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「そこに座れ。茶でも入れてやろう」
「は、はぁ。どうも……」
通された部屋はダイニングキッチンのようだ。
室内にものはほとんど無く、あまり生活感を感じられない。
しかし、使われてないわけではないのだろう。ここもホコリなどがなく、掃除が行き届いているようだ。
「まぁ飲め」
「あ、ありがとうございます」
女性は冬夜に紅茶を渡すと自分も紅茶を注ぎ飲み始める。
冬夜は困惑しつつも女性が出してくれた紅茶を飲む。
「あ、あのー。なんで、ここに連れられて来てるんでしょうか?」
なんで、こんなことになっているか彼には全くわかっていない。
それも当然のことだ。勝手に入ってきた人に対し、追い出すわけでもなくまさかの歓迎ムードだ。
普通であればこんなことにはならないだろう。
「さっきも言っただろう?ここには滅多に人が来ないんだ。久しぶりに来た人を歓迎して何が悪い」
女性はそう言っているものの、紅茶を出してからは無言で紅茶を飲んでいる。
話しかけづらい雰囲気を出しているため、冬夜も無言で紅茶を飲むことしか出来ない。
「さて、いつまでも喋らないのはつまらないな。聞きたいことがあるんじゃないのか?」
「ま、まぁそりゃもちろん……」
しばらく無言で過ごした後、急にそんなことを言われる。
確かに聞きたいことはたくさんあるのだが、聞きたいことがありすぎる故に上手くまとまらない。
「じゃあ、一体ここはどこなんだ?俺は家で寝てたはずだけど」
「ここか?ここは、そうだな。遠いようで近い場所だな」
さも当然の様に女性はそう答える。
正直に言って得たい答えの1割の返答にもなっていない。
これでは謎が深まるばかりだ。
「えーっと。じゃあ次。お前は誰だ?」
「人に尋ねるにしては随分な聞き方だな」
女性は鼻で笑ったかと思うとそう答えた。
しかし、機嫌を悪くした様子はなく、笑顔で受け応えてくれる。




