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ガルディナ王国興国記  作者: 桜木 海斗(桜朔)
第四章 国家となるために
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大増員に向け

ルガとシェリルの家を訪れた数日後、ゲオルグは一人でニデアの街に続く街道を馬車に乗り進んでいた。


馬車に満載された積荷は、綺麗に箱詰めされた金細工。藁と一緒に詰めて傷がつかないようになっている。


「……良い天気だ」


馬車を曳く二頭の馬が奏でるのどかで規則的な音が眠気を誘う。


今、なぜこんな状況にあるか説明するには、少々時を遡らねばならない。














「そろそろ住人の補充の第三段階に移ろうと思う」


いつもの定例会議の最後に、ゲオルグがそう告げた。


「いよいよですか……」


「食糧の生産体制も整いましたし、そちらの問題はないでしょう。二千人や三千人と言われては大有りですが…」


ケイルとニーナがそれに応え、その他のメンツも大きく頷く。皆、反対はないようだった。


「流石にそこまでは集まるまい、半年という期間を設けるとは言え、精々、千から千五百と見越している」


「と、いう事は二千人程度は見積もるべきですね」


前回、三百程度と言ったのに四百人以上連れてきたことに対する皮肉なのは明白なニーナの発言である。


「そこまで集まれば苦労はない。とは言え、今回は前回の商会と領主に競争して貰うつもりだからな、それが上手くいけば、思いのほか集まる可能性は高い」


その発言が特に気に障ったということもなく、ゲオルグはただそんな風に言葉を続けた。


「競争……ですか?」


「あぁ、今回はこの街で生産された金細工などを交渉材料として利用するが、商会と領主、両者に集めて貰いより多く集めた方に多く利益が出るように話を持っていくつもりだ。無論、商会も無闇に領主を敵に回すような真似はしたくないだろうから、そこを上手く取りまとめねばならないし、そもそも商会が領主に引けを取らぬコネクションと資金を有する前提になるがな」


ケイルの疑問に答えると、周囲も納得したように頷く。


「では、もし商会にそれだけの能力がなかった場合は?」


「領主一本に絞る。だがこの場合、自らに出来るだけ利益が残るように仕向けてくるのは間違いないからな、こちらが出す最低限度を多少上回る程度にしかならんだろう」


「なるほど……ではその場合、こちらから出す物もある程度抑えますか?」


大分経験と知識をつけてきたニーナがそう問いかける。


「そうだな、最終的に、半年掛けてあの馬車五台から六台の満載分程度の物を生産出来ると想定しているが、一台くらいは減る可能性がある。それと、明日より開始する手筈の住居の建築作業や金、銀細工に宝飾品の生産もそれに応じて減ずる必要性もあるが、それは明日、俺が直接話を持ちかけてからの結果次第だ。皆には、とりあえずは当初の予定通りの行動を頼む」


ちなみに家屋は現在、初期に作られた500棟の内、100棟程がまだ残されている。住居として用いられているのがおよそ350程、その後に建て替えたり移築したりして他の事業に用いられているのが60程、後は多くを新規に建てて利用している。


今回は増員に合わせ更に700程を建築する予定であり、内500はゲオルグが既に拡張された城壁内部に建て、残る200は少しずつ土木建築部門の人員が経験を積むために建築している。半年で終わるとは思っていないし、現実に足りなくなればゲオルグが建てるだろう。極力住民集めとその後の教育や就職に力と時間を振るいたいゲオルグとしては、今回のこれは土木建築部門が一定以上の経験と知識、知恵を蓄えてくれればそれで問題ない。次回以降はもう少しシビアな要求をすることになるかもしれないという事もある。


「衣服の方もすでに簡素な物を量産し始めていますが、これも?」


「水産の方でも船の追加配備や定置網の増設、また生け簀の作成など、食料確保の効率化を進めていますが…」


「ゲオルグ様、うちも割ける人員を全部細工に回しておりやす」


繊維加工業のレオナ、水産のティナ、鉄工のウィルの順である。


「あぁ、そちらもさしあたってはそのままで構わない。どちらにせよ、いつかは多数の住民を受け入れねばならんのだ、今からその為に出来ることをしておいて損はない。無論、今いる人員で無理があるならそこは相談して欲しい。無理に働いて体を壊されるのが一番困る、というより、今の住民を蔑ろにして新しい住民を受け入れようなどとは言わん。もし想定以上の数が集まった場合はやむを得ない、俺がなんとかしよう。集まった者を拒否するなどということは出来んし、その結果生じる問題についての責任くらいは取るさ」


ゲオルグの言葉に安堵する面々、千人規模の増員ともなれば、単に食料だけでなく、割り振る仕事や教育、住居、衣服などの供給に何かしらの問題が浮上するのは避けがたい。それをよく分かっているという証左であろう。


「他に疑問は?………なさそうだな。では、これで今回は終わりとしよう。各々、万事抜かりなく頼む。この街がどう発展し豊かになっていくかを決めるのは、間違いなく諸君ら先人達だ。後輩に笑われるような仕事はしてくれるなよ?」


「「「「「はい!!」」」」」


「ん、では解散だ」


こうして、半年後と定めた住民の受け入れの為の準備が進められていくこととなる。


ゲオルグはこの翌日、ニデアの街に再び足を運ぶこととなるのだが、その前に。


「ジル」


「っ……はいっ!!」


モフ分の補給は忘れはしないのがゲオルグである。


その後、ジルの猫のような耳としなやかなで艶のある尾を堪能したのは言うまでもない。

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