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「いやいや、いきなりは無理だろ。それに家具とかだって何もないだろ?」
『あ、部屋には最低限のものは揃えてありますよ。なので、必要な私物を持ってきてもらえればそれで大丈夫ですよ』
最低限のものは学生寮の初期備品ですから、と神崎は付け加える。
そう言われてしまってもいきなりは困る。
どうしていいかわからなくり、固まっている冬夜の携帯をヒョイと陽菜が取り上げる。
「あ、もしもし?バカ教師?いきなりそんなこと言われてはい分かりましたなんて言う人が居るわけ無いでしょう?」
『やっぱりそこに居ましたね。そのために立花さんがいるんですよ。皐月くんの引っ越しを手伝ってあげてください。
あ、そうそう。明日は午後からで良いので、また今日と同じ部屋に来てください。』
神崎は一方的に話すとそれではと言って電話を切ってしまう。
その場に残っているのは固まった冬夜と陽菜だけだ。
おそらく一瞬の間だっただろう。しかし、2人にはとても長い時間が過ぎたように感じた。
この硬直状態を破ったのは陽菜の方からだ。
「あー、冬夜?何言われてるかわからないと思うけど、引っ越ししましょう?私も手伝うから」
「どうせノーって言ったところで引っ越さなきゃならないんだろ?わかったよ……」
幸運か不運かわからないが、ここ数日の突拍子も無いこと続きのせいでいきなり何か言われることに慣れてしまった冬夜が居た。
これ以上ここに居てもやることはなくならないので、2人は諦めて冬夜の家へと向かう。
「そうだ冬夜。ここから冬夜の家までとなるとつく頃には夕飯時よね?」
「あー、確かにそのくらいの時間になるかもな」
「そうよね。じゃあ引っ越し祝いにご飯でも作ってあげるから食材買っていきましょう」
陽菜はどこか機嫌を良さそうにしながら、歩いて行く。
冬夜はわかったよ、と諦めて半分で着いていくことになる。




