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「なぁ、陽菜。模擬戦ってなんだ?」
「休み中にやったあれよ。覚えてない?」
「あー……あれか……」
冬夜にとっては初めての戦闘だったので、嫌という程覚えている。
もちろん、悪いイメージで。
「なに?あっさり負けちゃったこと気にしてるの?
私に傷付けただけで超大金星よ」
「え!冬夜、陽菜ちゃんに傷付けたってホントだぜ?」
「え?多分?」
予想外に雄二がその話に食いついてきた。
冬夜はろくにその瞬間のことを覚えていないので、曖昧な返答になってしまう。
「あの、立花陽菜に傷付けたって言ったら学年中の騒ぎになるぜ!
なんたってべらぼうに強いから悪魔とまで呼ばれてるくらいだぜ!」
「うるさいわね筋肉ダルマ。
別に好きでそう呼ばれるようになったわけじゃないわよ」
当然のことかもしれないが、本人は悪魔と呼ばれるのを喜んではいないようだ。
陽菜は苦虫を噛み潰したような顔をしている。
冬夜としては二人が知り合いだったことが少し驚きだ。
「そうです!陽菜ちゃんは全然悪魔なんかじゃないです!
どっちかって言うと天使の部類です」
いつの間にか近くに来ていた美琴がそう言う。
余程主張したいのかぴょこぴょこ飛び跳ねながら言っているが、可愛らしさ以外の効果はないだろう。
「えぇ……陽菜が天使?
それは流石に無理があるんじゃないか」
「そうだぜ!どっからどう見ても悪――――」
雄二が言い終わるより先に陽菜の強烈な蹴りが突き刺さる。
蹴られた側はと言うと吹き飛ばされ、教室の壁の一部となっている。
壁以外にダメージを与えておらず、そのコース取りは見事なものだ。
冬夜は陽菜身体でそれほどの威力の蹴りを放てるとは到底思えないが、おそらく何かしらの魔術を使ったのだろうという事で納得する。




