、我が子可愛さに、ナツ皇子を殺す事が出来なかった。ジュリエール・・・いいえ、義母様、申し訳ございません」
「あなただけの責任ではありません。私も至りませんでした。先王に誓いを立て、厳しく生きてきたつもりでも、暗黒に包まれた彼を止める力が、及びませんでした。ーーーこうなる事は、わかっていた事です」
王都での開戦を知らないアイシン宰相一行は、地道に川を上り、森の深い場所で、小さなお城を発見した。そのお城は、王都の離宮そっくりに出来ていて、誰もが、無言で頷いた瞬間でもあった。
「アイシン宰相、どうしますか?」
「もうすぐ、陽が暮れる。少し様子を見よう。先ずは準備を整えて、作戦を考えて行こう」
「ええ、流石に馬もクタクタです。数日、休ませないと、どうにもなりません。例え、王女を救出しても、馬が走れないと、危険です」
ダルマルが、
「ここは木も多く、数日あれば2艘の船が作れます。2艘あればミルク王女を乗せて、この川でしたら下る事は出来ます」
「この人数で闇雲に攻め入っても、多分、駄目だろう。先ずは様子を見て、作戦を立て、馬を休ませて、船を作る事にしよう」
「はい・・・・」
ダルマルは、どんなに疲れても、眠る事が出来なかった。夕食も食べず、何も考える事が出来ずに、ひたすら船の製作にあたった。
アイシン宰相は、そんなダルマルを見て、今回、ダルマルがミルク王女の救出に成功したら、国王陛下にダルマルとの婚姻の許可を進言しようと、考えていた。何も言わない二人だが、それでも可愛いミルク王女には、幸せになって欲しいと思っていた。
数日・・・、その離宮のレプリカを調べると、この城の方が古い事がわかる。
「ナツ皇子は、最初にこの城を建設して、同じ物を、王都にも建てたに違いない。一体、どうして?」
「それなら、話は簡単だ。私は、離宮の間取りを覚えている」
アイシン宰相は、その場で、簡単な見取り図を描き、ミルク王女が軟禁されていそうな場所を教えた。
「夜になったら、城に侵入して、先ずは、ミルク王女の救出を最優先に行う」
「はい」
しばらくすると、馬車が大急ぎで城に入って行くのが見えた。
「あの・・馬車・・・・・・・・、ミオの馬車だ」
「ええ・・・、奥様の馬車です。どうして、王都は、どうなったのでしょうか?」
その場のすべての人間は、言葉が出なかった。
『ミオ・・・・!! 』
アイシン宰相がその場で立ちすくんでいると、ナツ皇子は、バルコニーに現われる。
「アイシン!! いるのだろう?出て来い! 君の小鳥の美人と子供がどうなってもいいのか?」
その時アイシンが目にしたのは、手首を縛られ、拘束されたミオとタクシンだった。
「ミオ、タクシン! ナツ皇子! どうして、どうやってミオ達を・・・・」
「ハハハハハ・・・・。私は、君しか見張っていない。お前が王都を出発してから、王都を襲撃させ、この二人を手に入れた。ミルクはオトリだよ。最初から、この二人が目的だ!! 」
「お前がこの国にいる限り、私には、この国が手に入らない。そして、ただ一人、幼い頃から味方だったキラリも、すでにこの世にはいない。どうして、国王の息子でもないお前ばかりが・・・」
「ナツ皇子・・、誤解だ! 国王陛下もジュリエールも、あなたを次期国王にしようと考えていた。王室は、直系が伝承する事を国民も望んでいます。二人の願いは、私があなたをサポートして、この国を正しい道へ導く事だったのです。本当に誤解です」
「そんな事、今ではどうでもいい・・。この国はすでにロイとヒューイに手渡した。彼らが集めた最新式の武器によって、王都は滅亡し、地方も壊滅状態になっている。私は、キラリが好きだったこの城で、静かに暮らすよ」
「その前に、お前たち3人は、始末しておかなければならない。また、どこかの誰かに、この国の滅亡を止められたくない。それに、もう、呪いは、ごめんだ! キラリとお腹の子に悪影響だからな・・・」
「さぁ、誰から殺すか、話し合いをしよう。アイシン、このバルコニーに上がって来い! 」




