戦争にむかう。
第36章
ダルマルは、久しぶりに、ヴァイオレット邸で、お菓子をご馳走になっている。
ミオが、「ダルマル、何かご用があって来たのでしょう?」
ずっと、食べ続けるダルマルに、ミオは、たずねる。
「はい、そうだ。父上と母上が、奥様の為に、1日も早く、池を完成させたいので、工事の許可が欲しいと、申していました」
「あら、やはり、ダルマルは、優秀で、キチンと話が出来るのね?」
今、広い、陽当たりの良いサロンの中、通常なら、きっと、ダルマルは、ミオの隣にチョコンと座って、お菓子を頬張っているが、何故か、今は、エレナミ夫人から、離れようとしない。
ミオは、心の中で、ダルマル・・・裏切り者と罵っていた。
「へへへ・・・・」
「後、昨日、ミルク王女から聞いた話では、アイシン男爵は、急病人の介護の為に、最後尾まで落ちて、ゆっくりと戦地を目指していると、言っていました」
「本当にそう言っていたの?」
「・・・ミルク王女は、顔は可愛いが、口は悪く、気が強いので、ーーーモタツイテいると、言っていました」
ジュリエールが、「ダルマル、今度は、いつ、王宮に行くの?」
「ーーー工事が再開したら、ヴァイオレット邸に通いたいです」
「そう・・、そうすると、中々、再開できないかも知れないけど・・、いいの?」
ダルマルは、エレナミ夫人の後ろに隠れて、モジモジしている。
「ミルク王女は、自分が勝てる訓練しかしないし、ダンスも何度もすると、疲れてお腹が空きます」
「ーーーーーー」
「でも、・・・工事が再開しても、ミルク王女に呼ばれたら、行きます」
「そう、それは、良かったわ、よろしくお願いね」
エレナミ夫人は、
「ダルマルは、ジュリエールの授業がない時は、何をしているの?」
「石や砂を運んでいます」
「そう、大変なお仕事ね」
「いいえ、大好きです。石を見つけて、違う石と組み合わせて、平らな地面を作って行くのが面白いです。細かな石も、細かくなる前は、大きな石で、大きな石も、もしかしたら、もっと大きな岩だったと、思います」
「そう・・・・?」
「父上が、話していましたが、今回、見つかった水源も地下ではなく、岩と岩の間から、水が出ていたそうです」
「そうなの?」
「山を崩して、食料を保管する小屋を建てる時に、崩した山から、ほんの少しだけ、水が出ていたそうです。そこから、水をどうにかして引くと、父は、言っていました」
ダルマルの話を聞いて、ミオは、ダルマルに提案する。
「じゃあ、ダルマル、お父様に、わたくしの提案を伝えて下さる?」
「はい、奥様」
「池の底はすべて、美しい石を張ります。その石は、ダルマルに任せます。平らで、裸足でもケガをしない様に、キレイな石を探して、張ってくれる?」
「どうして?」
「赤ちゃんが産まれたら、その池で遊ばせてあげたいの。この夏には、多分、ホウラインとマロンが遊べたらいいかなぁ・・・」
「僕は、遊べないの?」
「ダルマルも、勿論、遊べます。その頃には、旦那様が、戻って来て、ダルマル達が作り上げた池を、見てくれると思っています」
「はい、僕も、みんなも、思っています」
◇◇◇◇◇◇
アイシン男爵の一行は、エプリング男爵が、途中で高熱に襲われ、立ち往生をしていた。
「アイシン男爵、すまない、いつも迷惑をかけて、本当に、申し訳ない」
「大丈夫です。今日は、どこかの宿屋に泊まって、回復してから、追いつきましょう」
「私たちが急いで追い着いても、大した戦力にはなりません。先頭は、戦いを知り尽くした軍部です。彼らに任せましょう」
アイシン男爵は、国境までの道のりを、ゆっくりと進んでいる。
「男爵、宿屋が見つかりました。医師の診察も頼めそうです。そこで、様子を見て、その後、出発しましょう」
「ああ、そうしよう」
アイシン男爵は、エプリング男爵と従者に、回復するまで、ここに滞在する事を告げる。
エプリング男爵は、泣きそうな程に感謝しているが、アイシン男爵にとっては好都合だった。
部屋に入り、
「ガムシャ、ロックからは、何か言って来たか?」
「はい、トナカリから、手紙が届きました」
トナカリは、結局、アイシン男爵と離れる事を嫌がり、ガムシャとロックの間の連絡係を、自ら志願して、伝書鳩の役目を負っている。
「こちらです」
ロックは、いち早く荒れた国境に向かって情報を集めていたので、丁度、その報告が、この宿に、泊っているアイシン男爵に届いた。
アイシン男爵は、じっくりと読み、ロックに話す。
「クミン国とこう着状態にある事は、事実らしい、なんと、第2皇子は、クミン国の娘に興味を持ち、ラミベース国側に、さらったようだ・・・。その娘は、クミン国の王室関係者で、国内でも、秘密にしていた娘だったらしく、クミン国の怒りは、収まらないらしい・・・」
「どういう事ですか?第2皇子は、ご結婚されていましたが、お子様はなく、今回の大罪で、越境に飛ばされた時に、その王妃から、きっぱりと、離縁を突き付けられ、一人ぽっちで、向かわれたのですよね?」
「ーーーしかし、美術品を贋作に変えて得た資金の行方は、未だに解明できていない」
「そして、クミン国では、その娘の事は、誰も知らないのに、クミン国が、その娘の為に、奪還に兵をあげている事の謎は、これから調べると、なっている」
「・・・・・・」
「アイシン男爵、第2皇子の立場は、この国でも不安定でした」
「ああ、ジュリエールによると、モクカツ第2皇子は、側近の進めるままに前の妃を娶り、特に、楽しみもなく、野望も抱くような感じとは、思えなかったと、言っていました。しかし、彼は、この国の財産を国外に送り、大量の資金をどこかに隠している。そして、今、国内でも厳しい状況なのに、他の国とも戦争を始めようとしている。そういう事なのだろう・・・・?」
「もう少し、調べてから、ゆっくりと、進むことにしよう」
次の日、エプリング男爵は、回復して、アイシン男爵一行は、また、道を急いだ。
ブーメン子爵が、アイシン男爵に話しかける。
「随分、遅れたけど、大丈夫だろうか?」
「もしも、戦争になっても、病人が、役立つだとは思えないだろう?」
「それも、そうだ、ただ、いきなり国境に戦いに行ってくれと、言われて、その後の説明が全然ない。おかしいと思わないか?」
「しかし、出発した時は、軍が移動を初めていて、確実に戦闘態勢だったが、後から合流する。僕たちみたいなの貴族が、100~200居ても、そんな戦力になるとは、思えないが、これは訓練なのか?」
「訓練で、戦争には行かせないと思うが・・・」
「最終的には、和平交渉の為に、知恵を出して、交渉の為に、草案を作ったりするために、貴族の力が必要になる事もある」
「そうか、俺は、本当に、戦うつもりで、使用人達から、傷薬を大量に持たせられた。まさか、エプリング男爵の様に、病気になるとは、考えていなかったからな・・・」
「アイシン男爵の馬車は、完全装備だろう?」
「そうでもない、あまり重いと、馬に負担がかかり、長旅には向かない。俊敏性にも欠けるので、荷物は極力、減らして来た」
「しかし、私も、この急な出発には、疑問を抱いている。それも、このように大勢の軍隊を移動させて、ラミベース国内も心配だ」




