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「私はローズ・アルジャンテ。適当に呼んでくれて構わない」
「えーっと……じゃあローズさん?」
冬夜からしたら無難な呼び方だと思ったのだが、あまり気に入られてないのか溜息をつかれてしまう。
「呼び方に困るならロゼで良い」
「そう言って貰えると助かる。ロゼはここで何をしているんだ?」
ここには人が滅多に来ることが無いそうだ。
建物から余り生活感を感じられないため、何処かに行っていることが多いのかもしれない。
しかし、この場所は何処かに行くに不便すぎる。
冬夜自身他に行く余地がなかったからここに来たのだ。
「そうだな……庭の管理を主にしているな」
ロゼは少し悩んだ末に強いて言うならという感じでそう告げる。
確かに庭はとても綺麗に整っており、自然にできた様子ではなかった。
「なるほどな。じゃあ、最後に1つ。ここからはどう帰ればいい?」
冬夜にとってはこれが一番重要な問題だ。
ここがどこか、相手が誰かということも気になることではあったが、帰宅経路に比べたら些細な問題でしかない。
それに、部屋には陽菜を待たせている。ここから帰るのにどれくらいかかるかわからないが、余り待たせるのは気が引ける。
「なんだ?もう帰るのか?」
「来たばっかで、申し訳ないけど俺も人を待たせててさ。早めに戻らないと何されるかわかったものじゃないし……」
陽菜が怒っているところを想像すると一秒でも早く帰りたくなる。
遅くなればなるほど絶対に良いことは起きないと直感で感じた。
ロゼは飲んでいたカップをテーブルに置くと席を立ち、着いてこいと言い歩いて行く。
「ここの扉を抜ければ帰れるぞ」
ロゼが連れてきてくれた扉は、この部屋に来た扉から右手側にある。
扉自体は先程入ってきたときと同じような扉で特に変わったところは無さそうだ。
「ありがとうロゼ。質問攻めにしただけで特に何も出来なくてごめん……」
「気にするな。私も久しぶりに話をできただけで十分だ。それにーーーー」
ロゼは何かを言ったようだが、声が小さく冬夜には聞き取れなかった。
「え?なんか言ったか?」
「早く帰れと言ったんだ。人を待たせているんだろう?」
そう言うとロゼは扉を開けてくれる。
その後、冬夜に近づいたかと思うと胸ぐらを掴む。
「あ、あの?これは?」
「じゃあな、皐月冬夜。また会おう」
見た目からは考えられない力で引っ張られる。
冬夜の足は床を離れ宙に浮く。
その時全てを悟った。自分が投げられているのだと。
扉を無理やり抜けさせられると、通った扉がある以外、辺り一面真っ白な空間だった。
「お、おい!こんな無理矢理じゃなくてもーーーー」
扉の方に向かって叫ぶものの、その声は届く様子は無かった。
辺りが更に白く輝いたかと思うと、冬夜は意識が遠くなり再び気を失う。
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