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悪魔と悪魔 (Demon & Devil)  作者: サムライドラゴン
本編
4/5

街のデーモン


 高台にあるフェンスに寄りかかり、タバコを吸っているデーモンがいた。

 デーモンは月を見ている。

 夜の街を照らす綺麗な月。


「そろそろ移動をするか。」


 そう言うとロイは近くにいたアリスに声をかけ、屋根に乗り場所を移動する。

 普通に道を走っているアリスを見張りながら、屋根の上を走る。


 アリスの行動は捜索と囮役を兼ね備えている。

 わざと音を立てることにより、目立たせる。

 そして、その音に(おび)き寄せられた哀れなデビルがアリスを追いかける。

 前回と同じ、最下級のデビルだ。


 ロイは屋根の上からアリスを追っているデビルを狙撃する。

 デビルの背中に当たった。

 ロイはデビルが(ひる)んでいる間に屋根から飛び降り、デビルの正面に降りる。

 そしてデビルの額に二発撃った。

 デビルは倒れ、黒い煙と共に消滅する。


「さて、蛆虫(うじむし)共が()いてくるぞ。」


 そう言って、銃を回して構え直す。

 アリスは既に、どこかに隠れている。


 しばらくするとロイの言う通り、最下級のデビルたちがロイに集まってきた。

 ロイは透かさずデビルの頭を狙い撃ち続ける。

 1体、2体と次々に倒していく。

 デビルは誰一人、ロイに傷を付けることができない。

 ただ死んでいくだけであった。


 数分後、道にいたのはロイ一人だった。

 周りを確認したアリスが、ロイに駆け寄った。

 しかしロイはまだ警戒している。



 デーモンはデビルの出現位置を知ることはできないが、気配は感知することができる。

 ロイはまだデビルの気配を感じるようだ。


「一体どこだ・・・?」


 ロイは家の屋根に上り、気を集中させる。

 約十秒後に、ロイは動き出した。


「アリスは先に家に帰ってろ!」


 そう言って、ロイは屋根から屋根に移って移動し始めた。

 道の一つ一つを確認しながら高速で移動する。




 そしてついに見つけ出した。

 屋根の上から見下ろすと、灰色の怪物がいた。

 デビルだ。

 デビルは獲物を探して徘徊しているようだった。

 ロイはデビルの背後に降りた。

 そして後頭部を狙って撃った。


 撃った弾は貫通し、デビルは突然の激痛によって暴れている。

 そしてロイの方を向いた。


「(見た目からして、下級のデビルというところか・・・。)」


 最下級の一つ上の下級ランクのデビル。

 その姿はカマキリのように両腕が鎌になっており、足は昆虫のように六本あり、そして最下級と同じ白い人の顔をしていた。

 そしてロイより一回り大きい。


 デビルは怒りの表情を見せながらロイに接近する。

 ロイは後ろに跳びながら、デビルの頭を打ち抜こうとする。

 デビルは鎌で防いだが、弾が鎌を貫通して頭に当たる。

 だが、鎌を貫通したことにより弾速が弱まり、大きなダメージは与えられなかった。


 ロイは建物の壁に追い詰められた。

 デビルは両方の腕、(すなわ)ち鎌を振り下ろした。

 振り下ろされる瞬間、ロイは横に跳び攻撃を回避した。

 すると、デビルの鎌は建物に刺さり抜けなくなった。


 ロイはこれを狙っていた。

 デビルの背中に回り、後頭部目掛けて数発弾を撃つ。

 腕が抜けないため、デビルは身体を揺らすことしかできなかった。

 そしてデビルは座り込み、黒い煙と共に消滅した。


「所詮は下級デビルか。」


 そう言ってロイは建物の壁に寄りかかり、またタバコを吸った。

 口元の八つの穴から煙が溢れ出し、夜空に消える。


 ロイはしばらく月を見ながら、その場を動かなかった。






 次の日の朝。


 アリスが朝食の支度をしている。

 そして寝室からロイが出てきた。


「おはようアリス。」


 あくびをしながら、ロイはアリスに朝の挨拶をする。


「おはよう、お寝坊さん。」


 アリスはからかう言い方で朝の挨拶をした。

 ロイは外に出て新聞を取り出し、部屋の奥にあるソファに座って読みだした。


「朝食、もう少し待ってね。」


 アリスは料理をしながらそう言った。

 ロイは無言で頷いた。


 この光景は普通の人間同士そのものであった。

 しかし実際は人間と悪魔(デーモン)である。






「特に無しか。」


 新聞を読んでいたロイが、コーヒーを飲みながら言った。

 どうやら昨日の犠牲者はいなかったようだ。


「昨日は遅かったね。」

「距離が遠かったのと、久々の下級デビルだったからな。」


 昨日はロイの帰りが遅かったため、アリスは先に寝ていた。


「やっぱり下級は少し強い?」

「いや、最下級は数が多い。 奴らの方が厄介だ。」


 最下級のデビルは数で攻めてくる。

 しかし下級以上のデビルは基本単体で行動する。


 奴らにも、プライドや慢心があるのだ。

 最下級から下級に進化するデビルは 百体に一体 。

 だからこそ、奴らは調子に乗るのだ。





 朝食を終えたロイは出掛けた。

 街の路地裏の入口で寄りかかっていた。

 道を通行する人々を横目で見ながらコートの内ポケットにあるタバコの箱を出し、タバコを一本取りだした。

 そしてタバコを咥え、ライターで火を付ける。


 通行者たちは、ロイをチラチラ見ていた。

 街中でタバコを吸っているからではなく、彼がデーモンだと知っていたからだ。

 だが、見てた理由はそれだけではなかった。

 ロイの後ろの方から大声が聞こえた。



「この街は悪魔に呪われている! このままでは我々に待っているのは死だ! 奴らを絶対に許すな!!」


 街中で演説をしているオバさんが近場にいた。

 ロイは姿は見ずに、声だけを聞いていた。


 「悪魔」・「奴ら」とはデビルだけではなく、デーモンも含まれている。

 ロイはその事を理解していた。

 だから通行者はロイをチラチラ見ていたのであろう。


 ロイはタバコを口から手に渡し、上を向いた。

 口元の八つの穴から煙が溢れ出し、青空へ消える。


 ロイは「フンッ」と鼻で笑った。

 自分への非難など、ロイは全く気にしてはいない。

 ただ、「やはり人間は面白い」と思っていた。


 ロイは再びタバコを咥え、路地裏に入って行った。






 ロイは今日も孤児院にやってきた。

 彼にとって、孤児院に来るのは日課のようなものだった。


「よう、ヘレナ!」


 ロイは庭で花に水をあげていたヘレナに話しかけた。

 ヘレナは若干驚いて、ジョウロを落としてしまった。


「びっくりした・・・。」


 ヘレナはジョウロを拾い、ロイの方を向いて立ち上がった。

 少し怒っているようだった。


「悪い、驚かすつもりは無かったんだ。」


 ロイは両手を上げて説得した。

 ヘレナはため息を吐いて、少しロイに近づいた。


「どう最近?」


 素朴な質問だった。


「普通だ。 デビルも下級以下ばっかりだ。」


 ロイはズボンのポケットに手を突っ込んで話した。

 すると、ヘレナは安心した顔に変わった。


「良かった。 上級とかは現れてないみたいだね。」


 ヘレナの顔は安心していると同時に、なんだか哀しそうにも見える。

 ロイには理由が分かっていた。


「私みたいな人は出てないということだね。」


 そうヘレナが言った瞬間、ロイがヘレナを無言で抱き締めた。

 その勢いでヘレナのベールが吹っ飛び、中に仕舞っていた金髪の髪が出てきた。

 ヘレナは驚いていたが、黙って抱き返した。




 数十年前、ヘレナがまだ普通の少女だった頃の話。

 ヘレナと実の父親は上級のデビルに襲われていた。

 奇跡的にロイはデビルを発見することができたが、相手は上級であり、さらに今のロイより未熟だったため苦戦を強いられていた。


 長い戦いの末、デビルを討伐することはできた。

 だが、ヘレナの父親は戦いに巻き込まれて命を落とした。

 ヘレナは目の前で、父親の無残な死を見てしまったのだ。


 自身の未熟さ(ゆえ)にヘレナの父親を殺してしまったロイは、贖罪の意味も込めてヘレナを自身の子のように育てた。

 つまり、ヘレナはロイの元パートナーであり、義理の娘である。




「すまねえな、ヘレナ・・・。」


 ロイの声は、先程ふざけていた時の声とは違い、とても暗かった。

 ヘレナはロイを引き離したかと思えば、首に手を回して抱き締め、額を合わせた。


「大丈夫、私にはダッドがいるから。」


 ヘレナは優しい声でそう答えた。

 抱くのをやめ、飛ばされたベールを拾った。


「じゃ、じゃあまた明日な・・・。」


 そう言うとロイはさっさと帰って行った。

 ヘレナは、帰るロイを一切見ずにベールを抱き締めた。






 ロイは帰宅途中に、先程の演説の内容を思い出した。


(この街は悪魔に呪われている! このままでは我々に待っているのは死だ! 奴らを絶対に許すな!!)


「・・・間違ってねえかもな。」


 ロイは空を見上げながら、ズボンのポケットに手を入れて、帰路を歩いている。






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