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戦争にむかう②

第37章

 クミン国までは、本当に遠くて、貴族たちの馬車では、1ケ月を要する。


 「国王陛下、ロックから、報告が届きました」


 この長旅で、宿屋を探す事は、用意ではない。しかし、アイシン男爵の部隊は、遅れているので、先陣が出発した後に、もう一度、その宿を借りる様になっている。意外に、貴族たちは優雅な移動である。


 しかし、その手紙には、2日前に、出発した、貴族たちが、土砂崩れに遭い、多数の死者が出たとの報告があった。


 「アイシン男爵・・・・」


 その手紙を読んだアイシン男爵は、

 「ロックに、私からの手紙を、直接、モクカツ皇子に渡せたら、渡してくれ! 」


 「はい」と、トナカリは、返事をして、また、舞い戻った。


 「アイシン男爵、宿屋を変更して置いて、良かったですね」


 「しかし、自国の貴族を殺して、何になるのか・・・?事故だと、誤魔化せるはずもない」


 「今回の出陣には、多く、サージ宰相とカレンジン軍長が、関わっている。モクカツ皇子の野望を、解き明かす目的もあるが、ついでに、私の暗殺もあったのだろう・・・。しかし、私たちは、あの一行には、参加していなかった。別ルートを進んでいた」


 「カレンジン軍長にも、結局、情報を集める部下が、存在していないと、明白にもなった。それは、きっと、裏で・・・・」


 「土砂崩れは、貧しい人々でも起こせる。自然災害とカモフラージュできる。しかし、その下を通っていたのは、他の領土から集められた貴族と、王都の名門貴族たちの跡取りが多い」


 「彼らは何がしたいのか・・・・?この国が滅びていく事を証明したいのか・・?」


 「・・・・・・」


 「アイシン男爵、その道が塞がれては、私たちの馬車は進むことが出来ません。トナカリの馬の様に、小さな馬なら、降りて、引く事も出来先ずが、どうしましょうか?」


 「しかし、この情報を得ている事は、秘密だから、とりあえず、明日は、予定通りに、出発しよう」


 「はい」


 次の日、誰よりも焦っているエプリング男爵に、急かされ、アイシン男爵一行は、その土砂崩れ現場に到着し、立ちすくむ・・。


 「これは、酷い・・・・」


 近くの住民たちが、アイシン男爵たちに近づいて来る。


 「貴族様、雨も振っていないのに、突然、大きな石が落ちて来て、その衝撃で、近くの家まで、埋まってしまいました。お願いです。どうそ、助けて下さい」


 ブーメン子爵と、従者のニキルは、似た者同士、力仕事には抵抗がなく、すぐに降りて、救助作業に参加を始めた。


 エプリング男爵や他の貴族たちも、一斉に降りて、捜索に参加する。ブーメン子爵は、持参した傷薬を、村の人たちと分け合い、手当てをする様に支持する。


 「アイシン男爵、どうしますか?」


 「とにかく、救出できる人を助けて、道を切り開こう。貴族も庶民もなく助けて行きたい! 」


 それから、その村の人達とも助け合い、全員で、大きな石をどけ、土砂に埋もれた人達を丁寧に探し出し、一人一人、確認を取り、涙を流した。


 「男爵・・・・」


 「ああ、一緒に、この前まで談笑していた彼らが、報われない・・・、どうしてこのような・・」


 アイシン男爵たちは、3日間、その場に留まり、土砂崩れの後処理を行い、また、国境へと向かって行った。


 今回の、この土砂崩れは、すぐに、国王のもとへも伝えられ、その現場へ残りの軍隊も出動を開始した。


 「サージ宰相を呼んでくれ! 」


 「サージ宰相、これはどういう事か、説明してくれないか?」


 「国王陛下、私には、何が起こっているか・・・」


 「ーー今回の戦争は、不可解な事が多い、先ずは、なぜ、モクカツ皇子が、他国の女性の為に、小競り合いを起こすのか?そして、なぜ、貴族たちが、この戦争に参加したかだ。彼らは、まだ、研修中で、配属すら決まっていない」


 「それも、事が起きてから、急いで出陣していて、準備不足も甚だしい。今回、私は、何も発言せずに、君とカレンジン軍長を、ずっと、見守り、調べていた」


 「君たちは、罠を仕掛けたかも知れないが、私も、君たちに罠を仕掛けた。そして、関係ない多くの貴族が亡くなった。目的のアイシン男爵は、その一行には居なかったがね・・・。なぜだ! どうしてだ?」


 サージ宰相は、一歩、後ろに下がった。


 「アイシン男爵に、教えたのですか?」


 「彼の部隊の一人が、病気に罹り、2日程、足止めをくらったらしい。彼は、運を持っている」


 「そんな・・・・。絶対に、あなたが指示をしたんだ! 」


 「サージ・トプステイン!! 」


 「シキオール国王、あなたは国王です。この国の代表です。それなのに、なぜ、ご自分で、すべてを決めずに、いつも、事を見守っているのですか?」


 「それは、君には何度も話した。君は、覚えていないのか、私の父上は、4人兄弟で、その4人共、国民を巻き添えにして、権力争いをして、この国を、滅亡させようとしたのだ」


 「あの時、先代国王が、息を吹き返さなければ、この国は、存在しない。先王のもとで、前王が、この国を建て直し、どうにか私に、手渡してくれた。その事実を知っている私は、3人の息子を授かっても、手放しで喜べなかった。また、あのような、暗黒の時代が、訪れる事を望まない」


 「だから、あなたは、先王の愛人だったジュリエールをいつまでも信じて、側に置いているのですか?」


 「そうだ。本来なら、彼女こそ国母だ。そして、アイシンこそ、この国の国王にふさわしい」


 「国王陛下、あなたこそ、お考えがおかしいです」


 その言葉を発したとたん、シキオール国王は、大剣を振り落とし、サージ宰相を罰した。


 「誰か、サージ宰相の取り調べを開始しろ、まだ、息をしている。嘘をついたなら、妻子を呼べ! 」


 「陛下・・・・」


 国王陛下に呼ばれた王室職員は、びっくりして、血だらけのサージ宰相を抱きかかえ、退出して行く。


 「文官を呼んで、今回の土砂崩れで亡くなった貴族たちに、お見舞いの手紙を書き、遺体が、戻り次第、国葬を行うと、知らせてくれ。首謀者は、サージ宰相。共犯者は、カレンジン軍長だと、伝え、すでに、サージ宰相は投獄され、トプステイン家は、取り壊される」


 「サージ、君の欲の深さには、ヘドが出る。王都のトプステイン邸のある場所は、本来なら、あの時、亡くなった国民たちの墓場だ。そこを買い取り、君が、屋敷を建てた時に、私はすでに、ジュリエールを王都に呼び戻したのだ」


 「例え、我が子だろうと、あの遺言を覆すことは出来ない。ジュリエールを守り、エレナミを守り、アイシン男爵を守って、この国を守る。それが、私にできる事だ。その為なら、無能と呼ばれても構わない」


 「・・・イヤ、そう呼ばれたから、つい、剣を抜いてしまったか・・・・?」


 「私も、まだまだだ。また、ジュリエールに怒られる。王宮を汚すなと・・・、はぁ・・・・」


 国王陛下は、誰に話す訳でもないが、大声で、独り言をいい、汚れた部屋を出て行った。



 今回の土砂崩れは、サージ宰相とカレンジン軍長が、多くの貴族を殺害する為に、計画した事だと、王室は、素早く発表し、国王陛下は、遺憾の意を表し、王都の貴族や、地方貴族が、立ち上がる事を防いだ。


 「国王陛下、カレンジン軍長の処分は、どのようにしますか?」


 「ああ、多分、戦死になる予定だ。一族は、責任をとって、処刑しろ」



 国王陛下のその言葉を聞いて、

 「カレンジン軍長は、まさか、土砂崩れは、失敗して、サージ宰相の事や、ご自分の家族の事も、知らないまま戦場に立っているのか・・・?」




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