side13-2
「そういやさ、太郎ちゃん達ってバンドやってんだよね?」
「そだよ!僕が歌って、太郎がギター。」
「雷華ちゃんも尚典ちゃんもだよね?」
「そそ!翔平君もいつか遊びに来てよね!………ん…来たかな…⁈」
大雅の動きが止まると、持っていた簡易釣竿からあたりがあった。
ゆっくり引き上げると赤黒いザリガニが餌を掴んだまま暴れていた。
一斉に大雅の手元に視線が集まる中、不思議と全員が万歳三唱で小さな小道が喜びの声で溢れ出す。
翔平君が持って来ていた飼育ケースにザリガニを入れると大人しく動いていた。
「チャダ、生きてるザリガニ初めて見た!」
「俺も久しぶりに見たな。これで友達にも自慢出来るな。」
「うん!」と安堵の笑顔で翔平君は満足気だった。
「ちょ!翔平君!竿引いてる!」
突如張り上げた大雅の声に反応し、置きっぱなしになっていた竿がズルズルと用水路へと引き込まれてる。
「待て!」
パッと竿を掴んで持ち上げると、翔平君の竿にも同じ様な赤黒いザリガニが餌を掴んだままワサワサと暴れていた。
「やった!僕も釣れた!やったよー!!」
ゆっくりと餌と離して、2匹目も同じ様に飼育ケースに入れる。
「目標達成だね!翔平君!」
「ありがとう!チャダ!太郎ちゃんも大雅ちゃんも!諦めないで良かったよ!」
キラキラした目でザリガニと俺達を交互に見る。
そうだね。これは翔平君の粘り勝ちだ。
小さな事でも諦めない心に自分も見習わないと。なんて思ってしまった。
「とりあえず目標達成したし、ザリガニはどうするん?」
遊んだ竿やらを片付けながら大雅が聞いた。
「学校の先生が教室で飼って良いって言ってたから、明日もう一度確認する。やっぱりダメだったら此処に返してあげる。」
「翔平君のお家では飼わないの?」
「ママがこういうのダメなんだって。それにあのアパート生き物飼えないしね。」
「でもチャダはいるよ?」
慌ててチャダに向かって「シー!」と合図を送る俺と不思議そうに首を傾げる翔平君と微妙な空気感になるも
「ま、誰しも自分の家が1番良いよな!」
なんて、それとなく大雅が話を纏めてくれた。
そんな大雅は自分の家より俺の部屋に滞在する方が比率高いけどな。自室も今は無いし。黙っておくけど。
夕暮れで町がオレンジ色に染まる中、アパートへと4人で戻って行く。
「太郎ちゃん、さっきの話なんだけど。」
振り向きざま、翔平君が俺を見る。
「何時かさ、ママが良いって言ってくれたら太郎ちゃん達のライブ見に行っていい?」
「勿論!何時でも歓迎するよ。な?大雅?」
「そーそー」と俺の隣で大雅も笑った。
「どうしても時間帯が夜な事が多いから母さんと来ればいいよ。早速6月に予定してあるから相談してみな?」
「うん!そうする。あ!ママだ!」
アパートを目の前にした時、出入り口から翔平君のお母さんが手を振っていた。
タッとザリガニを抱えたまま翔平君は元気良く走り出した。
釣られたザリガニ2匹は、後に翔平君のクラスに飼われる事となり、好環境で過ごす事になったとチャダ伝いで知らされた様で。




