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新緑の会に向けて、

第29章

 その金箔豪華な招待状だったが、この前の晩さん会の失敗を考慮して、本当に、サージ宰相の屋敷の庭で行われ、お茶と簡単なお菓子を、振舞うような会らしい・・。


 「当日、お茶を召し上がる人は、いらっしゃるのでしょうか?」

 「お茶会ですから・・・、水筒を持参と言う事も出来ないでしょう」


 「さて、どうしましょうか?」


 「当時は、新緑の会と申しましても、日中は、日差しが強くて、暑いと思われます。一般のお茶会では、男性従者は、外での待機になり、メイドを連れての参加は許されています。人数制限は、ありませんが、あまりにも大勢ですと、失礼になります」


 「しかし、2人では、少なすぎます。最低、3人は、必要でしょう」


 「それに・・・、この厄介な名目が・・・・」


 『当日は、それぞれが、芸術を発表し、交流を深めましょう。』


 『芸術の発表会?・・・新緑の会で?』


 厳しいジュリエールは、

 「どういう事でしょう?・・まったく、彼女のセンスを疑います」・・・・その場の全員が、無言を貫く。


 「はぁ~~~~」



 その頃、王宮でも、その話題が上がっていた。

 「サージ宰相、これはどういう事だ?説明してくれ、これ以上の揉め事はごめんだ」


 「はい、陛下、先日、娘のリキュルが、国営の美術館の直営のお店で、大量の贋作を購入して来ました」


 「え?」


 「あの美術館は国営です」


 「ああ、そのカラクリは、今、調査中ですが、美術館にある美術品なども、すべて、鑑定のやり直しを、始めました」


 「だから?」


 「その時、リキュルと一緒にいたのは、アイシン男爵の奥様で、彼女は、正規品だけを購入して、帰ったそうですが、おかしいと思いませんか?」


 国王陛下はサージ宰相に聞く、

 「その時、ジュリエールも一緒だったのではないか?」


 「ご一緒でしたが、その年代物の櫛の購入を希望したのは、アイシン男爵夫人だったそうです」


 国王陛下は、ため息をついて、自分の首を自分で、締め上げているようだと、感じている。


 「この前の雨の事もあり、少し確かめたいと、思いまして、家内に、許可を出しました」


 「サージ宰相、君は、どうしてもヴァイオレット家を、どうにかしたいのか?」


 「そう言う訳でもありませんが、彼ほどの人物が、庶民と結婚して、出世しないのは、国益を損じると感じます。今後は、3人の皇子のもとで、国益を上げたいと思います」


 「しかし、彼は、本当に、あの奥方を愛しているらしい・・・。君とリキュルは、諦めた方がいいと思うがね・・・。それとも、もしかして、サージ宰相! 彼が味方についた皇子に、リキュルを嫁がせるつもりか?なんて、腹黒い・・・」


 サージ宰相は、なりふり構わす、国王陛下に頭を下げる。


 「国王陛下、もう一度だけ、チャンスを下さい。このお茶会で、誰かが失神したりすることは、絶対にありません。小細工は一切なしで、真っ向勝負をかけるつもりで、挑みます」


 「・・・・サージ宰相」


 「とにかく、今回の件は、君の家が単独で行う事だ。私には一切、迷惑をかけない様にしてくれ。それから、もしも、我が国の美術品を、他国へ横流ししている人間が、見つかれば、大事になる。心して、かかってくれ! もう、ついでの災難はごめんだ!」


 「はい、国王陛下」


 サージ宰相を見送った国王は、どうか、これ以上の災害が起きない事を祈った。


 「王妃と娘を呼んでくれ! 」


 サージ宰相の奥様、リリスリー夫人からの招待状が来てから、ヴァイオレット家への問い合わせは、毎日のようにあるが、その新緑の会での詳細は、まだ、誰も知らなかった。


 地方出身貴族の奥方たちは、夜も眠れずに、体調を崩し始める人が続出して来たので、リリスリー夫人は、その日の詳細を、もう一度、手紙にして発送した。当然の事ながら、王都、地方、同じ内容で、不公平がないように、細心の注意を払い、丁寧に、そのお茶会での催し物の内容が記されていた。


 「奥様、また、リリスリー様からお手紙です」とジュリエールが、髪を結っている途中のミオに、渡す。

「ええ、読み上げて頂けますか?」


 ジュリエールが、封を開封し、ミオに読み上げる。


 「はい、5月15日に予定されている新緑の会での催し物は、芸術をめでながら、出席者の皆様にも、何かおひとつ、芸を披露して頂きたいと、あります」


 「芸は、簡単な水彩画でも、音楽でも、詩や文学の感想、朗読でもいいとされています」


 「そう?」


 「その後、今、王都では、偽物の美術品が、大量に発見され、その鑑定をその場で行う予定だと、記されています」


 「鑑定団でもいらっしゃるのかしら?」


 「そして、今回、スペシャルゲストとして、王妃と王女も参加されますので、その為に、お子様の同伴も許可するようです」


 「サージ宰相のトプステイン家は、そんなに広いお屋敷なのですね」


 「はい、土地の広さで判断するのなら、このヴァイオレット家の方が広いですが、アチラは王都の中心に位置しています。王宮は、やや西側に位置していますので、資産額は、計り知れないと思われます」


 「それにしても、リリスリー夫人は、お優しいお方ですね。イベントの多いお茶会に、お子様の同伴を許して下さるなんて・・、ダルマルも同伴できます」


 「はい、では、私たちの他に、ダルマルも同伴する事としましょう」


 「ダルマルが、気後れするのは、可哀そうですから、クランも連れて参りましょう」


 「え!! 」


 「メイドが少ないと、バカにされます」


 「・・・・・・」



 その後、クランとダルマルに、その話が伝わり、二人には、衣装や靴等が、進呈され、使用人としてのマナー等が教えられた。


 「それと、クラン、わたくしに飴の作り方を教えてください」


 「飴ですか?」

 「はい、飴です。当日は、沢山の子供が来ます。きっと、彼らにとっても、つまらない催しです」


 その後、ミオは大量に砂糖を購入し、毎日、飴をクランと一緒に作った。失敗作は、子供達のお土産や、テュテュルールで、売りはじめ、意外に毎日、完売となり、無駄にすることはなかった。


 厨房で、失敗した飴を、一番最初に食べるのは、いつも、ダルマルの仕事で、特別な手袋をしたミオは、


 「ーーーダルマル、今日は失敗しないので、おやつは、ないと思いなさい」と話すと、本当に可哀そうな顔をする。


 ミオが考えたのは、渦巻き状に高くなる飴のツリーで、熱い飴を手際よく巻いて高さを出して行く、その後、リボン型にした飴を、ツリーの上に乗せ、三角すいの空間に、クランの櫛でさした飴を指して行く。


 この黄金のツリーを、新緑の会で、披露する予定だ。だから、重い物を持つクランは、絶対に必要で、小さな飴は、クランしか作れない。ミオは、この大技を披露するだけでいい・・・。


 「奥様、今日は、本当に成功です」

 「ああ、本当に疲れました。当日、もしも、わたくしが失敗しても、クラン、助けてくれる?」


 「勿論です。また、溶かして、再生します」

 「奥様、旦那様がお見えです」


 アイシン男爵は、ミオの作った大きな飴の三角すいを見て、感動して話す。


 「これはまた、美しい、これこそ芸術だよ。ジュリエールは、どう思う?」


 「よろしいかと、思います。この後、クランの飴が刺さり、もう一工夫するようですので、もっと、煌びやかな黄金のツリーへと、変わるでしょう」


 アイシン男爵は、ミオを抱き、頭にキスをして、褒めたたえた。


 「所で、当日は、水筒は、持参するか、どうしても聞いて欲しいと、周りから言われて・・・」


 少しの沈黙の後、その場の女性たちは、全員で、「持参します」と、答えた。



 お茶会に、お茶の持参って、いいのか・・・・・?


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