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ソウルプラネット  作者: ボコしますわよ
フウガ共和国編
6/6

5 美人

前回の続きです。


5秒でわかるあらすじ。

フウガの街に現れたメタルク家の甲冑「ウサキチ2号」。隣国のグリーム王国から何故ひとりでにウサキチ2号は現れたのか・・・!?

「何故だ・・・何故うちのウサキチ2号が、フウガにいるのだ!?」


ククリヌスにエイテンを任せ、大きな望遠鏡でセンタービル前広場を除くメタルクは、甲冑をカタカタと震わせた。


「ウサキチ2号ってなんだい?メタルクゥ」

「ウサギ要素どこですー?うちの愛弟子みたいな、ながーいお耳ついてないですけど〜」


肉眼で見下ろすマナメが、自身のツインテールを摘んで持ち上げて見せた。


「ウサキチ2号とは、うちの玄関の門番、ウサキチ1号の片割れである。何故1人でここまで!?まさか、中にヒトモドキが!?」


"ヒトモドキ"の言葉に反応し、宝星会一同一斉に見下ろした。

が、甲冑からは、特にヒトモドキ特有の禍々しい煙などは感知できなかった。

行き交う人々は、昨日の騒動でヒトモドキに敏感になっており、露骨に甲冑を避けながら、何も見てないフリをして歩いていく。


「不審者ですね。メタルクさんのご自宅の甲冑を盗み、フウガへ逃亡した不法侵入者。大統領、自衛隊員を呼びますか?」

「そうだねい、何考えてるか分からないしねい。おーい、俺様の命令だよい」

「いや、俺が1人で行きましょう!あれは我が家のウサキチ2号である!」


メタルクは、秘書を呼ぶスバルを止め、最高層ビルのガラスを一部開け、ピィ!と鋭く指笛を吹いた。


即座に現れた彼の緑色を帯びたシールド型の飛行艇は、ピュン!と窓にピッタリ沿って止まり、メタルクの搭乗を待っていた。


「今行くぞ2号よ!!」


上空から飛んでくる彼の声に反応したウサキチ2号は飛び上がり、大急ぎで花壇から離れ、逃げて行った。

甲冑に慣れない様子でガチャガチャと走り出すも、最先端技術を持ってして急降下するメタルクに、ウサキチ2号が速さで勝つはずもなかった。

あっという間に、不器用に逃げ続けるウサキチ2号とメタルクの飛行艇は並走していた。


「2号貴様、何があったのだ!!話せ!!1号と喧嘩でもしたのか!?」

「・・・っ!!ハァッハッ!ハァッハッ!ハァッハッ!」


ウサキチ2号は真横に現れたメタルクを無視して、息を整えガチャガチャとスピードを上げた。

すると、耳を傾けていたメタルクの顔色が変わった。


「・・・っ。重装備での実戦に慣れていない少女の鼓動!浅い呼吸から分かる華奢な体格!長時間甲冑を着ても憔悴しないということは、───俺と同じ鉱石類のソウル持ち!何よりその息混じりの高い声!」


声に出して分析しながら、シールドから飛び降り、2号の目の前にチャッと着地した。

視界が悪いウサキチ2号は、メタルクの胸にガシャアン!とぶつかった。

2号の頭部の甲冑がぽろっと外れ、そのままガラガラと地面に転がった。


頭部が露わになったウサキチ2号の正体は、衝撃で地べたに倒れ込んだ。


「────妹よ!!!何故こんなところにいるのだ!!!」


汗ばんだ翡翠色の長い三つ編みが、地べたに円を描く。

兄をキッと睨みつけるその瞳は、一級の宝石が霞むほど澄み、七色に輝いていた。

あれだけウサキチ2号へ冷ややかな視線を向けていた民衆たちは、掌を返して目を奪われていた。

周囲の人々を、美貌のみで瞬く間に翻弄した妹は、兄に向かって刺すように言い放った。


「ハッ、理由なんて決まってんでしょ。─────家出よ。家出。」


「い、え・・?」


鋼の如く固まったメタルクは、言葉を失い、その場に立ち尽くした。

会話こそ最上階には聞こえていないものの、マナメは肉眼で、スバルは望遠鏡から一部始終を見ていた。


「えーー!?ウサキチ2号、女の子ですよ!!すっごい可愛い!!皆さんも一緒に降りましょ〜!!」

「ビジン、スキー!」


唯一マナメの声掛けに笑顔で応じたククリヌスは、窓から遠吠えをした。

空中を走るように黄色のオオカミ型の飛行艇が到着し、


「マナメ、エイテンもビジン!でもおいてくー!」


いたずらな笑みで乗り込み、地上へ降りていった。


「あ、ちょっと待ってー!」

マナメは窓を開けて、足裏の穴から電気を噴射しながら、


「『電撃の書:キンデー・ドイクソーコ!!』」


と、続いて雷を纏い一瞬で去ってしまった。会議室には、戦犯のスバル、ブローチを負債を抱えたシュウリ、輸血を終えたエイテンの3人が残された。


「魔法の呪文って、聞いてて笑っちゃうの多いねい。」

「逆から読んでみてください。キンデーは"電気"で・・・」

「・・・っ"コウソクイドー!デンキ"!ハハハ!俺様でも使えちゃったりして〜」

「シュウリ殿、輸血終わっただ。恩に切る。」


魔法の話で盛り上がる2人を遮り、使い切った輸血ポーションを返し、エイテンは1人帰ろうとした。

「ああ、エイテンさん。実は貴方には、個別で話があるんです。」

「なんや・・・病み上がりやのに・・・。」

「すみません。大統領も交えて、10分程お時間頂けませんか。」

「なんだいなんだい?珍しいメンツじゃないかい。」


────────


「・・・つまり、宝星会の増員を兼ねて、"エイテンの弟子に宝星会入会試験を受けさせたい"ってのと、"彼の師範であるエイテンの許可もほしい"って事でいいかい?シュウリ。」

「はい。先日のハチク少年の足止めがなければ、多くの死者を出したでしょう。彼は度々『師範のようになりたい』と仰っていました。宝星会、決して楽な道ではありませんが、本人の望みなら、我々に応援しない理由がないかと。」


シュウリは、まだ怪我の痕が残る彼女の顔色を伺った。


「なるほどねい。エイテンはどう思うんだい?」


問われた彼女は、しばらく黙っていた。

何度か「あんなあ、」「──や、ちょっと待って」などと、手で顔を覆いながら、考え事をしていた。その末「よし。」と、深呼吸をした。

あまりにも口篭る姿が珍しく、シュウリとスバルは揃って彼女を見つめていた。

彼女は、席から立ち上がり、ぽつりぽつりと話しだした。


「・・・ウチな・・・いや。スバル大統領。───────私は昨晩、ハチク様のお母様:シュンラン公爵夫人を、見殺しにしました。」


頬杖をついていたシュウリの義手がパシャッと音を立て、眼鏡の奥の目を丸くした。

スバルの瞳がギラっと光った。


「シュンラン様を喰ったヒトモドキも、朝から隊員総出で探しております。ですが、一向に見つからず。・・・そのヒトモドキは、私に"後遺症"を残し、今もどこかで身を隠しております。」

「その後遺症とは?─────────っ・・・・・・・・・・!!!」


海水のボトルが手から滑り落ち、絨毯を濡らした。

エイテンが、2人へ"後遺症"を見せたのだ。


彼女は立ち上がり、「フッ」と息を吐いた。

漆黒のモヤが、彼女の紫に艶めく長髪を包み込んだ。


「名付けるなら何やろな、これ。─────"ヒトモドキ症候群"とか、かね。」


自虐的に微笑んだ彼女の口から、ボゥッと黒煙の塊が吐き出された。


スバルは、自分の席を蹴っ飛ばしながら、エイテンに掴みかかった。


「エイテン!!何故怪我よりまず先に"それ"見せなかったんだい!?」

「まあ、これ見られたら一発処分やろな、って。まだ頑張りたいねん。変な臭いもしなんだら?今んとこ。」


大統領は、彼女の肩に掴まったまま、震えていた。


「君を処分するわけないだろい。こんなボロボロになって国を守って。俺様が、こんなポンコツブローチなんか渡さなければ、君はそんな身体にならなくて済んだんだろい?公爵夫人も命を落とさずに済んだんだろい?」

「大統領・・・。本題はここからだもんで、お座り頂いてもよろしいか。」

「うう・・・エイテン・・・ごめんなあ・・・。」


スバルは、黒い煙を吸って少し縮んだ身体を椅子に預けた。

彼女は黒煙をんっ。と飲み込み、話を続けた。


「実はハチク様、もとい公爵子息様には、本格的な鍛錬は行わず、護身術のみ教えさせて頂いておりました。理由はそのまま。彼が"公爵のご子息"、つまり、公爵一家の"後継"だからです。刀は、護身用に持たせとるだけです。」


会議室に、重苦しい沈黙が流れる。


「自分の母親も守りきれなんだ剣士隊長。まともな構えも教えなんだ師範。これを知っても、憧れるでしょうか、ハチク様。」


彼女は、再び黒い煙をフッと吐いた。

切り揃えられた前髪からジロリとのぞく琥珀の瞳は、暗く陰を刺していた。


「・・・無理だら、普通に。ありえん裏切りだがや。そんなもん。」


2人の沈黙は続いた。

シュウリがゆっくり口を開いた。


「・・・彼は、僕に言いました。『母上を治す薬を探すため、シュウリを尋ねてフウガヘ来た』。そして『師範のように強い武士になりたい』と。」

「知っとる。最低限、海を渡らせるために魚の獲り方、荒波の守り方だけ教えてフウガヘほおった。ほんでウチは、今後も武士道なんざ教える気はない。"それ"、もうどっちも叶わん。万が一のことがあれば、ツバタ公爵の後継もおらんなるし、もうシュンラン様は────ヒトモドキの腹ん中だで。」

「・・・。」

「それでも、レイメイのハチク公爵子息様が宝星会に欲しいって言うんなら、ウチも腹括るわ。」


そう言ってふらっと立ち上がり、


「ほんなら、ブローチだけ頼むな。シュウリ殿。」


と、彼女は後ろ手で手を振りながら、会議室を出て行ってしまった。


続く

今後は週2回くらいで更新して行きます。


次回はヒロインこと、メタルクの妹回です。

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