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「ごめんくださーい!」
その建物には呼び鈴のようなものは無いので、仕方なくドアをドンドン叩きながら叫ぶ。
しかし、その叫びは虚しく何の反応もない。
「誰も居ないのかよ……どうするか」
そう言いながら、とりあえずドアノブを回すとどうやら鍵はかかっていないようだ。
ダメだと思いつつも仕方なくドアを開け中を覗く。
「おじゃましまーす……誰かいませんか?」
中は見た目通りの作りになっている。
正面には二階へ続く階段があり、右手と左手には扉がある。
玄関からは二階に扉が3つ見える。
室内は綺麗に掃除が行き届いており、どうやら無人の建物では無いようだ。
「誰だ?人の家に勝手に入ってくる礼儀知らずは」
声のした方を見ると、2階から降りてくる1人の女声と目があった。
彼女の見た目はとても特徴的だ。
腰まである長い銀髪にルビーの様に真っ赤な瞳を持っている。
それに彼女の整った容姿が加わり、冬夜はその女性に目を奪われる。
「ん?礼儀知らずなだけではなく、言葉も知らないのか?」
「す、すいません。ノックをしたんですけど返事がなかったので……」
気がつくと女性は冬夜の目の前に来ていた。
近づいて来たことで気づいたことだが、冬夜より少し背が高い。
そのまま顔を上げていると目が合ってしあうため、頭を下げ謝罪する。
「まぁ、良い。ここに人が来るのは久しぶりだからな」
「久しぶり、ですか?」
「あぁ。外を見ただろう?ここは周囲から隔絶されているからな。滅多なことでは人は来ない」
彼女はそう言うと着いてこい、と言うと右手の扉へと向かっていく。
ここで、1人にされては確実に露頭に迷うため大人しくその背を追う。
「今日はなんだ?女の人に着いていかないと露頭に迷う日なのか?」
誰に言うわけでも無く、そう呟きながら歩いて行く。




