side 12-2
「初めまして。春原雄ニです。」
一言で言えば優しそうな雰囲気漂う人だ。
申し訳ないけど天上天下唯我独尊な一美ちゃんに、もしかしたら騙されてるのでは無いかと要らない心配が生まれる。
「あ、は、初めてまして。蕪木太郎です。」
「一美さんからお話は聞いてます。とても有能な弟だと何時も自慢されてるから、早くお会いしたかったんです。」
意外だ。
正直一美ちゃんに直接褒められた事なんて今まで1度も無いから内心驚いた。
「有能。」
「実家を出る迄は家の手伝いを率先してやってくれたと…」
あれは率先か?強要の間違いでは?
義務教育終わったらお前の面倒は見ないと突き放したよね?その当事者は一美ちゃんだよね⁇もう内心多々なるツッコミが止まらない。
「いや…そうでは…」
「太郎君が家の事をやってくれたお陰で仕事に集中して稼ぐ事が出来たって。何時も自慢のしていたから、太郎君にもお会いしたかったんです。今日はありがとう。」
ちょっと待って。雄二さんって人、滅茶苦茶良い人!超優しいんだけど。本当に大丈夫?一美ちゃんに騙されてないよね⁇
「い…いや、此方こそ。一美ちゃんには俺も色々して貰って?…うん…はい…」
予想を超える話をされてしまったのでレスポンスに困っているのと、本来持ち合わせてる人見知りが同時に発動してしまい言葉が詰まってしまう。
「いきなり身内の人間を褒め称えたらびっくりしちゃうよね。ごめんね太郎君。でもとても嬉しいんだ。」
本当に騙されてないからいよいよ心配になってきた。
と、言うか雄二さんって一美ちゃんには勿体無い!
「あの…一美ちゃんって、失礼な事ってしてませんか?」
思わず聞いてしまったが、先ずこの質問が失礼極まりないよな。だけど気になって仕方が無い。
「最初に話をした時は凄く大胆な人だなぁって思ったけど…」
大胆ね。間違いないな。
「本当は色々な所にアンテナを張っていて、細かい事に気付く繊細な人なんだなって。気付いたらまぁ…付き合う事になって…一緒になろうかって…」
春原さん、とても幸せそうな顔で微笑んでる。
これは俺の話じゃないし、当人達が幸せなら良いか。
「雄二さん」
「はい?」
「一美ちゃんを宜しくお願いします。」
「此方こそ宜しくお願いします。僕自身は太郎君とも男同士で仲良く出来ればなって思ってるんだ。」
「俺も…!男兄弟って憧れてました!」
特に大雅の家は兄弟仲が良いのを見ていたので、あそこまでは望まないが仲良くしたい気持ちは本当だ。
「いやぁ、お義父さんに挨拶した時よりも太郎君に挨拶した方が緊張したな!一美さんって太郎君の事が大好きみたいだしさ。」
それは違うと思うとおもうけど。
でも良い話で良かった。本当に良かった。
「な〜に、2人でニヤニヤしてるのよ?」
スッと応接室に噂の一美ちゃんが入って来た。
お母さんとお茶の用意をしていた様で、お茶一式を持っての登場だった。
「太郎君とね、一美さんの話をしていたんだよ。」
「そうなの?ちょっと太郎ちゃん、私の変な話なんてしてないわよね?」
うん。一美ちゃんだけは相変わらずで、にっこり優しく笑ってるけど目の奥が笑ってない。
「太郎君って一美さんの話通り、良い子だね?」
「だから言ったでしょ?太郎ちゃんは私の自慢なのよ?」
珍しく機嫌の良い一美ちゃんの柔らかい表情と楽しそうに会話を交わす雄二さんを見ると、自分の事の様に嬉しくなってしまった。
「挙式は早くて今年の秋か遅くとも来年の6月だから、太郎ちゃんのバンドでバックバンド宜しくね!」
「え─────!」
この依頼の為に召喚されたのだった訳でして。




