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「そういやここって何も無いよな。
もしかしてこれを素手でってことか……?」
「そこまで鬼では無いさ。ほら、これを使え」
そう言って彼女は抜き身の刀を投げる。
その刀は見覚えのあるものだった。
それはこの学園に唯一持ってきたものである。
「ど、どうしてこれを?」
「どうしても何もここはお前の中だ。
お前が認識しているものだったら何でも出せるぞ」
ロゼはほらと言うと同じ刀をポンポンと手元に出現させる。
原理は全くわからないが、どうやら言っていることは本当のようだ。
正直言ってこれだけたくさん出されるとあまり良い気がしない。
「ま、まぁ良いや……とりあえずこれを壊せばいいんだよな」
「そうだ。あと、こいつもやるから飲め」
そう言って彼女は小さなコップを差し出す。
そこには赤い液体が入っている。
冬夜はその液体は見たことが無いわけではない。
だが、それは一般的には飲み物ではないし、当たってほしくは無い代物だ。
「おい、ロゼ。それは一体――――」
「私の血だ。毎朝飲めるくらい飲みやすいと評判だぞ」
「そんな訳あるか!どこの世界で血が日常的に飲まれてるんだよ!」
赤い液体は考えつく限り最悪の結果だった。
冬夜は今回ほど予想が当たったことを後悔したことはない。
自分のものですら飲もうと思わないが、他人のものなんてなおさらだ。
「さぁ。何を躊躇っている。お前は私の願いを叶えてくれるんだろう?」
「叶えるとは言ったが血を飲むとは言ってないぞ!」
「確かにな。では、叶えて貰おうか。
ただし、お前ができなかった時は飲んでもらうからな」
「……わかった。できなかった時は約束するよ」
彼女がなぜそこまでして自分の血を飲ませたいのかわからないが、
願いさえ叶えれば回避できるはずだ。
所詮はただの水晶だ。素手では厳しいが、武器さえあれば問題はない。
サクッと壊して願いを叶えて貰おう。
そう考えていた冬夜の思惑は儚く砕け散る事となる。




