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悪魔と悪魔 (Demon & Devil)  作者: サムライドラゴン
本編
3/5

悪魔(デーモン)『ロイ』


 「デーモン」と「デビル」。

 同じ悪魔だが性質が違う。


 「デビル」は、人を殺すことを生きがいとしている。

 それは栄養補給などではなく、ただ楽しんでいるだけの行動である。



 一方「デーモン」は、デビルを殺すことを生きがいにしている。

 デーモンは基本人間に友好的であり、そんな彼らを守るための使命に近い行動である。


 何故デーモンたちが人間に友好的なのかは不明だが、一説では「神様から使命を受けた」と考えた人や、「元は人間だった」と考えた人もいた。

 真相は未だに不明である。






「ふぅー、いい朝だなぁ~。」


 街の中に立っている家の一つに、ロイが住んでいる家がある。

 2階建てであり、1階に彼が住んでいる。

 今彼は外に出て新聞を取ってきたところだった。

 部屋の中でも鉄仮面とコートを着用している。


「ちゃんと手を洗った?」

「洗ったって・・・。」


 キッチンでは彼のパートナーである女性 "アリス" が、朝食を作っていた。

 赤紫色の髪を後ろで一つにまとめて垂らしており、胸もいい感じに大きい。

 今は料理中のためエプロンを着けている。


 彼女はロイとこの家で同居している。

 というか、基本一緒に行動しており、離れていることの方が少ない。



「相変わらず美味そうだな。」


 テーブルの上に出されている料理を見て、ロイは鉄仮面の穴から(よだれ)を垂らす。

 アリスが料理に夢中になっている隙を見て、ロイは鉄仮面の口元にあるバイザーを上げた。

 中では不気味な口が見え、その口の中から長い舌が飛び出してきた。

 そして卵料理を掴もうとした瞬間、アリスに舌を握られて止められた。


(つま)み食いしない!」

「は、はひ。」


 ロイは伸ばした舌を戻して、バイザーを下げた。

 そして素直に席に着いた。

 アリスは最後の料理をテーブルに置き、ロイの向かいにある席に座ろうとする。

 その途中、彼女のお尻をロイが触った。


「きゃあ!!?」


 瞬時にお尻を守り、ロイの方を振り向くアリス。

 顔は恥じらいと怒りで真っ赤になっていた。


「ちょっと、ロイ!!」

「いやぁ~、相変わらずイイ尻してんなぁー。」


 アリスは近くにあったフライパンでロイを殴った。

 鉄仮面が振動し、床に倒れた。


「そういう強気なところも好きだぜ。」


 倒れてもロイは余裕だった。

 アリスは大きく()め息をついて、席に座った。


 信じられないだろうが、これが彼らのいつもの朝だ。






「資産家の息子が遺体で発見されたか。」


 朝食の最中に、ロイはコーヒーの入ったカップを片手に新聞を読んでいた。

 バイザーは外して、テーブルの(すみ)に置いている。

 バイザーを上げると口を使えるが、視界が少し見えづらくなる。

 そのため、朝食などのリラックスをしているときはバイザーを外す。


「資産家って、あの顔のホクロが目立つ?」


 アリスがトーストを食べながら聞いた。


「ああ、そいつの息子だ。 夜中に隠れて女遊びをしていたそうだ。 あと数十年生きていれば遺産を貰ってもっと良い生活ができたのによ。」


 ロイがコーヒーを飲みながら言った。


「またデーモンのせいにしてくるのかな。」

「かもな。」


 ロイは明るく答えた。




 デーモンは人間をデビルから守ってくれるため、基本人間からも好かれている。

 だが同じ悪魔という理由で毛嫌いしている人間がいることも事実。

 またさっきの話題のように、人間がデビルに殺されたらデーモンに責任を押し付ける輩もいる。


 デビルの出現地はデーモンでもすぐにわかることはできず、場合によっては到着前に人間が殺されていることも多々ある。

 そのため、一部の人間はデーモンを無能呼ばわりしている。

 だが、夜間の外出は危険だと昔からわかっていることなので、本当は被害者の自業自得なのである。

 また、デーモンのデビル駆除率は97%のため、決して無能ではない。




「ロイは人間たちのために日々戦っているのに、酷いよ・・・。」


 アリスは両手でカップを持ち、ミルクを飲みながら(ふく)れていた。

 そんなアリスを見て、ロイは笑いながら語りかけた。


「別にいいって。 俺はそういうところも含めて人間が好きなんだ。」


 ロイは持っていた新聞をたたんで、朝食を本格的に食べ始めた。

 彼の食べ方はハッキリ言って褒められたものじゃなかったが、美味しそうに食べているためアリスは注意せずに、むしろ黙って微笑んでいた。

 そんな彼を見ながら、アリスも朝食を食べる。






 朝食を食べ終わるとバイザーを着けて、玄関のドアを開ける。


「少し出かけてくる。」


 アリスは「わかった。」と答えて、彼を見送る。

 朝や昼間のロイは、基本散歩をしている。

 朝や昼の街は、夜の街とはまた違うからだ。

 彼が主に活動する夜の街には基本人が一人もいないため、朝や昼の街で人々が歩いている光景はロイの好きなものの一つだった。



 街の大通りはとても賑やかで、車や馬車などが車道を走っている。

 通行者も子供から老人まで沢山歩いている。

 その中でロイも、ポケットに手を突っ込みながら堂々と歩いている。

 もちろん姿が浮いて目立っており、若干ロイの周りに大きい隙間が生まれている。

 ただ、ロイと親しい人は近づいて、挨拶や小話をしてくれてロイもそれに答える。


 たまに子供が近づこうとして親に止められる光景を見たが、よく見る光景なのでロイは気にしない。

 デーモンを嫌ってはいないが、関わると危険な目に遭うかもしれないため、大半の親は子供を近づけないのだ。

 だから仕方ないことだ。






 街の上の方には孤児院がある。

 そこには容姿端麗の修道女が子供たちのお世話をしていた。

 庭で元気に遊ぶ子供たちを、端の方で修道女は笑顔で見守っていた。

 すると二人の男の子が修道女に駆け寄ってきた。


「シスター、悪魔に良い奴なんかいるのか?」

「え?」

「こいつが悪魔にも良い奴がいるって言うんだよ。」


 茶髪の男の子が金髪の男の子を指差して言った。

 すると金髪の子も発言した。


「だって、街の人が言ってたもん。 良い悪魔もいるって・・・。」

「悪い魔物と書いて「悪魔」なんだから、良い奴なんかいるかよ!!」


 茶髪の子は手をぶんぶん振り回して言った。

 金髪の子は今にも泣きだしそうだった。

 すると、修道女は金髪の子を抱き寄せながら話し出した。


「確かに君の言う通り、悪い魔物と書いて「悪魔」と呼ぶのは当たってるわ。」


 茶髪の子は勝ち誇った顔をしていた。

 しかし修道女は話を続けた。


「でも彼の言う通り、良い悪魔もいるわ。 その悪魔は頭が悪い魔物だから「悪魔」と呼ばれているのよ。」

「・・・頭の悪い魔物?」


 茶髪の子は首を(かし)げた。


「そう! 悪い魔物ではなく、頭の悪い魔物。」

「なんだそりゃ!」


 茶髪の子はゲラゲラと笑った。

 金髪の子も安心したようだった。

 茶髪の子は金髪の子に謝って、仲直りをして再び庭で遊び始めた。



「誰が「頭の悪い魔物」だって?」

「おっと・・・。」


 修道女が横を見ると、孤児院の壁に腕を組んで寄りかかっているロイがいた。


「あなたの事とは言ってないわよ?」

(とぼ)けやがって。」


 ロイはコートの内ポケットからタバコの箱を取り出した。


「タバコは吸わないでよね。」

「ヘイヘイ。」


 修道女は逸早く気付き、注意をした。

 ロイは仕方なくコートの内ポケットに戻した。

 そしてロイは庭の子供たちを眺めた。


「また子供が増えたな。」

「ええ、デビルに両親を殺されたらしいわ。」


 孤児院の子供たちが多い理由は、親をデビルに殺された子供が多いからだ。

 ただ夜間に出歩いたうっかり屋の親。

 子供を放っておいて夜遊びをしたダメ親。

 子供のために夜間に出掛けた優しい親。

 その親たちがデビルに殺された。


「すまねえな。 俺のせいで苦労をかけちまって・・・。」

「謝るのならあの子たちに言って。 それに、あなたは悪くないわ。」


 修道女は立ち上がり、柵の向こうの景色を見ながら言葉を発した。


「この呪われた街に住んでいるからには、この運命を受け入れるしかないわ。」


 修道女のベールが風に(なび)いている。

 ロイは空を見ながら、彼女に質問した。


「街を出ては行かねえのか?」


 その言葉に、修道女は振り返る。

 驚き顔が笑い顔になった。


「私、この街が好きだから。」

「・・・そうか。」


 ロイはずっと空を見ている。

 修道女はロイに近づき、正面に立って、両手で上向きだった顔を自分の方に向かせた。

 そして笑顔で言った。


「それに、「頭の悪い魔物」も好きだから。」


 彼女のその言葉を聞いて、ロイは「フンッ」と鼻で笑った。

 そしてロイは彼女の頭を ポンッ と撫でて、帰路を歩き出した。


「またな、ヘレナ。」


 ロイは片手を上げながら、帰路を歩く。

 修道女 "ヘレナ" はそれを見送りながら、ボソッと(つぶや)いた。


「またね、ダッド。」






 一方、アリスは買い出しに行っていた。

 彼女がロイと暮らしていることは(おろ)か、ロイのパートナーであることを知っている人はとても少ない。

 そのため、彼女は人々からは変な目では見られたりせず、普通の生活を送ることができている。


「今日の昼食はこれでいいか。」


 彼女は今日も楽しそうに買い物をしていた。






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