幕間 サッカー時々モフり 後篇
ガルディアンズがホイッスルと同時にボールを蹴りだすと、観客から一斉に歓声が上がる。ガルディアンズは徹底した攻撃的スタイルで、前陣が5名に、中陣3名、後陣2名、守人が1名という構成。言うまでもないが、前陣がFW、中陣がMF、後陣がDF、守人がGKである。
前陣は狼人族と豹人族のみで構成され、体力と瞬発力を重視。中陣は豹人族と熊人族、兎人族でフィジカルと瞬発力をバランス良く、後陣は熊人族のみでフィジカル重視、守人は狐人族で、これは尻尾で防ぐのは問題ない、というルールに基づき、獣人の中でも特に豊かな尾を持つ狐人族を用いたものだと思われる。
対するハンマーファイターズは、前陣は4名で虎人族と兎人族が半々、中陣は3名で豹人族のみ、後陣は3名でドワーフのみ、守人は虎人族である。以前は前陣が全て豹人族で、スピードアタック型とも言える構成だったのだが、ガルディアンズと戦うにあたり、守備重視の構成に切り替えてきたのだろう。
「いっけぇぇーーーー!!」
「ジル様ぁ!!頑張ってー!!」
「ヨハン様にパスだぁ!!」
ガルディアンズの前陣に、ヨハンとジルが入っているのは言うまでもないだろう。ジルは、最初こそ「職務の方が大切なので」などとサッカーに関してドライな対応だったのだが、ヨハンの熱心な説得と(彼は元々警衛隊に所属する前からサッカーに熱中しており、熱心な布教活動家でもあった)、ゲオルグもよく観戦、あるいは激励に来るということから、ガルディアンズに加わった。
「ほぅ……ハンマーファイターズは守備型というよりはカウンター型か」
ゲオルグは、観戦しながら両チームの攻防を興味深く見ていた。
ガルディアンズが前陣を中心とした火力特化型のチームなのに対し、ハンマーファイターズは何と言うか、全員が活きている戦い方をする。前陣は敵の攻撃に合わせ中陣と連携した防衛を行い、体格的、体力的に狼人族に勝るとも劣らぬ虎人族がプレッシャーを与え、瞬発力の高い豹人族と兎人族が細やかに動き牽制とボールの奪取を狙い、ゴール近くにはドワーフ達後陣とGKの虎人族が不動の城の如く守りを固めている。
これは、恐らく攻めに来た敵を包み込むように展開、プレッシャーを与え、攻めあぐねているうちにボールを奪い、フィジカルの強い狼人族で敵を抑え、スピードに勝る豹人族と兎人族で一気呵成に点を取りにいく、という具合だろう。
サッカーに詳しくはないが、堅実な作戦だと思えた。そしてそれを崩そうと奮闘しているのは、やはりヨハンとジルだ。
ヨハンは狼人族の中でも特に体格に恵まれ、更に言えば日頃から訓練している為にフィジカルの強さは言うまでもない。スピードで言えば豹人族や兎人族には劣るが、それを補って余りあるパワーで押し切ろうとするタイプだ。小技の類は不得意で、それ故に技術的に自分に勝る相手には割とあっさりボールを奪われることもある。
ジルに関してはスピードと器用さが際立つ存在で、力の弱さと体力の低さという弱点をスピードと技で補うスタイルは優雅にさえ見える。最近では「フィールドの舞人」などと呼ばれ、その姿絵は中々高値で取引されているらしい。それを知ったジルは販売の停止を訴えようとしたが、ゲオルグの「別に問題はないだろう」という一声であえなく撃沈、今ではサッカー界のアイドル的存在になりつつあった。
「ジルさんがんばれー!!」
道を切り開いたヨハンからのパスを受けたジルを見て、隣でフェリスが声を上げる。フェリスもまた、日頃から顔をよく合わせるヨハンやジルのファンの一人でもあった。
その声援のお蔭、ではないだろうが、ジルは敵の前陣、中陣を恐ろしい速さで抜けていく。敵にも多数豹人族はいるが、そこは普段から鍛えている者との違いであろう、速さで敵う者もいなかった。
一見すると独壇場に見えるが、しかしその先にはドワーフにより構成された後陣と、動体視力に優れた虎人族の守人、そして後ろからも敵が迫ってきている。これが弱点と言えば弱点なのだが、誰よりも速いが故に、味方でも容易に追いつけず、敵のただ中に孤立してしまいがちなのである。
「あぁっ!!とられた!!」
とまぁこんな具合に、後陣に阻まれ、背後を抑えられ、二進も三進もいかなくかりボールを奪われてしまう訳だ。
「……チームプレイというものを学ぶ必要があるな」
警衛隊は常日頃の訓練や戦闘に於いては優れた連携を見せるのだが、こうして個人の技量や体格、体力の個性が大きく影響するスポーツに於いてはその自慢の連携が活きていない。優れた者をより多く活躍させ勝ちを取りにいくというのは確かに必要なことかもしれないが、それだけでは勝てないのがこういった団体戦だ。
こうして、見事なカウンターを決めたハンマーファイターズがこの試合初得点を挙げるのだった。
「閣下、お見苦しいところをお見せして、誠に申し訳なく……」
「構わんさ。勝負というのは勝ち負けが分からないからこそ面白い。戦なれば勝ち以外は許されないが、これは戦ではない。互いに切磋琢磨し、技に磨きをかけ、自分達だけでなく見ている者までも楽しくさせる、それが醍醐味というものだろう」
「はっ」
「一層の精進を重ねます」
あれから、いきなり先制点をとられたガルディアンズは、後半でどうにか点を取り返し、そこからは互いに攻めきれずに同点引き分けとなった。これまで常勝を誇ってきたガルディアンズが、初めて勝利をその手から零した瞬間であった。
「これから、他のチームも力を付けてくるだろう。そうなれば、お前らの一強時代も終わるかもしれんな」
「そうはさせませぬ」
「我らこそガルディナの剣、ガルディナの盾、例えサッカーであろうとも、他の誰にも負ける訳にはいきません」
「その意気やよし、期待している」
「「はっ!!」」
ヨハンとジル、この二人がやがてガルディナのサッカー界を牽引するスター選手になることは、案外近い日のことなのかもしれない。
これは余談であるが、現在存在する6チームのうち、エルフや女性ばかりで構成された2チーム以外の4チームは後々、ガルディナの名門サッカーチームとなり、4強とまで言われるようになる。これは、ガルディナで10を超えるチームが出来た頃からのようだ。
エルフや女性で構成されたチームは、「グリーンリーグ」と呼ばれ、そちらはそちらで人気を博すことになるのだが。
サッカーの素人が書いた結果がこれである。




