新緑の会③
第32章
体力は、多少改善されたけど、5月の暑い日、熱い飴を完成させる作業は、ミオの体力を確実に消耗させていた。水筒の冷たい飲み物を飲んでも、真っ赤な顔は、収まらなかった。
そんな中、舞台で美術品の展示が始まった。
「奥様、大丈夫ですか?顔が真っ赤ですが・・・」
「暑くて、目まいがします」
「奥様、お首のスカーフは、お取りしてもよろしいでしょうか?クランの傘は、どの貴族の傘よりも大きく、大人、4人分の日陰を作っているが、ミオは、本当に、日焼けを嫌がっていた。
「仕方がありません。取りましょう。首に、冷たいタオルをお願いします」
応急処置がとられる中、本日、最大のイベントが始まった。
リリスリー夫人によって、今回、新緑の会の趣旨が、伝えられた。
「現在、王都、王宮にて、大量の美術品が贋作にすり替えれれています。国王陛下のもと、調査が行われていますが、わたくし達も、その調査にご協力したいと、考えております」
「流石、サージ宰相夫人ですね」
「それに、この美術品の数は、本当に尊敬します。すべて、本物ですよね・・?」
そんな時に、リキュルが大声で話しかける。
「アイシン男爵夫人、この中に、贋作は、ありますか?ご意見をお聞かせください」
ミオは、日焼けを嫌い、当日は、長そでのドレスに、手袋、ドレスに合わせて、日焼けをしない為に、大きな帽子を被っている。それなのに汗は、さほど流れていない。
体内のサーモスタットが、壊れていると、感じていて、目が霞む・・・・。
近くのミオの取り巻きたちは、ミオの変化に気づき始めた。
「アイシン男爵夫人は、ご気分が優れません」
リキュルは、そのような事で、この場を収めるつもりは毛頭なく、話を続ける。
「それでは、この5点の物は、すべて本物でよろしいのでしょうか?」
その場の雰囲気は、ミオの退場を許さない雰囲気で、ミオは、クランに支えられながら、立ち上がり、その5点を見つめる。
「リキュル様、申し訳ありませんが、近くに行ってもよろしいでしょうか?」
「ええ、失礼しました。どうぞ、こちらに・・・・」
クランは、ミオを抱きかかえ、ダルマルと共に、舞台に上がる。
舞台上のミオは、誰が見ても、具合が悪いとわかる・・。真っ赤な顔で、足取りがふらついている。
ミオは、何とか、ダルマルと共に歩き、その5点を簡単に見て、
「こちらの1点だけが、本物です」
会場は、ざわざわ・・・ざわ・・・。収拾がつかなくなる程、大騒ぎになる。
「な・・・何を・・!! あなた・・・気は確かなの?」
「リキュル様、正解がないのであれば、このような催しは、無意味で、この国は、偽物ばかりの国になってしまいます」
「ーーーあなた!! 」
ミオは、リリスリー夫人の方を向き、お辞儀をして、
「リリスリー夫人、わたくし、体調が悪くて・・・馬車に戻りたいのですが、よろしいでしょうか?後、美術品の鑑定が必要でしたら、残った彼女たちが、きっと、してくれるでしょう。大丈夫です。彼女たちを信じて下さい」
ミオは、地方貴族の女性たちに、この後の事をゆだねて、そのまま気を失った。
「奥様!! 」フィージアは叫び、
クランは、しっかりミオを抱き、猛ダッシュで、パンネルとコメネルの馬車に向かった。
途中でトハルト達と合流して、急いで、馬車に乗り込んだ。
パンネルとコメネルの馬車は、まるで救急車の様な仕様になっていて、いつでも診療ができる。
やっと追いついてきた、フィージアが、ミオのドレスを脱がし、みんなで、冷たいタオルを次々に、ミオの体に挟み込み、体温を下げて行く。この国では、珍しい点滴も、直ぐに体内に入れられ、しばらくすると、ミオの意識は戻り、全員で、安堵する。
「奥様、水を飲んで下さい。蜂蜜で甘くしてあります。大丈夫です。苦くありません。ミオ様、やはり、このように暑い日、長い時間、外にいる事は、まだ、無理です」
「ええ、わたくしも、そう思います。断りたかった・・・・。暑い・・・。旦那様・・・助けて・・」
たった数分の処理で、何とか息を戻したミオは、そのまま、馬車は、大急ぎで、ヴァイオレット邸へと向かった。
残されたのは、ダルマルとジュリエールだけだったが、ジュリエールは、礼儀正しく、アイシン男爵夫人は、体調が優れず、屋敷に戻った事を、王妃と王女に告げ、深く頭を下げた。
「ジュリエール、あなたは、ミオ様に教えているのですか?」
「はい、彼女には、わたくしの知る知識のすべてを、指導するつもりです。しかし、彼女は、あのように、虚弱ですので、無理をしない範囲で、教えています」
「そのことを、リリスリー夫人は、ご存じないのでしょうか?」
「さぁ、わかりかねます」
「しかし、彼女、どうして、後の事を、あの夫人たちに委ねたのですか?」
「それは、気づく人間と、気づかない人間で、答えが見えてきます」
「ジュリエール・・・、昔に戻ったようで、少し、怖いです」
ミルク王女は、母上が、このように親しく使用人と、話をしている事を見たことがない。
その頃、舞台上では、地方貴族たちと、王都貴族たちの対立は、激しくなってきた。
地方貴族に囲まれて、ダルマルは、決して見えない位置にいる。そこに、縄に繋がれた美術館の館長が連れて来られて、鑑定させられる。
「さぁ、答えを言いなさい! どちらにしても、投獄は免れまい事実です。この場で、贋作を認めても、変わらないのであれば、最後は、知識人として、鑑定しなさい」とリキュルは話す。
結構、ボロボロの状態で、舞台上に現われた館長は、
「先程の、アイシン男爵夫人の言われた通りです」
ざわざわ・・・ざわ・・・。
「それでは、次の絵は、どうですか?そこの子爵夫人?」
「偽物です」
「次は、男爵夫人?」
「偽物です」
「次!! ~~~!!! 」
どんどん、トプステイン所蔵の美術品の鑑定が行われるが、地方貴族の夫人は、決して間違えない。
「どういう事です?」
リリスリー夫人は、遂に、ジュリエールを探すが、ジュリエールは、王妃と仲良く談笑中で、手掛かりがつかめない、
「一体、どうして・・・・・。彼女たちにわかって、わたくし達にはわからないのでしょう」
その様子を、じっと見ていたミルク王女は、
「お母様、あの1本が、夫人のスカートを引くと、本物です」
王妃は、急いで、その様子を見た。王妃の場所からは、ドレスのスカートに隠れたダルマスの姿が見えた。
「ミルク王女、1本とは?」とジュリエールが、初めて質問する。
「あの太った子、飴を5本も持っていたのに、わたくしには、1本だけしかくれなかったの・・」
「だから、1本ですか?では、ダルマルのくれた飴の果物は何でしたでしょうか?」
「イチゴでした。とっても美味しくて、イチゴが一番好きでした」
「他のお子さまたちは、王女に、イチゴを下さいましたか?」
「・・・いいえ」
「ミルク王女は、ダルマルが、今、この場でダルマルが教えている事に、気づいた唯一の人間です。あなたは、本当に、賢い王女様です。どうか、そのままお育ち下さい」
「でも、わたくしは、ダルマルが一番、美味しい飴をくれた事には気づいていませんでした」
「大丈夫です。お父様もお母様も、小さい頃は、気づかない事が沢山ありました。王妃・・・、王女は、立派な王女にお育ちです」
「ジュリエール、わたくしは、初めて、あなたに褒められたようです」
「そうですか?わたくしも年をとって、優しくなりました。ふふ・・。王妃、それにしても、このままでは、お肌にシミが出来ますよ」
「ええ、茶番を閉じましょう」
「王妃、あなたは国母です。これから何が起こっても、ミルク王女と共に、本物を探して下さい」
ジュリエールは、頭を下げて、王妃の後を歩き、ダルマルをピックアップして、新緑の会は、閉会となった。




