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ソウルプラネット  作者: ボコしますわよ
フウガ共和国編
5/6

4 英雄

続きです。よろしくお願いします。

GWやることないです。ずっとビール飲んでます。

早朝。綺麗に整頓された静かな厨房が朝日に照らされる。

古い木造の階段から、2人の少年の足音が響いた。


「シオン!何かやることある!?何でも頼んで!!」

「そうですね・・・実は家の裏で、マンダラ菜の苗を自家栽培してるんです。雑草抜きをお願いしてもよろしいですか?」

「わかった!家の裏ってどうやって出るの?」

「こちらです。」

階段の下にある勝手口を開くと、苗が植えられた横長の鉢がズラリと並んでいた。


「おお!」

「マンダラ菜は栄養価が高い分、すぐ虫が湧いたり雑草が生えたりするので。毎日手入れをしないといけないんです。」

「分かった!頑張る!」

ハチクは早速、1番大ぶりの葉を勢いよく抜いた。


「ああ!それがマンダラ菜の苗ですって!」

「え!そうなの!?」

「育つ前はこうなんですよ!」


引っこ抜かれてしまったか細いマンダラ菜の苗は、「ピエエ・・・」と小さく鳴いた。


──────────


「ひとまず雑草抜き、お疲れ様でした。今後は雑草抜き以外の仕事をお願いしますね。」


カサカサに干からびた両手で、打ち上げられた魚のように必死で蛇口で水を直飲みするハチクを見て、たった今採れたマンダラ菜を刻みながら苦笑いした。


「『水』のソウル、土と草に持ってかれちゃうので。」

「ぷはっ。ハア、ハア、でも・・・さ、おかげで、マンダラ菜、すごい勢いで大きくなったでしょ・・・水やりに使ってよ。俺の体。」

「大事なソウルを削ってまでやらなくて大丈夫ですよ。今まで通り、その蛇口の水をあげるので。」

「そっか・・・」

ハチクは元に戻った手で、蛇口をきゅっと残念そうに締めた。

そこへ、階段を駆け降りる足音が聞こえた。


「おはよう、シオン!ハチク君!」

「あ、お母さんおはよう。その手紙何?」

「大ニュースよ!仕入れ先から手紙が届いてたの!従業員の方が昨日の事を知ったらしくてね〜」


広げた手紙には、昨日の契約を切る話の撤回と、懇切丁寧なお詫びが綴られていた。


「よかった・・・お店続けられるんだね。よかった。」

「ほんとよ!シシトウ産のお米って代わりが効かないのよね〜。この取引先も丁寧な方達だわ。」

「シシトウ産?レイメイはずれのシシトウ村の事ですか?」

「そうよ!あ、ハチク君の故郷に近いのかしら?うちはここのお米を使ってるんだけど、お手頃なのにふっくら炊き上がって美味しいの!」

「・・・だから故郷の味がしたんだ。ここの料理。」


水分を取り戻した琥珀の瞳が、光彩を取り戻した。


「ハチク君、早速今日も店番頼んでもいーい?さっき窓から見下ろしたらね、開店待ちのお客様がもう列を作ってたの。」


閉じたシャッターから、店前の人の気配がざわざわと漏れていた。


「はい!ねえシオン!俺店番やる!」

「ふふ、お願いします。」


エプロンをきゅっと締めて張り切るハチクに、シオンは微笑んだ。


「お母さん、ご飯は一旦30号でいいかな。」

「ええ〜足りるかしらねえ〜。あんたー!器足りそうー?」

「分かんねえ!とりあえず今下ろす!」


───────

──────

─────


昨晩のリピーターに続き、噂を聞きつけた人々の行列がワイワイとシオンの弁当屋に並ぶ。


「はい!昨日と同じものでよろしいでしょうか?勿論覚えてますよ!昨日はチップありがとうございました!また来てください!」


「いらっしゃいませ!・・・え!?昨日の俺達見ててくれたんですね!嬉しいです!おーいシオン!この方俺とシオンの事応援してるって!」


「え、本当ですか?ありがとうございます・・・今後とも当店の応援よろしくお願いします。」


「へへ、チップありがとうございます!一流の武士目指して頑張ります!」


「また来てくださいね、いつでもお待ちしてます。」


「あれ!?さっきドードー揚げ弁当買っていかれたお客様ですよね?どうかされました?ええ!?また会いに来てくれたんですか!?嬉しいです!じゃあお惣菜でもいかがですか!?」


「ま、また来てくださいね。次の方〜」


──────

─────

────


「あい皆様、昼の部はこれにて完売です!また夜の部でお待ちしております!!」


シオンの父の声で、列は解散した。買えなかった人々は、悔しがりながらもリベンジを誓って去っていく者ばかりだった。

『準備中』の立て看板を店頭に置きシャッターを閉め、4人は厨房で食卓を囲んだ。


父が怪訝な顔で、スープに口をつけながら話し出した。


「・・・本当にうちの味目当てに来てくれてるんだろうな?あの客達は。」

「あんた、途中から護衛みたいだったわね。店頭に粘るお客様を『お時間です』って追っ払ったの笑っちゃったわ。何よお時間って。」

「他に何て言えばよかったんだよ!若い女の客とかいつまでもハチク君の手握ってるしよ。君も嫌だったら断らねえと。貴族なんだから。ツラも綺麗だから変なのつくだろ。」

「俺は別に!それに、皆ここの味の感想を嬉しそうに述べてましたよ。」

「おお、そんならいいけど・・・」

「僕たちにとっては、とっくに英雄だねハチク君・・・なりたいの、そういうんじゃないのは分かってるけど。」

「ったく、ハチク君とシオンのサイン色紙でも売るかあ?」

「やめなさいよ。何屋か分からなくなるでしょ。」


4人は笑い合った。


「そう言えばハチク君、宝星会の入会試験受けるって言ってましたよね?それっていつになるんでしょう?試験に向けて鍛える時間、必要ですよね。」

「ねー!今日の夜もシュウリさん来るだろうし、その時分かるんじゃないかな?」


────────────


同時刻。センタービルジング最上階。会議室。

一面の臙脂色の絨毯。宝星会の紋章が刻まれた旗。中央に置かれたガラス製の巨大なサークル状のデスク。色違いの6つのチェア。フウガ共和国から先の海まで一望できるガラス張りの四つ壁。

・・・に、一斉にシャッと真っ黒の遮光カーテンが閉じられ、差し込む日差しは封じられた。


デスクには、件のブローチが6つ置かれ、虚しく輝いている。

全て錆による初期不良で音声機能が停止し、誰とも連絡が取れない、飾りと化したものである。

うち1つは、形状がひどく歪み、ボタン機能の宝石がゴロッと取れた、酷い惨状であった。


6つの色違いの席にそれぞれに座る男女がいた。

1番背もたれの大きな赤い席に座った中年:スバル大統領が、デスクに両手を突き、


「この度は、お集まりいただき誠にありがとう。そして────────、」


そのまま、ガンッ。と額をデスクに落とした。


「謝っても謝りきれないっっ・・・・・・!!」


頭を下げられた5人の男女は、沈黙していた。

重苦しい空気が、締め切られた部屋中にどよめく。


────沈黙を打ち破ったのは、橙色の席に山座りをし、大きなビタミンカラーのキャンディを舐めるツインテールの少女だった。


「なぁんでわざわざ授業中にいらしたんですかあ?大急ぎで授業抜けてきたの馬鹿みたいじゃないですかあ!昨日は愛弟子もすっごい困惑してましたよ〜!」


☆☆☆☆☆

マナメ

宝星会:イチバンボシ。マクロ学院魔法学科主席の特待生。『雷』のソウルを持つ。イチバンボシ最年少。特異な視力を持ち、微粒子レベルのソウルも見逃さずワンドに閉じ込め、己のソウルを変換し、万物の魔法を使いこなす。

☆☆☆☆☆


「マナメ君、この場に置いて授業の中断など些細な問題です。2人の未来ある少年が、ヒトモドキに命を奪われかけた。ブローチの開発は僕の監修と仕上げ工程を待ち、あの時冷静に、今まで通り音声魔法を送るべきでした。」


青色の席に脚を組んで座り、海水入りのボトルを鳴らし、眼鏡を触る白衣の青年。


☆☆☆☆☆

シュウリ

宝星会:イチバンボシ。マクロ学院機械学科主任講師。『海』のソウルを持つ。生まれつき欠損している手脚に、海水と機械を併せた義肢を取り付けている。匙一舐めで含まれる成分、ソウル、毒を言い当てる敏感な味覚を持つ。

☆☆☆☆☆


「由々しき事態ではありませんか!土壇場で作り上げたブローチを渡したかと思えば、肝心な応援が届かないなど!そのせいでエイテンがこのような体に・・・くぅ!」


緑色の席から立ち上がり、ガントレットをつけたままデスクを力強く叩く青年。


☆☆☆☆☆

メタルク

宝星会:イチバンボシ。グリーム王国騎士兵長。『鋼』のソウルを持つ。重く硬い鎧を着たまま戦場を走り抜ける筋力と体力を誇る。また、飛び抜けた聴力で心音を聞き分け、対象の性別、年齢、状態、人数まで特定可能。

☆☆☆☆☆


「エイテエエエン!イタイウスね!ケガだから休むいいウスのに、ハルカカナタ、フウガまで呼び出し!!カワイソウ!!もう俺いる!アンシン!ヨーシヨシヨシ!!」


黄色の席を蹴っ飛ばし、エイテンの頭を撫でくりまわす、オオカミの耳と尻尾が生えた大柄な青年。


☆☆☆☆☆

ククリヌス

宝星会:イチバンボシ。ネージュ・ニウス帝国のムレの団長。『骨』のソウルを持つ。ヒト言語を勉強中の獣人族。体術の鍛錬も、鋭い牙と爪の研磨も日々欠かさない。研ぎ澄まされた触覚を常時張り巡らし、細かな相手の動きで喜怒哀楽、そして殺気を読み取れる。

☆☆☆☆☆


「構わんわ、メタルク殿、クク殿。ただ、マクロの医学エリア行かんと輸血できんでかんわ。万が一飛行艇がなかったら、ヒトモドキ諸共あの世行きやったなあ。」


紫色の席で輸血ポーションを点滴で繋がれ、静かに大統領を見つめる女性。


☆☆☆☆☆

エイテン

宝星会:イチバンボシ。レイメイ皇国剣士部隊隊長。『氷』のソウルを持つ。ハチクの師範。氷点下の冷気を纏った刀で、強靭な一刀を振るう。嗅覚が過敏で、嫌いな血の匂いを紛らわすため、ベニカキツバタの香袋を持ち歩いている。

☆☆☆☆☆


5人の若き精鋭部隊、宝星会:イチバンボシに詰め寄られ、縮こまるスバルの前に、5人の影が重なった。


「エイテン、君が完治するまで、フウガとマクロが全面的にバックアップさせてもらう。安心してくれ!・・・俺様はあの時。職務を一通り終えた所で、ただただ『もしも常に持ち歩ける通信機器があれば、いつでも連絡が取り合えるんじゃないか』と、思いつきだけでマクロ機械学エリアまで来てしまった。専門知識もない俺様に、そんな目新しいものが作れるわけなかった。何も鑑みず勝手に動いて。俺様は大統領失格だ。本当に!申し訳なかったっ!!」


☆☆☆☆☆

スバル

フウガ共和国大統領兼、宝星会会長。『光』のソウルを持つ。フウガの建国とマクロ学院を創立した行動力と、その輝かしいカリスマ性から国民達より崇拝されている。自由奔放かつ、「勘」で行動するため、部下は日々振り回されてるが、皆スバルを心から慕い、支えている。宝星会員一人一人を、己の子供の如く可愛がっている。光が当たらないと、幼い少年の姿になってしまう。

☆☆☆☆☆


「カーテン閉じるだけでこんなにちっちゃくなるんだね!大統領おもしろーい!自分で自分の首絞めるオーダーメイドの遮光カーテン!キャハハ!」


ケラケラと笑い、キャンディを舐めながら『雲』のソウルを纏い宙を浮き、スバルの頭をポンポン叩くマナメ。


「とりあえず、こちらは僕が機械エリアに直接赴いて再確認を行います。精密機器は、敢えて部品を塩水に数時間浸すことで、水没や錆の耐性がつくのでね。夕方に再度お持ちするので、皆さんで一緒にテストをしましょう。」


6つのブローチをジャラリとかき集め、重厚な箱に仕舞うシュウリ。


「シュウリ!エイテンのブローチも夕方までに治るのかね。かなり酷い損傷を起こしていたようだが。エイテン、立てるか?」

「ブローチぐにゃぐにゃ・・・ハッ!左胸攻撃受けた!?エイテン!オオケガ!?」


大柄なメタルクとククリヌスにひょいっと持ち上げられたエイテンは、


「あ・・・あー。」


───

「っ、なんやねん!このガラクタ!!・・・っ、アホンダラがぁ!!」

───


「・・・んや、あんま覚えとらん。夜で暗かったでな。」


ブローチは怒りのあまり自ら投げ付けて壊したことを、遠くを見つめ黙っていた。

質問に一瞬ピクッと震えた彼女を両脇で支えるククリヌスとメタルクは、何かを察し、


「ウスゥ・・・。ジブンで・・・。」

「・・・今回ばかりは、気持ちは分からんでもない。」

と言葉少なく呟いた。


時刻は12時半。


「宝星会緊急会議は以上で終了となります。ブローチに関しては、『マクロ:機械エリア』にお任せください。」


シュウリがそう言って、イチバンボシ全員で締め切ったカーテンを開けた。閉ざされていた日光が、キラキラとスバルを照らし、彼は元の姿へ戻っていった。


「はあ・・・海ってこんなに綺麗だったっけねい。」


マナメが開けた窓を見下ろすと、


「あれー!?あんな銀色の像なんてありましたっけ?大統領。」

「んー?俺様以外の彫像は、フウガにはないぜい。」


センタービル前に、仰々しくツヤツヤの甲冑が、花壇の端に座り込んでいた。

その彫像を見て驚いたのは、ククリヌスと共にエイテンを抱き抱えた、メタルクだった。


「何故だ、何故フウガ共和国にいるのだ!?ウサキチ2号よ!」


続く

続きは近々載せれたらいいなと思います。

宝星会:イチバンボシを全員登場させられて満足。

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