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「くっ……!」
全力で攻撃を仕掛けてしまった以上、冬夜に風の刃を回避する術は無かった。
四方から身体を裂かれる。少しでも回避をしようと身体を捻るも、全て無駄に終わる。
「ま、手加減はしてあげたからちょっとゆっくりしてなさい。
残念ね。壁を破るのを条件にすればよかったのに。……って、あれ?」
陽菜は自分の足から血が出ていることに気づく。
その傷は気にする程のものでは無い。紙で指を切った時の様な軽い傷だ。
もう血も出ていなければ、痛みもない。
ただ、その傷を付けたものは無視できない。
足元には授業で見る刀が転がっている。
「ふふ。面白いことをするわね。
賭けは私の負けで良いわ。お昼はちょっと痛いけど、楽しませて貰ったお礼よ。」
「はは上手く行くとは……思わなかったよ。昼飯、ありがと……な……」
最後の瞬間、回避を諦めた冬夜は一矢報いるため刀を投げていたのだ。
とてもじゃないが、まともな態勢で投げることは出来なかった。
そのため、陽菜に当たったのは相当なまぐれだろう。
「じゃあ、冬夜はゆっくりしてなさい。保健室にでも運んで上げるわ」
「す……すまないな……」
冬夜の傷は陽菜ほど浅くは無いが致命傷ではない。
服は切り刻まれ身体中傷だらけではあるが。
身体の傷よりは最後に無茶した際の体力の消費の方が大きい。
今も彼の意識は途切れる寸前だ。




