美しい凱旋②
第41章
その日、日差しは、輝き、山から流れて来た水は、透明で、澄み切っている。
二人は抱き合い、一緒に水が流れる池を眺め、抱き合い、涙を流した。
「あなた・・旦那・様、お帰りなさい。ずっと、ずっと、本当に、毎日、待っていました」
「私も、毎日、ここに戻りたかったよ。一番、大変な時に、一緒にいられなくて、本当にすまない」
「一日でも、早く戻れる為に、今回は、3人にも、無理を言った」
二人は抱き合ったままでいる。
「お義父様、お義母様、ジュリエール、心配かけました」
アイシン男爵は、深々と、頭を下げ、感謝を伝えた。
「旦那様、王宮に向かわれなくて、よろしいのでしょうか?」
「うん、大丈夫だ。カモフラージュの馬車が、明日、到着予定だ。一にも早くに戻りたかった。それに、色々な事で、帰国してからも忙しくなるだろう・・・。だから、一人で戻って来た」
「・・・・・・」
ミオは、きっと、それだけが、理由ではないと思いながらも、男爵を抱きしめた手を放さず、じっと、胸の中で、この幸福にしたっていた。
フィージア達は、すぐに、食事を用意して、くつろぎながら、水が、池に入る時間を過ごした。
「男爵、お疲れでしょう。お風呂に入りたいのでは、ないですか?」
「いや、今は、この水の流れが精神を癒してくれる。それに、なんと、美しいのだ。誰の作品だ?」
「ダルマルです」
「え?」
「ダルマルが?」
「はい、石を並べる事が、好きだと申したので、頼みました」
「この模様は?」
「ミルク王女との陣地取りのゲームから、ヒントを得たようです」
「う~~~ん、あの子は、本当にすごいな」
「ええ、ジュリエールが、ダルマルに食事をご馳走していました」
「おおおおお、それは、本当にすごい」
ホウラインが、近づいて来て、アイシン男爵に、可愛く挨拶をして、
「アイシン男爵様、ご帰国、おめでとうございます」
「ーーーホウライン、兄上と呼んでくれ。君は、僕の弟になる」
ホウラインは、赤い顔をして、
「兄上・・・、今日、船の進水をしてもいいでしょうか?」
「船?」
「はい、お父様が、作って下さいました」
「いいだろう。私も見届けたい。今日、進水式を執り行なおう」
プラスムスが、やって来て、
「君の帰りを、本当に待っていたよ。今日のこの日を、誰もが、一生、忘れないだろう」
「お義父様の、ご尽力に感謝しています。ありがとうございました」
「うん、いい、これで、毎日、ホウラインに、催促される事もなくなって、助かる」
「毎日、毎日、いつ?いつ?と聞かれていたからな・・・。ミオにとっても、ホウラインにとっても、君の凱旋が、私の望みだった。良く戻った。オリザナダ領のご両親にも、連絡した方がいい」
「エレナミ様には、今回、ミオも私も、沢山、助けられた。ミオのお腹の子供が、元気で育ったのを、見届けてから、お帰りになった」
「ええ、母上は、一生、王都を訪ねる事はないと思っていましたので、本当に意外でした」
「それだけ、孫を愛して、心配したのだろう。ーーーエレナミ様の往来の警備は、シキオール国王が、尽力してくださり、ずっと、彼女を守っていたようだ」
「はい、彼女が、王都に入れば、国王にとっては、唯一の身内で、宝です。ご自分のお膝元で、事故が起こる事は、絶対にありません。しかし、オリザナダ領では、公に国王陛下の力が届く事が出来ない、父上が、頑張るしかないのです」
「そこのバランスを取る事が、難しいですが、今回の事もあり、いつまでも、ジュリエールにばかり頼っていては、国王陛下も、示しがつきません」
「------」
その後、ヴァイオレット邸の中にいた。全部の職人、使用人たちが集められ、ホウライン号の進水が行われた。皆は、アイシン男爵の姿を見て、号泣していた。
「よかった。良かった。良かった」
「嬉しいです。お元気で、何よりです。有難い」
既に、明日のアイシン男爵の帰国の為に、振舞われる予定の料理が、どんどん運ばれ始めて、職人たち全員に、初めて、ヴァイオレット邸の食事が振る舞われた。
山の水源は、横に掘られ、その周りは、ダルマル指導の下で、石トンネルを作り、キレイな水は、掘り進められた小川を通り、何度も小石の浄化槽を抜け、池に入り、少しずつ排水されて行く。排水の水は、大規模開発された、畑の中を通り、植物を育てる為に使われる。
それでも、水は透き通っていて、夏の暑い日、今では、農業従事者になったクラン達が、手や顔を洗っている。水は、常に流れ、アイシン男爵の広い土地を、より一層、豊かな土地に変えた。
ダルマルは、ミオの願いを叶え、実は、両親の事も考えていた。
「奥様、ホウライン様が、船で、出航します」
ホウラインは、プラスムスが設計した船のミニチュアに乗り、池の中に入って行った。1歳半の男の子が立てるくらいの水しか入っていない為に、安全安心だが、それでも、ミールは、ハンカチを握りしめ、水に浮かぶホウラインを心配そうに見ていた。
「お母様、お父様の船は、本当に浮かんでいます。良かったですね」
「ええ、これで、沈んでしまったら、今日の夜は、どれ程、泣かれたかわかりません」
「お父様もお母様も、ホウラインには、本当に甘いです」
「あなたがそれを言いますか?」
「ハハハハハ・・・・」
ダルマルが、近づいて来て、アイシン男爵に挨拶をして、男爵も、ダルマルに、ポケットから、クミン国の金貨を1枚、渡す。
「旦那様、これは・・・?」
「うん、この国では、使えないが、クミン国では、家が1軒ほど買える金貨だそうだ。ミオの為に、素晴らしい池を作ってくれたダルマルに、お礼をしたい」
ダルマルは、周りに大人の反応を見て、もらってもいい物かを判断して、
「男爵様、ありがとうございます」とお礼の述べ、その後、嬉しそうにクランに渡し、
「奥様、・・・僕も、池に入ってもいいでしょうか?ホウライン様の船を押して差し上げます」
「いいけど・・・、水は冷たいでしょう?」
「大丈夫です。池の中の点検もしたいので、よろしいでしょうか?」
「そう?気をつけるのですよ」
「はい」ダルマルは、片時も離れないマロンを抱き、水の中に入って行った。ダルマルが入ると、その場で、沢山の食べ物を頬張っていた職人の子供たちも、どんどん入って行き、大騒ぎになって、池は、こどもプールへと、変貌して行った。
ジュリエールは、ミオに近づき、
「奥様、お昼寝のお時間です」と告げ。
「トハルト、今日は、一番のお祝いの日です。ここにいる職人たち全員に、思う存分、ご馳走して、子供達も思いっきり、遊ばせてください」と、話し、ミオとアイシン男爵は、屋敷の方へ、歩き始めた。
「はい、奥様」とトハルトは、頭を下げ、嬉しそうに二人を見送った。
屋敷に入り、急いで、入浴の準備を始め、少しの時間、ジュリエールとアイシン男爵は話をする。
「坊ちゃん、本当にご苦労様です。しかし、今日のように、護衛をつけずにお帰りすることは、今後しないで下さい」
「しかし、この方が最善だと思って・・・」
「それでも、全員を残して、お一人では、危険です。よろしいでしょうか?」
「はい、はい、これを最後にします。しかし、疲れたよ。風呂に入ったら、ミオと一緒に寝るよ」
「ーーーしかし、ミオ様は、後1ケ月程で、出産です・・・・・」
「どういう事だ?」
「禁欲生活が長いと・・・・その・・・」
「ジュリエール、僕は、信用できない男か?」
「いいえ、信用しています。信用していますが、今は、一番、産まれてくるお子様が大切です」
「あああ・・・、遂に、僕への愛情は、お腹の子供に持って行かれたよ。あの母上も、父上を置いて、王都に来ていて、ジュリエールにも禁欲をすすめられるようになった」
「坊ちゃん、ミオ様は、ご立派です。弟君が産まれても、ヤキモチを焼かれた事はありません」
「ーーーーーー」




