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「仕方ないか……嫌がってたところでどうせ戻らなきゃいけないんだ。陽菜ありがとうな。」
「私は何もしてないわよ。それじゃあ戻りましょう」
腹をくくり神崎のところに戻ろうとしたところで、冬夜の携帯が鳴る。
電話の相手は、今から行こうとしたところにいるはずの男からだった。
『あ、皐月くんですか?多分そこに立花さんも居ますよね?』
「戻るのが大変遅くなってしまい、本当に申し訳ありませんでした!」
相手が目の前に居ないにもかかわらず、土下座しながら電話をしている。
頭を下げる人はたまにいるかもしれないが、ここまでする人は流石に居ないだろう。
「冬夜……貴方、暫く合わない間にだいぶ変わった趣味を持つようになっていたのね……」
陽菜は半ばあきれながら、とりあえず冬夜を立たせる。
人が居なくなっているとは言え、喫茶店で土下座している人が自分の前にいるのは気分が悪い。
自分は悪くないのだが、なぜか悪いことをした気分になってくる。
『別に謝らなくて結構ですよ。謝らければ行けないのは私の方ですから。ちょっと急用が入ってしまいこれ以上練習に付き合うことが出来ないので、今日のところは解散にしましょう』
「そういうことなら仕方ないな。わかったよ」
口ではそういうものの本心はホッとしていた。
とりあえず今日のところは嫌味を言われるようなことが無くなったのだから。
『そうそう、皐月くん。学生寮の手配は完了してるので、もうこちらに越してきてもかまわないですよ』
「ありがとう。って……は?」
冬夜には唐突過ぎて何を言っているかわからなかった。
引っ越しの話など全く聞いてなかったのだから仕方ない。
しかし、毎日通学するとなると家から通うのは厳しいのは、事実だ。
今日ここまで来るまでの道のりがそう教えてくれている。




