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舞い降りる雪 side Isuzu

 ちょっと短めです。

 またかっ!? って言わないでーっ!

 そして前回、「本格戦闘」とか言ってたのにコレだよ( ̄。 ̄;)



 あたしは、ただその光景(シーン)を見ていた。


 普通とは違う、あたしの世界。

 それを……そんなものかと軽く飛び越えて行ってしまった。 今までの常識を超えた、そんな世界があたしの目の前にあった。


 そこで繰り広げられる、映画のよう ――ああ、我ながらチンプな言い回しだけど、表現が思いつかないわ、これ―― なシーンで、あたしは何もできずにいた。


 それこそ映画でもマンガでもドラマでも、ありきたりなフィクションで出てくるような、何もせずにクライマックスで立ちつくしているヒロインみたいに。

 そんな架空の物語のヒロインたちを見るたびに、ばかだな~、と思っていた。

 動けばいいじゃん、逃げなさいよ、ちょっとは手助けできるでしょ、って。


 けどそんなキャラクターの心情が、今なら少し理解できる気がした。


 ――常識が、世界の認識が変わる時には、ただ動くことすらも、そう簡単にできる事じゃないんだ、と……。


 きょーの振るう刀は、あたしの目には一瞬の光にすら見えない。 月明かりと炎に照らされる「それ」は光を反射させるるはずなのに、見ることに特化しているはずのあたしにも認識させない速さ。

 それでも身体や腕の動きから二度も三度も、ほんの刹那(せつな)の時間で振っているのがわかった。

 そう、「見鬼(けんき)」なんて見る事に特化した能力を持っていても、それでも見る事のできない攻撃の数々。


 でもそれを、「犬」も「死体」も、かわして受け止めて反撃してくる。


 全部の攻撃に対してではないけど……。

 いくつかの攻撃は届いているけど……。

 二匹の怪物に対して、無数の敵もいる中でそこまでできるきょーはものすごく強いんだろうけど、それでもきょーは圧倒的に不利で、「≧」の戦況は「>」へ、それ以下へ変化していって、なのにあたしは逃げることもできずに、目をそらすことも、目を閉じることもできないで、ただ意味もなく立ちつくしていた。


 きょーの血が、飛ぶ。


 黒いもやが、舞う。


 炎が踊り、見えない光が空を斬る。


 カラスのくちばしみたいな爪がきょーに襲いかかる。


 あたしは立っている。


 ただ、見る。 見ている。


 戦いに夢中な怪物たちはこちらへ見向きもしない。

 あたしを相手にするなんてきょーを倒した後で十分だと、そうわかっているから。

 でも逃げるなら相手にするし、逃げないなら後回し。

 あたしは、そんな密約(みつやく)じみた人質なのだ。


 だからあたしはただ見ている。 見ているしかできない。


 恐くても、くやしくても。


 だから気づいた。 だから気づけた。


「きょー! 足もと――!」


 きょー自身の血がたまっていた場所へ、きょーの足が降りる。 だけどあたしは気づけただけだ。 降りる寸前にあたしの声でそれに気づけても、絶対によけられない、間に合わないタイミング。

 案の定、きょーは大きくバランスを崩した。

 そこへ死体の親玉が ――笑ったみたいにカオを歪ませて―― 突っ込む。


「カイタイシテヤル!」


 物騒なセリフだと、ちゃんと聞き取れなかったあたしがその意味に気づいた時、何故か死体は犬に咬まれていた。


「ナニヲ……?」


「ソイつはオれの獲物ダ。 おレが殺スべき、オれの獲物だ」


 ふと死体から犬へ何かが流れたように……見える。 何かはわからないけど、あたしだから見える「よくない」何か。


「オ前は、おレの犬ニなっテ動ケば十分なノニ、余計ナコとヲするナ!」


 それ、犬が言うセリフなの?

 場違いな感想を浮かべるあたしの前で、死体の色が薄くなったように見えた。


「ナッ……ヤメ……!?」


 死体の、まるで悲鳴みたいな声が途中で消える。

 渦潮(うずしお)のような、気流のような、そんな見えない何かの流れは徐々に勢いを増していき ――大した時間もかけずに死体は消えた。 黒いもやすら残さずに、そんな存在がいた事も忘れてしまいそうになるほど、キレイさっぱり消えてなくなった。

 同時に、周りにいた死体の姿をした何かも全部いなくなる。


「楽しモう……楽シもうジャないか。

 コの殺し合イを。

 イイや、楽しマセろ。 トことン、何処マでモ。

 それガ、オまエのぎムダ」


 黒い犬は、くぐもった、それでも昼間は筒川(つつがわ) 北斗(ほくと)と呼ばれた少年の声で、でも全く違う口調で心底楽しそうにそう言った。


「味方を裏切ってまで言う冗談じゃないな」


 いつの間にか立っていたきょーは呆れたみたいに、顔をゆがませた。

 自分のピンチを助けられた形になったけど、そういう話じゃないんだろうな。


「あんナ腐レが味方ナぞ、そレコそジョウだンダ」


 笑う。


 嗤う。


 犬の表情なんてわかるはずもないのに、わかってしまうのが心底嫌な、小馬鹿にするみたいな笑い。


「今の今まで共闘してたくせに、それこそ冗談だろ?」


 きょーは言いながら懐から出したお札(?)に自分の血を塗って、自分に貼った。


 何だろう?

 何の意味があるんだろう?


 わからない。

 あたしの知識では知り得ない何かがそこにあった。


「水蛟(みずち)、力を貸せ」


 理解できない言葉。


 そして、廊下へ雪が舞った。



 淡く煌めく、光の粒が――。




 シーンキャラを主役級にしないとやっぱり短めになってしまうなあ(・ω・)

 といつかと同じ言い訳をしてみる。

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