ダルマル②
第33章
ダルマルは、この前の新緑の会で、着用した服に身を包み、アイシン男爵と共に、馬車に乗り、ミオやクラン達に見送られながら、王宮へと向かった。
「ダルマル、大丈夫か?トイレとか、変わった事があった時は、私に言いなさい」
「はい・・・」
ダルマルは、何度か、ヴァイオレット家の馬車に乗った事はあるが、アイシン男爵と二人で乗る事は、一度もなく、王宮がどのような場所かも知らず、ただ二人の空間に緊張していた。
今回の事件では、美術品の鑑定をする人間が、非常に少ない事が、議題に上がり、国王陛下は、王妃から話を聞いて、ダルマルの存在を知り、さり気なく、王宮内の美術品の鑑定をすることにした。
名目上は、ミルク王女の勉強相手となっている。
この日、国王陛下は、ミルク王女を、ジュリエールから褒められたと聞き、機嫌はすごくいい。
アイシン男爵と共に、現われたダルマルは、王宮でたくさんの知り合いに会った。
「ダルマル、どうした?私よりいい生地の服を着て、王宮に用事か?」
アイシン男爵が、
「ええ、今日は、ミルク王女との勉強会に呼ばれています」
「ああ、確かにダルマルは、本当に優秀で、頭がいい。勉強相手にはもってこいだ。それと、この前は、ありがとう」と、話し、多くの貴族たちが、ダルマルを歓迎した。
アイシン男爵とダルマルは、国王陛下の部屋に向かい、挨拶をする。その場には、ミルク王女も一緒にいた。
「初めまして、ダルマルと申します、今日は、王宮へのご招待、ありがとうございます」
今回の事は、国王陛下は、ダルマルの事を、サージ宰相には話していない。
「ユーリア王妃から、君の事は聞いている。今日は、ミルクと一緒に、王宮内を歩いてくれるか?」
「はい」
今回は、アイシン男爵、ダルマル、ミルクの4人と国王の私設秘書の様な従者が数人同行する。王宮内を歩く旅にといってもいい。王宮は、広く、隅から隅まで、美術品を見て歩く。
「ダルマル、どうだ?気に入った物は、王宮にあるか?」
「ジュリエール様は、偽物と言ってはイケナイと言います」
「では、本物は、言ってもいいのか?」
「スカートを引っ張ります」
「では、アイシン男爵のズボンを引くといい。男爵は、後ろの人間に教えてくれ」
「ダルマルは、1日の内、どの位、ジュリエールの講義をきいているのか?」
「わかりませんが、男爵との訓練が終わって、両親の仕事が終わるまで、ずっと、教室にいます」
「ジュリエールは、私の教師でもあった。厳しいだろう?」
「いいえ、いつも、優しいです」
「本当です。でも、お菓子は貰った事がありません。おかし、嫌いなのかな・・・?」
ミルク王女が質問する。
「いつも、何を勉強しているの?」
「う~~~と、色々だよ。メイドの仕事やこの国の歴史、歩き方や、食事のマナー、数学や動物の話、食べてはいけない植物とか、体にいい食品とか、いっぱい話してくれます」
「それをノートに取るの?」とミルク王女は聞く。
「ノートは使わない」と国王陛下と男爵、ダルマルは、一斉に言う。
「ジュリエールは、その場で覚えられない生徒は、置いて行く、厳しい先生だ。生徒が理解していなくても、自分には、どうでもいい事で、損をするのは、生徒だから、その場で覚えなくてはいけない。・・・本当に、苦労するよ」
「私の時もそうでした。一度話した事は、もう一度、聞く事は出来ません。だから、ダルマルが覚えた事は、物凄く大切な事で、それを覚えられる彼は、本当に賢いとおもいます」とアイシン男爵は話す。
「ああ、ダルマルは、彼女にとって、最高の生徒だろう・・?今までが酷かったかも知れないが・・」
「母も、ジュリエールが王都に向かうまでは、常に勉強の毎日だったと、話した事があります」
「エレナミもか・・、そうか・・・。昔が懐かしいよ」
「所で、この棟の中で、ダルマルは、ズボンを引いたか?」
「いいえ・・・、引いていません」
「わかった。次に行こう!」
その後、ダルマルは、王妃に呼ばれて、アイシン男爵が、帰宅するまでの時間を、王妃と王女と一緒に過ごす事になった。
ミルク王女には、専属の教師が、指導にあたっている、その見学がダルマルの役目だった。
しかし、ミルク王女からの誘いもあり、音楽の先生とは、ピアノの合同練習、ダンスの時間は、ダルマルを相手に踊って、文学の先生には、美しく文字を書く事を指導された。
「ダルマルって、本当に何でもできるのね?」
「そうかな・・・?普通だと思います」
「どうして、女の子がするようなことが、完璧にできるの?」
「僕は、・・・剣は、得意ではありません」
「苦手な物があるんだ・・・。では、おやつを食べてから、わたくしと訓練しましょう?」
「ええ・・・」いつになく、嫌な顔をするダルマルに、
「おやつを奮発します」
「ーーーーーー」
ミルク王女とダルマルは、着替えて王宮内に併設している武道訓練所に向かった。
途中で会う人達の中には、ダルマルを知っている人がいて、話しかけたいが、王女の護衛が、それを許さない雰囲気をかもし出していた。
「ダルマルか・・・、そう言えば、確か、アイシン男爵の指導を受けていると・・・」
ダルマルとミルク王女が、訓練所の広場で、指導を受けていると、だんだん、見学者が増え、周りはガヤガヤしてくる。
指導者は、準備運動と素振りを指導して、組手に入る。
ダルマルは、モジモジして、女性指導者側を離れようとしないが、結局は、押し出され、ミルク王女と組み手をすることになった。当然の事だが、「えい! 」と声を上げた瞬間に、ダルマルの頭上には、ミルク王女の剣が振り落ちていた。
「あ~~~~、やっぱり・・・・。ダルマルだ」
その場の人たちは、見てはいけない物を見たように、その場を立ち去った。
「ダルマル、あなた、鈍いわ・・・・」
「そうなんだよ。剣は、何度、教えてもらっても上達しないし、直ぐに、やられてしまう。才能が無いと自覚しているよ」
「勉強が出来ても、剣の才能がないと、致命的に駄目ね」
「僕は、一生、ヴァイオレット家で、重い物を運んだりして、働かせてもらうつもりだから、剣は大目に見てもらうよ」
「・・・・・・」
その後、ダルマルの剣の事を話す、地方貴族はいなくなり、何故か触れてはいけない事になった。
ダルマルが王宮を訪ねて、3ケ月後、美術品横流し事件は、解決した。
「あの時、王宮の美術品は、3つの棟に整理されていた。国王陛下が一番最初に、向かった棟は、モクカツ第2皇子が買い入れた、美術品の棟だった」
「国王陛下は、気づいていらっしゃったのかしら・・?」
「多分、一番、怪しいとは思っていたのだろう。しかし、第1皇子の棟でも、贋作は多く見つかったが、それは、本当に知らないで購入していたのかも知れない」
「・・・・・・」
「ナツ第3皇子の棟は、どうでしたが?」
「ナツ皇子は、完璧だ。あのダルマルさえも、踊る程に喜んで、目を輝かせていた」
「そうなの?ダルマルが踊ったの?」
「ああ、踊る事は出来ても、剣は、まったく駄目で、あの後、しばらく、私の指導能力を疑われたよ。ハハハ・・・」
「それでどうなるの?第2皇子は?」
「しばらくは、辺境警備に行かされる。厳しい環境の中での暮らしになるだろう」
「それで、この国の美術品は、やはり海外に流れているの?」
「ああ、お義父様に聞いたら、そのような事を言っていて、海外では、値が上がっているのなら、そのままでいいのではないかと、話されていたので、私も国王陛下には、そのように述べた」
「よくわからないけど、お父様に疑いがかからなくて良かったわ・・」
「ああ、寝るとしよう」




