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ソウルプラネット  作者: ボコしますわよ
フウガ共和国編
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9/11

8 原石

続きです。

 1分前。

 自分に代わって足止めに徹するシオン。

 察しよく技に集中し、一撃で1体撃破したハチク。

 動かなくなったダイヤナの瞳に、2人の勇姿が映る。


(すごいな……もっとあの2人の事、知りたかったな。あれ? あんなに痛かったのに。ああ……あたし、死ぬんだ……嫌だ。やっと海が見れたのに。これからなのに。死にたくない。死にたくない。なんだか視界が眩しい…………)


 彼女の目の前に、白い光を纏った小さなオーブが現れ、優しく体を包み込む。


「あ、まだ息があります。この方」


 灰色の肌に白い髪、透き通る白い羽を纏った少年が現れ、ダイヤナの左胸に耳を当てる。

 その後ろから、鉛色の肌に真っ白の長髪を結った、小さな"それ"が声をかける。


「では、精霊としての初仕事、1人でできそうですか」

「あの、初めてなので見ててもらえませんか。まず、傷を治せるかどうか」


 少年の精霊が、瀕死のダイヤナに両手を向け、淡い光を放った。

 すると、深傷を負っていたはずの彼女の体中が、みるみるうちに癒えていく。


「よし、できました。えっと、次は……今後どうしたいか聞かないと」

「いえ、それは私から。初仕事、ご苦労でした」


 鉛色の精霊は音もなく宙を進み、ダイヤナの眼前で止まった。


「……あの、助けてくれてありがとうございま、……っ」


 ダイヤナの言葉を遮り、折れそうな程細い指が、彼女の額に添えられる。


「貴方の選択肢は三つ。

1つ目。このまま生還し、日々ヒトモドキの討伐に勤しむか。

2つ目。彼と同じく、精霊へ生まれ変わるか。

そして3つ目。先程のマジナイを無効とし、魂となり────『魂の惑星』で暮らす。か」


「は、え!? 何、『魂の惑星』…………!?」

「悪しからず。貴方は彼のマジナイがなければ、既に魂のみの存在でした。選択肢があるだけ幸運と言えましょう」


 普段ならば、ハキハキと自身の考えを発するダイヤナ。

 しかし、精霊の生気のない瞳に畏怖し、混乱していた。

 彼女は頭を抱えながら、しどろもどろに回答する。


「あの〜……勿論1つ目が望みです。が、その討伐の結果が先程の有様でして……再度生きるなら強くならなきゃ。それが無理なら、その魂の惑……」

「可能です。交渉成立です」


 まだ話している途中の彼女の心臓目掛けて、光の矢を打ち込んだ。


「え? 死ぬ!! ……あれ、痛くない……。 ?! ウサキチが!!」


 瞬く間に、ダイヤナの体は光に包まれ、傷だらけの甲冑ウサキチ2号は、ダイヤモンドをあしらった軽量の鎧へ生まれ変わり、彼女の体にぴたりと纏った。


「綺麗……」

「次は貴方が、あの2人を助けなさい。それでは、またどこかで」

「あ、僕も! またどこかで〜」


 そう、2人の精霊は光と共に去っていった。


「待ってよ!! まだ聞きたいことだらけなのに!!」


 ダイヤナが光の方へ伸ばした手には、針のように細いレイピア、もう片方の手には、小型の菱形の盾が握られていた。

 数回武器を握っては離し、感触を確かめた。


 海から、少年2人の叫び声と、異形の唸り声が聞こえる。


「……今はあの2人をって事ね。いいわ」



───────そして現在。


「ニガサナイ! ツマヲ、カエセ!!」

「たすけて〜〜〜!!」

「シオン! ごめん! あと少しなんだよ!」


 2人は何とか無傷のまま、砂おにぎり高速握り作戦で凌いでいた。

 大量の砂を食わされたヒトモドキは、口から黒く染まった砂を溢れさせながらシオンを追いかけていた。

 そこへ、コツ。と海辺の岩からヒールの音がする。


「いい加減にして、ヒトモドキ」


 声のする方へ目を向けると、眩しく生まれ変わったダイヤナが立っている。

 ヒトモドキは腹を逸らし、砂混じりの涎を垂らしながら、彼女に襲いかかった。


「サッキノ、シニゾコナイ!!」


 足元の欠けた岩が、ヒールに踏まれ砕け散る。

 構えたレイピアに突っ込んだ奴の喉笛が、串刺しになった。


「ガ……ゴ……」


 2体目のヒトモドキは刺さったまま、黒いモヤを散らして消滅していく。

 レイピアの先には、錆びた指輪がはまっていた。


 シオン、ハチク、ダイヤナの3人により、2体のヒトモドキは退治されたのであった。


 ダイヤナは指輪を握り締め、座り込む2人へ駆け寄った。


「お2人共、お怪我はありませんか?」

「こっちのセリフだよおおおお!」


 ハチクは震えながら、目から滝のような涙を流す。

 シオンは彼をさすりながら、ダイヤナをまじまじと見つめた。


「あの、僕達が眼を離した隙に、貴方の体が、血の一滴もなくその場から消えたんです。それにその格好……一体?」

「それは……」


 ダイヤナは少し黙った後、笑顔で顔を上げた。


「妖精の仕業ってやつですかね」


 ハチクとシオンはポカンと黙っていた。


「……頭を酷く打ったみたいですし、うちで手当しましょうか。ひどい怪我を負ったのは本当でしょう?」

 

 シオンの提案に、彼女は首を横に振る。


「お気遣いありがとうございます。でもあたし、帰らなきゃいけないんです」

 

 そのままダイヤナは砂埃を払い、


「またどこかで!! エプロンの方! 剣士さん!」


 走って去ってしまった。


「……なんだか、不思議な人だったね、すごい元気に走ってくし。お礼言えなかったな」

「僕達も帰りましょう。鍛錬のつもりが実践になるなんて。またお父さんに怒られちゃう……」


──────────


 レストラン店内。


「器物破損、奇声による業務妨害、度重なる従業員への抵抗。トリプルペナルティ。14時20分、確保」


 店員の通報を受け、メタルクは甲冑を脱がされ、複数の自衛隊によりテーブルへ押さえつけられていた。


「頼む! 海岸方面から妹の音が聞こえたんだ! 離してくれたまえ!」


 ジタバタと暴れるメタルク。

 『鋼』の見ぐるみを剥がされ、木製のテーブルに抑えられた彼の剛力は、半分以下に弱っていた。


「宝星会メタルク。今回は大目に見れません。大統領のお達しまで、ここで」

「無意味である! 俺は16時に大統領から呼び出されているのだ! ダイヤナー! ダイヤナー!」


 騒がしいレストランのドアから、カツ、と軽い合金の足音がする。


「ダイヤナは無事だよ。兄さん」

「…………ダイヤナの声!!」


 正真正銘、生還したダイヤナである。


「皆さん。兄妹共々、大変お騒がせしました。兄はもう暴れませんので、拘束を解いていただけませんか。もし暴れたら、あたしを連れてって」


 メタルクは妹を連行させまいと、先程の醜態が嘘のように大人しくなった。

 自衛隊により縛られていた後ろ手が解かれる。


「妹よ、何故無事である!? 全て"聞こえて"いたぞ! 貴様の骨が折れる音も、ウサキチ2号が歪む音……も…………おい、2号はどうした」

「これだよ」


 ダイヤナが、兄の前で両手を広げ、くるりと回る。

 胸元のリボンの中央に、ダイヤモンドが添えられた小さな鎧。ハート型のグリップが覗くレイピア。背負った菱形の盾は、中央に巨大なダイヤモンドが嵌っている。

 それはもう、メタルクの知るウサキチ2号ではない。


「兄さん、ごめん。ひどいこと言って。でも、あたし騎士になりたいの。お嫁には行けない。気持ちは変わらないの」

「……」

「あたしがヒトモドキに襲われる音、ここでずっと聞いててくれたんだよね。そいつなら、もういないわ」


 彼女の懐から、標的が落としていった指輪がそっとテーブルに置かれる。


「……な! 金属の音がしない。奴らの"オトシモノ"で間違いない……! ……まさかやったのか、妹よ」


 ダイヤナは兄の瞳を見つめ、静かに頷いた。


「これが、あたしの『大人への第一歩』だよ。認めてくれる?」


 沈黙が続く。


「くっ……」

「っお待ちください! 離れるのは……。っ!」


 ダイヤナが自衛隊の目を見つめ頷いて止める。

 彼女の目配せ通り、メタルクはすぐさま店内へ帰ってきた。

 彼の手には、リボンが施された小さな箱があった。


「認めよう」

「!」


 メタルクは跪き、リボンを解いて、震える手で箱をそっと開けた。


「──────遅れてすまない。誕生日おめでとう。ダイヤナ」

「っ兄さん!!」

 

 中には、プラチナ製のネックレスが入っていた。

 

「つけていい!? つけていい!?」

「ああ。成人の証だ」


 プラチナのネックレスは、生まれ変わったウサキチ2号と合わさり、取り返しがつかない程に似合っていた。


「兄さん、どう?」


 妹の勇姿を見つめる鉛色の瞳が、潤みを増していく。


「…………俺には眩しすぎる」


続く

よかったね!テーブル弁償しろ!

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