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ガルディナ王国興国記  作者: 桜木 海斗(桜朔)
第七章 外交 ~融和に向けて~
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幕間 サッカー時々モフり 前篇

「うゅ……」


「ん~……至福」


今、ゲオルグは自室のベッドの上にて、フェリスの耳と尾を堪能していた。


耳に頰擦りをし、もう片方の耳を手で撫で、更に空いた片手で尾を握ったり撫でたりと、それを「ベッドの上」で行う姿は、ともすれば夫婦の睦事に見えるだろう。しかし、ゲオルグに言わせれば「兄妹のスキンシップ」である。


「に……兄さん、そろそろ……」


「ならん」


「う~……ひゃん!……んく……」


フェリスが余り強く出れないのは、今日という日は貴重な休みだからだ。帝国からの新住民受け入れから既に一か月。仕事の割り振りと住居の割り当てが終わり、教育カリキュラムの作成、拡張された農地、施設の稼働と問題点の洗い出しと改善等々……それらの完了まで、昼夜問わず休みなく働いたゲオルグが、ようやく作り出した休みである。


故に、朝から起こしに来たフェリスを捕まえてこのような行為に及んでいるのだ。


「にぃさぁん……」


上気した顔で瞳を潤ませながら甘い声を漏らすフェリスを意に介する事もなく、フェリスはしばらく弄ばれるのだった。
















「よし、回復した」


「な……なにが……?」


かれこれ30分以上、耳と尾を堪能したゲオルグは、満足したような表情で立ち上がり、そして。


「球戯場に行こう」


と、晴れやかな笑みを浮かべながら言った。ちなみに、球戯場とは、ゲオルグが作り上げたサッカー場のことである。グラウンドは三面、1000人程度なら収容できる客席に、二面は芝、一面は走り込みなどの練習で荒れる事を想定され土で作られた、ガルディナでも特に規模の大きな施設である。


「あぁ、そう言えば今日は練習試合の日だっけ」


そして現在、ガルディナには6のサッカーチームが存在している。各チーム20名から30名弱の構成で、男女や種族よる区別も存在しない。男女混成チームが実現するのは、体力的に男女差の少ない一部の獣人やドワーフがいればこそだ。とは言え、彼らより体力の劣るエルフや一部女性獣人などもいるため、そういった者達だけで構成されたチームも二つばかり存在している。


そして、6チームの内の1チームこそ、現在最強の名を欲しいがままにしている、警衛隊で構成された「ガルディアンズ」と名付けられたチームである。この名前は、守護者を意味するガーディアンとガルディナを付け合せて作られたもので、チームのエンブレムは二振りの剣とサッカーボールを組み合わせたものだ。


そして、今日はその「ガルディアンズ」と、それの打倒を目指す獣人とドワーフの混成チーム、「ハンマーファイターズ」の練習試合の日であった。


実を言うと、時折住民達の娯楽も兼ねてゲオルグ主催の御前試合的なものを過去に執り行っていたのだが、それがいつしか「ゲオルグ様に活躍を見て頂き御傍にお仕えする権利を得る大会」という噂が流れ、そして昨今の熱気の入りようとなった次第である。


実際、ガルディアンズの面々は、ヨハンやジルを始めとして、多くがゲオルグ直轄の組織として重用されているが、それはあくまで過酷な訓練を日々こなす警衛隊だからであり、サッカーの活躍など関係ない。まして、他のチームでもゲオルグから信頼され重く用いられている者もいる。それでも、良い所を見せればゲオルグに顔と名前をよく覚えて貰えることは間違いない為、各々躍起になって練習に励み、今では余裕を見てこうして練習試合までするようになったのだ。


「最近はハンマーファイターズも随分やるようになってきたからな、そろそろガルディアンズも危うい。俺個人として一つのチームだけを応援するつもりもないし、良い試合ほど見ていても楽しい。今日は少し期待している」


「兄さん、試合だけは毎回見に行ってるもんね。まぁ、試合がある日はどこも余裕がある時だけだし、問題はないんだけど」


「そういうフェリスも、いつも俺の隣で大声を張り上げている癖に」


「しょっ……しょうがないじゃない。白熱してくるとこっちまで熱くなっちゃうんだから」


「気持ちは分かるがな。それより、そろそろ時間だ、行くとしよう」


そして、二人は球戯場へと向かうのだった。






















「相変わらず、大した熱気だ」


ゲオルグが嘆息しながら辺りを見渡せば、そこには怒声にも似た歓声を上げる人々。


「ガルディアンズ!!お前らに晩飯賭けてんだからなぁ!!負けんじゃねぇぞ!!」

「ヨハン様ー!!頑張ってくださーい!!」

「ハンマーファイターズ!!今日こそ頼むぞー!!」

「警衛隊にばっかいい顔させんじゃねぇぞー!!」

「頼むぞ!!俺ぁそっちに銀貨賭けたからなぁっ!!」


ちなみに、サッカーについて賭け事が行われていることはゲオルグも承知の事だ。今のところ、それで身を崩すような者もいないし、娯楽の少ないこの街で、住民達が自分から始めた楽しみを奪う様なことをしたくないからだ。いずれは国で管理し、その収益で何か新しい事業でも始めようかと思ってはいるが、今である必要ではないだろうと議会で判断されたのだ。


「すごいねー……あっ、あそこがまだ空いてるよ兄さん」


熱気に気圧されながらも、フェリスが目聡く空いている場所を見つける。グラウンドが3面あるため、試合が良く見える席というのは限られる。土のグラウンドだけは少し離れた場所に作られているため問題ないが、芝で出来た二面は併設されており、間をフェンスで区切っただけの状態のため、必然的に三方向からしか良く見る事は出来ない。これはいつか改善せねばならないかと思っているが。


「ジルさーん!!今日もお美し……ゲオルグ様!?」

「「「!?」」」


ゲオルグとフェリスがその空いた場所へ向かうと、その近くに陣取っていた豹人族の男性やその仲間らしき者達が驚愕したような表情を浮かべながらそれに反応した。


ここには貴賓室とかVIPルームのようなものは作っていないので、ゲオルグがこうして一般の者達と混ざって観戦するのはいつものことなのだが、それでもやはり毎回驚かれるのだ。


「ここ、良いか?」


「勿論であります!!」

「どうぞお座り下さいませです!!」


若干口調がおかしくなっているが、彼らは見たところ、初期組ではなく3度目の拡張でやってきた者達だ。故に、ゲオルグと初期組ほどの親しさを持たない為、こういう態度になってしまったのだろう。


帝国からやってきたばかりの者も恐らく観衆の中にはいるだろうが、きっとこの熱気に飲まれているのではないだろうか。


「すまんな、なに、あまり気を使う必要はない。気楽に楽しんでくれ」


「ごめんなさい。一緒に観戦して盛り上がろう?」


二人がそう言っても、やはり体を強張らせている。これについても、概ねいつも通りだし、試合が始まってしばらくすればほぐれるだろうという考えから、それ以上は深く突っ込まなかった。


そしてしばらくした後、両チームがグラウンド中央に整列する。


「これより、ガルディアンズとハンマーファイターズの練習試合を始める!!総員!!グラウンドに、礼!!」


総勢30名を超える者達が、一斉に頭を下げる。これは、ゲオルグが教えたものだ。普通、サッカーでグラウンドに礼をするのかは知らないが、彼らに「グラウンドがこうして無事使えるのは、これを常日頃整備する者、掃除する者、そして、自分達の存在を認めてくれる多くの市井の民がいるからだ。そういった者達に対する礼を忘れる者に、サッカーをする資格はない」と言ったことから端を発する。


普段、このグラウンドは多くの市民の憩いの場、公園のような役割をはたしているが、そうなれば当然、芝は荒れるしゴミも多少出てくる。荒れた芝は元々ゲオルグが魔法を用い一人で手直ししていたが、今では農業部門の者達が自ら手伝いを申し出て、魔法ではなく手作業での修復が行われている。芝の短く刈りそろえるのは流石にまだゲオルグ頼りだが、これについても農業部門の者達が様々な道具を鉄工業部門の者達と試作したりしている。


掃除についても、誰が言い出したでもなく、暇のある者達が有志で行ってくれている。その殆どは仕事で服についた枯草だったり、子供が遊んだ木の枝であったりと大した物ではないが、それでも、いつでも使えるよう多くの者が力と時間を割いてくれているという事実には変わりない。


それ故の、この礼である。


「……始まるね」


「あぁ」


両チームが今度は観客に向かって礼をした後、それぞれのポジションに散っていく。審判は他のチームから出した3名。そして、主審がボールを真ん中に置き、いよいよ、試合開始のホイッスルが鳴った。

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