デーモンとデビル
メインで書いてはいないので、更新は遅めです。
時刻は午前3時を過ぎている。
街中は暗く、人も歩いている様子はない。
数分後、帰宅途中の紳士が歩いてきた。
そして、まだ明るい通りからとても暗い路地裏へ入って行った。
数十歩進んだところで紳士は不安になってきた。
何かが出るのではないか、という気持ちになり、一歩一歩進むたびに不安が募る。
しかしこの路地裏を通らなければ、かなりの遠回りをしてしまう。
紳士の周りは漆黒の空間に包まれ、もはや目を閉じて歩いているのと同じ状況だった。
紳士は直線に進む。
幸い路地裏の直線ルートは、ただまっすぐ進めば簡単に抜けれるため、周りが見えなくても平気であった。
目には見えないが、風で空き缶が転がる音が聞こえる。
唯一注意すべきは、空き缶を踏んで転ばないようにすることだろう。
いや、唯一ではないか・・・。
「ん・・・?」
この街にはもう一つ注意すべきことがある。
というより、最優先で注意すべきことである。
昔からこの街には真夜中にだけ現れる怪物がいる。
当初、街の人々は迷信だと笑い飛ばしていたが、ある日その怪物を見ようとした男性が、翌日に無残な死体で発見されたのである。
人々はただの殺人事件だと思っているが、このことがきっかけで、真夜中に街を歩く人がいなくなった。
しかし彼のように大丈夫だと思い、出歩く人も多々いるのである。
だが大体、そういう人々は怪物を目撃するのである。
紳士は何かを感じ、駆け足になり一直線に出口に向かった。
明らかに後ろから何かが迫っていた。
無事に紳士は路地裏を抜け出せたが、突然の曲がり角でバランスを崩し、転倒してしまった。
すぐに立ち上がろうとしたが、漆黒の空間から現れた目の前の怪物の姿に恐怖し、腰を抜かしてしまった。
紳士が恐れていたことが現実となった。
目の前には、白い人の顔をした大きな黒いクモのような生物が一歩一歩、ゆっくりと紳士に近づいてくる。
「助けて誰かぁー!!!」
紳士が空に向かって大きく叫んだ。
しかし真夜中に外を出歩く人はこの街では一切いない。
それ以前に、人間がどうにかできる相手ではないだろう。
怪物は笑みを浮かべながら一気に距離を縮め、紳士に飛びかかった。
「ああっ!!」
紳士は完全に諦めていた。
バァン!!!
大きな銃声がなった。
紳士は閉じていた目を開いた。
目の前には顔を撃ち抜かれて、もがき苦しんでいる怪物がいた。
「ちぇっ、なぁ〜んだ。 最下級の "デビル" か。」
紳士は声がした斜め上の方を向いた。
そこにはフェンスに寄りかかっている、一人の男の後ろ姿があった。
よく見ると脇の下から拳銃の銃口を覗かせていた。
男はフェンスから離れると、フェンスを踏み台にして怪物の前に飛び降りてきた。
怪物に襲われた人は今までにも沢山いた。
しかしほとんどの人々が何故か生きていた。
そして生還者たちの証言の中で必ず言うワードがあった。
「鉄仮面・・・。」
男の頭には、鉄仮面のような被り物を被っていた。
そしてコートを羽織り、手には拳銃を持っていた。
鉄仮面の男は怪物に近づき、怪物の顔面を踏み、銃を二発ぶっ放した。
すると怪物は動かなくなり、黒い煙と共に消滅した。
「おい男、死にたくなければ隠れてろ!」
鉄仮面の男は紳士に向かってそう言葉を発し、動けるようになった紳士もそれに従い、近くの物陰に身を隠した。
すると鉄仮面の男は、コートの中から取り出したライターでタバコに火を付け、一服し始めた。
口元の八つの穴から煙が溢れ出し、空に消える。
そしてタバコを咥えると、拳銃を左手から右手に渡し、歩き始めた。
突然止まったかと思ったら、その場で思い切り飛び上がる。
それと同時に漆黒の空間となっている路地裏の中から、先程の怪物が男の真下に飛び出してきた。
男はすかさず怪物を撃ち抜き、怪物を両足で踏み潰す。
そして怪物の頭を二度撃ち抜き、怪物は消滅する。
今度は別の方向から二体の怪物が襲いかかってきた。
一体は男が正面からの銃撃で仕留める。
もう一体は飛びかかってきたところを躱し、がら空きになった背中を撃ち、転倒したところを仕留めた。
その後も三体、四体と現れた怪物たちだったが、同じように男に仕留められていった。
十五体目ぐらいの怪物を撃ち殺すと、咥えていたタバコを手に持つ。
「終わったぞアリス。」
そしてやや大きめの声でそう発した。
すると物陰から大学生ぐらいの女性が出てきた。
「ロイ、大丈夫?」
「最下級相手に俺が傷を負うわけねえだろ。」
どうやら仲間のようである。
そして男の名前は "ロイ" というらしい。
「おい、お前も出てきていいぞ。」
ロイの言う通りに従い、紳士は物陰から出てきた。
「ありがとうございました。」
まず紳士は帽子を外し、感謝の礼をした。
「夜間に歩くのはやめておきな。」
「はい・・・。 今後は気を付けます。」
今度は紳士がロイに謝罪の礼をした。
するとロイは片手をあげ、下ろしたと同時に隣にいる女性を連れて去ろうとする。
紳士は追うように後ろから話しかけた。
「あの、もしかしてあなた・・・」
紳士はロイに心当たりがあった。
「・・・あなた、 "デーモン" なのですか?」
「ん? ああ、そうだが?」
ロイは足を止め、振り返りながら答えた。
その返答を聞いて、紳士は膝をついて礼をした。
「お会いできて光栄です。」
「お、おう・・・。」
ロイはやや照れながら言った。
そしてロイと女性は暗い路地裏へと消えて行った。




