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昼過ぎに全員でscreamを訪ねる。

今日は設備点検で店舗が休業な事もあって明日の準備を早々にさせて貰える為、出向いた形になった。


「お!君達がワイルドドックの子だね。関口さんから評判は聞いてるよ!」

円堂さんと対面し握手を交わすと、幾つかの会話を二人は交わしている。

その合間に明日の準備と印刷所の旦那さんが新しくTシャツのプリントを仕上げてくれたのでscreamまで搬入して来てくれた。

勿論今回も組合価格で仕上げて頂いた。本当に有難いし、明日も弟さんを連れてワンマンに来てくれるそうだ。頭が上がらない………。

雷華も実家から物販を持ち戻り披露してくれる。バッチは新作で前回とはデザイン違いになってた。

今回もクールな兄と物販担当の眞子番長のコンビで制作したらしい。流石のクオリティである。

最初は数人しか見てくれる人が居なかったアカシャグマが、今はワンマンでやれるまで成長したんだな。まあ…実はワンマンっても集客ギリギリなんだけどね…。

「みんな、少し練習してくかい?」

そんな円堂さんの声に1曲練習し、虎太郎君と悠兎さんの意見を貰ってscreamを後にした。

円堂さんも割と厳しめな意見をくれるけど、虎太郎君達の意見交換は初めてだから円堂さんとは違う着眼点で話してくれるからかなり新鮮だった。


「太郎君は緊張しやすいか?」


悠兎さんの言葉だ。

ホームであるscreamのゲスト参加ですら緊張をしてしまうレベルなのは自分でも分かってる。

「あん時も言ってたな。慣れた所でも緊張しいやと。」

虎太郎君が言うあん時とは4月の名古屋遠征の時だ。

「蕪木サンのギターだろ?」

「ああ。太郎君のギターってこんなに伸びやかだったんだなって。まぁオーディエンス前にしたら緊張する気持ちも分からないでも無いけどね。」

アカシャグマ結成当初はライブの場数を増やせば緊張が薄れるとがむしゃらにやっては来たけど、苦手な物は苦手で大きな進歩は見られないまま現在まで来てしまっている。

「いや…俺もそろそろ緊張しない方法が知りたくて…」

ギターを立て掛けてステージから降りる。

「良くある『人を書いて飲み込む』とかは?」

「それは数え切れない位にやって来たよ…虎太郎君…」

みんなから出された提案は深呼吸をする、イメトレを重ねる、ポジティブに捉える、ストレッチ、つぼ押し、失敗を受け入れるとも言われたけど、失敗前提って…

「俺のオススメはアルコールを少量飲むだけど…」

「あ。遠慮しときます。」

悠兎さんは好きだけど、悠兎さんとアルコールの組合せはいい思い出が無いので本当申し訳ない。

円堂さんに挨拶を済ませてscreamを後にすると、明日に向けて早々に帰宅する事にした。

「来た時も思ったけど、趣きがある商店街だね。」

「戦後からある市内でも古い方の商店街なんですよ。」

組合員でもある雷華が悠兎さんと先陣を切って歩く。「あ、あの写真屋は俺ん家です。」と指をさしてそのまま通過したって事は雷華、今日も俺の所に泊まるんだね…?

「ねえ。太郎。」

此処まで余り口を出さなかったチャダが隣にやって来て、そっと俺の手を繋いできた。

「チャダ?どうした?」

「ううん。みんな太郎の心配していたから。太郎は大丈夫?」

「ああ…緊張しやすいのは昔からだし、いつかは改善するものだと考えて居たけど………中々難しいね。」

とは言え、バンドの音楽にも関わりあるのならちゃんと真剣に向き合わなきゃならないな。

「チャダは太郎がちゃんと出来る事は知ってるからね?」

少し強張りかけてた気持ちが徐々にほぐれて行くのが分かる。

「ありがとう。チャ…」

「あ───!蕪木サン!こっすいマネしとる!」

アーケードを突き抜ける様な声で虎太郎君がチャダの隣にやって来ると

「チャダ!俺とも手を繋ぐ!」

「うん!良いよ!」

なんて通常運転の虎太郎君とチャダと俺が不思議な並びで商店街を後にした。

当然ですが雷華にも見つかって喧しいから太郎がその場を譲ってやり、地下鉄の座席でもそんな事をやっていた。

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