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「まぁ捉え方によってはそうなるかもしれないわね」
「もう、いいよ……」
陽菜は悪びれた様子もなく笑顔でそう言うため、これ以上ツッコムのを諦める。
基本的に彼女が悪くないと思っているときは、なにを言ったところで無駄なのをよくわかっているからだ。
「で、冬夜はなにやってるの?」
「ん?なにって素振りだよ。明日からのことを考えて身体を動かそうと思ってさ」
「ふーん。そう言えば……」
そう言って陽菜は首を捻って昔の事を思い出す。
思い出すことが出来たのか、あ!と大きな声を急に上げる。
彼女を無視して素振りをしていた冬夜はその声に驚く。
「いきなり大きな声を上げるなよ。ビックリするし近所迷惑だろ」
「あ、ごめんなさい……ってそれはそれとして、冬夜、昔からそれやってたわよね?
私が遊んで上げようと思って行ったら、時々やってたものね」
「なんだかすごく気になる言い方だけど、まぁそうだよ」
冬夜は小学生の頃、家の近くにある剣術の道場に通っていたことがあった。
通っていると言っても、習い事としていたわけでは無く、勝手に遊びに行っていただけなのだ。
その際、そこの道場主に貰ったものが今持っている木刀になる。
「なるほどね。剣道じゃ無いのはなにか意味があったの?」
「うーん。よくわからないけど、そこの先生が言ってたんだよね。僕のは剣道じゃなくて剣術だって」
通っていた冬夜自身それが剣道なのか剣術なのかよくわからなかった。
しかし、そこの主が剣術と言い張るのであればそうなのだろう。
確かに、冬夜が教わったことは余り他では見かけない動きであるため独自のものであることは間違いない。
「会ったことない人のこと勝手に言うのはちょっと申し訳ないんだけど、風変わりな人みたいね」
「あー。それは間違いないな。いきなり遊びに行っただけの俺に色々教えてくれた上に居なくなる際に選別貰ったしな」
「居なくなるってなにか合ったの?」
陽菜がまずいことを聞いたかなと言った顔をしているため、冬夜は慌ててフォローに入る。
「深刻な事はなにも無かったよ。ただ、小学校卒業するくらいかな。旅に出るとか行ってどっか行っちゃたんだよ」
「大丈夫なの?その人?」
先程まで深刻な顔をしていた陽菜は打って変わって、今は怪訝な顔をしている。
その様子を見て冬夜は苦笑いしながら多分と言うことしかできなかった。




