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「はぁ……あいつはなにを考えてんだ……」
なんだかんだ言いつつもこうすぐに諦められるのは、陽菜が昔からこうだったからだろう。
突拍子もないことを言い出してはいつも冬夜を巻き込むのだ。
その度被害を受けるのは冬夜であり、なにをしても陽菜はこれと言った被害を受けないのだ。
それは彼女が引っ越してしまう中学に入るまで続いた。
そんな毎日を過ごしていれば嫌でもこのような事態に慣れてしまう。
「この無茶苦茶も久しぶりだよな……昔はこの程度じゃなかったから、だいぶ丸くなったのか?」
ひとまず寝転がってはいたがすることがない。
陽菜にシャワーを浴びられているため、風呂に入ることはできず食事も終えている。
「仕方ない、明日からのこともあるしちょっとは身体を動かしとくか」
冬夜はベッドから飛び起きるとクローゼットから木刀を取り出す。
木刀は冬夜が小学生の頃からあるものだ。
小中学くらいまでは毎日素振りをしていたが、最近はろくに触れていなかったため少し汚れてしまっている。
軽く汚れを払うとそのまま庭に出て、素振りを始める。
「冬夜、剣道なんてやってたの?」
「あ、陽菜か。やってないよ……っておい!その格好は何だよ!?」
シャワーを浴び終えた陽菜がリビングから声をかけてきた。
陽菜も先程までの制服から着替えてラフな格好をしている。
別にそれくらいなら問題は無いだろう。
今問題なのは陽菜の着ている服が冬夜のよく知る格好だということだ。
「なにって服借りただけじゃない?明日の分は持ってきたけどパジャマ忘れちゃったのよ」
「だけじゃない?じゃねえよ!なんでさらっとサイズも合わない人の服着てんだよ!」
陽菜は冬夜のスウェットを勝手に拝借して着ている。
しかし、冬夜と陽菜は互いの服を着れるほど似た体格をしていない。
結果的に陽菜は全体的にダボダボの状態になっている。
「なによ?結果的に着れてるんだからいいじゃない。ちょっとウェストと丈が足りないけど」
「世間ではそれを着れてるとは言わないんだよ!と言うか忘れたんじゃなくて持ってくる気が無かったろ……」
今思うと陽菜のカバンが膨らんでいた気がする。
もともと泊まるつもりで最小限の荷物だけ入れてきたのだろう。




