美しい凱旋③
第42章
外では、大騒ぎになっているが、アイシン男爵とミオは、ベットに入り、互いの無事を確認した。
「ミオを抱いて眠りたいと、ずっと、思っていた。夢か現実か、区別がつかない・・」
「はい、わたくしも、今、人生で、一番の幸福だと思っています。二人でベットに入って眠るだけでいいです。他は要りません。あなたがいて、私が居て、子供がいます」
「僕も同じだ。・・・・・・すっーーー」
次の朝、ロック、ガムシャ、トナカリは、夜が明ける前に、ヴァイオレット邸に戻って来た。
トハルト家令は、彼らに感謝を述べ、労をねぎらった。
「お疲れ様、大変でした。今日は1日、ゆっくりして下さい。王宮には、ルフリーを向かわせます」
「はい」
次の朝、アイシン男爵は、王宮に出勤して行った。久しぶりの朝、同行した3人も結局は起きて、ヴァイオレット邸の全員で、アイシン男爵を、見送った。
ミオは、やはり、寂しそうだったが、今は、歩く事にも気をつけている状態で、周りの人達は、常に、ミオの一歩、一歩に気をつけていた。そんな時に、後ろから、ホウラインが話しかける。
「姉上・・・・、今日も船に乗っていいでしょうか?」
「お父様とお母様が、よろしいのでしたらいいですけど、一人では決して池に入っては行けませんよ」
「マロン・・・も、入ります」
「マロンは、女の子だから、毎日、水に浸かるの事はどうでしょう?」
「・・・・・・」
「ダルマルは・・・?」
「ダルマルは、今日は、ミルク王女の所に行く予定です」
ジュリエールが、立ち話を嫌がって、催促してくる。
「お嬢様・・・。旦那様もお帰りになって、これからまた色々な事があるかも知れません。ダルマルも、王宮に向かわせるのではなく、ミルク王女に、こちらに来て頂きましょう?」
「そんな事ができるの?相手は王女ですよ」
「出来ます。しかし、安全の為、今は、邸内の人間の数を減らしたくありません。だからと言って、新たな人間を、屋敷内に人は入れたくもありません。とにかく、一度、屋敷に戻って話し合いましょう」
ジュリエールの提案は、今日から教室の改造を初めて、王女様が来られても、不便のないようにする事、職人たちの子供達や、外のお店の子供達と一緒に、ホウラインも授業に参加する。勿論、一人での参加は、難しいので、ミール夫人も付き添う。騒いで、妨害する子供は、授業に参加できず、池で遊ぶことも禁止となる。
プラスムス夫妻とミオは、ジュリエールの意見に参加した。
「ホウライン、ジュリエールの授業をきちんと受けられないと、池で船を浮かばせる事は出来ません。できますか?」
「はい、できます」
それから、職人たちが集められて、ジュリエールの指導の下、王宮の様な学校の建設が始まった。
「必ず必要なのは、ミルク王女専用の部屋と、沢山の使用人達が待機する部屋が2部屋必要です」
「それでは、今日のダルマルの予定は、どうしましょうか?」
「欠席で、よろしいのではないでしょうか?」
「ーーーーーー」
ミオは、いつもジュリエールの考えには、何か理由があると思っているが、今回も、全面的に許可した。
その頃、アイシン男爵は、国王陛下や王宮の重鎮の前で、クミン国との和平条約の内容のプレゼンを行い、質疑応答に入っていた。
「それでは、クミン国で綿花を生産して、モクカツ国では、布の生産を初めて、流通を始めるのですか?」
「はい、その他の物流は、今まで通りで、それでもモクカツ国は、両国に、関税と言う税金を納めます」
「クミン国から綿花を購入しておきながら、関税もクミン国に払うのですか?」
「そうです。クミン国のあの民族の布は、とても貴重な布でして、女性たちの刺繡の腕は一流だそうです。どこに、出しても高く売れます。それに、クミン国の方には、薬になる実が多く生息しています」
「その実を、調べてみると、とても貴重です。今回の調査で発覚しました。その実は、モクカツ国のお印となり、きっと、あの国に富みを与えてくれます。しかし、その実は制限され、他国に売る時は、反対に関税をかける事にしたようです」
「我が国には、その実は存在していないのか?」
「それは、これから調べる事になるでしょう。その他の産業内容を加えても、私の計算では、この様に交流を深めて行けば、3国ともに、経済効果があり、互いに発展できると、考えました」
「う~~~ん、国王陛下のお考えはどのようですか?」
「ここにいる方々は、大なり小なり、産業を興し、商売をなさっているでしょうけど、働いてくれる国民がいるからこそ、生きて行けると、早めに気づいて頂きたいと、私は思っています」
「・・・・・・」
国王陛下のお言葉が効いたのか、その後、誰も、アイシン男爵に質問する人が現れずに、モクカツ国は、満場一致で承認される事となり、アイシン男爵は、退席しようと思った時に、国王陛下より、呼び止められ、その大きな会議場のドアが開き、ブーメン子爵が、入って来た。
「失礼します」と深々と頭を下げ、ブーメン子爵は、緊張した面持ちで、真っ直ぐに前を見る。
国王陛下は、
「二人には、これから伝達式がある」
「・・・・・・」
国王陛下の側近は、陛下に書状を手渡し、
「我がラミベース国とクミン国との和平交渉において、素晴らしい成果をあげ、このラミベース国に、新たなる風を招き入れ、モクカツ国建設においても、軍部を引っ張り指導した功績を称え、ブーメン子爵には、軍最高司令の職を、アイシン男爵には、王宮にて宰相の職を与える」
ブーメン子爵は、「誠心誠意、務めさせて頂きます」と、大声で答え、いち早く頭を下げ、手を伸ばし、書状を受け取った。
それを見ていたアイシン男爵は、仕方なく、頭を下げ、国王陛下にお礼を述べ、書状を受け取った。
二人は、その後、会議室の重鎮たちに紹介され、それぞれの席に座り、今後の課題についての話し合いにも参加した。
(ヤラレタ・・・・。まさか、ブーメン子爵を取り込むとは・・・・。)
アイシン男爵は、チラッと、ブーメン子爵を見たが、ブーメン子爵のあまりにも緊張している顔を見て、少し、おかしくて、何も語らずに、その場で、問題点を精査して、普通に仕事ができる事を、喜んでもいた。
「ふふふ・・」
一方、ミルク王女には、本日、ダルマルが欠席すると、伝えられた。
周りのメイド達にも、意気消沈して、半分、涙目のミルク王女が気の毒に見えた。
「うっ、うっううう・・、別に、ダルマルなんか・・・欠席でもかまいません。一人でも、勉強は出来ます。ただ・・・アイシン男爵も戻られて、ダルマルの作った池にも水が入って・・・、そのお話を聞くのを楽しみにしていただけです。グスッ・・」
しかし、いつの間にか、ポタポタと大きな涙が、ミルク王女の目からこぼれ落ち、
「あ~~~~~~!! お母様~~~」泣き叫び、王妃を探すように、メイド達に訴えた。
メイド達は、慌てて、王妃を探し、ミルク王女は王妃に抱き着き、訴えた。
「どうしたのですか?」
「ダルマルが、嘘をつきました。今日は来ません」
「あらあら・・・。大丈夫よ。きっと、もうすぐ、いい知らせが届きます」
王妃は、ジュリエールが現国王の為に、教育し、丁寧に、愛情を注いだ貴族の令嬢で、ジュリエールのする事は、少し、わかっていた。
「どうして、お母様には、わかるの?」
「それは、きっと、ミルク王女が、もっと大きくなるとわかります。誰が、一番、あなたを思っていてくれるかを・・・」




