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ワイルド・ドックの近況としては、関西では有名なインディーズバンドのトリビュートアルバムに参加が決まったそうだ。
俺ですら知ってるメジャーデビューが決まってるバンドだ。また差をつけられしまった。
それに伴いレコ発ツアーも組まれていて、8月の終わり辺りには東京でも公演が決まって参加もするらしい。
多分そこで虎太郎君や辰治さんに会えるかな。
「昨日まで虎太郎が今日ついて来るって煩くてね。」
まぁ。上京理由はチャダに会いたい一択だろうな。
思い出すのは打ち上げ中のわんわん泣いた虎太郎君の姿だ。
ライブでは雄々しくて勇ましい姿だったのに、アルコールが入っていたとは言え、まるで迷子になった幼児の様に泣きじゃくってたもんな。
「良く我慢して来なかったね。」
「関口さんに捕まってね。打ち上げで酔った際に壊した椅子やら備品の弁償で今日までパーパーでバイトしてる。」
椅子は辰治さんが括り付けてたヤツかな?備品はロープか?
間違い無く超絶不機嫌な顔でパーパーのエプロンかけて働く姿が容易に想像出来た。頑張れ虎太郎君。
そしてオーナーの関口さんも元気そうで何よりだ。
「虎太郎は元気なの?」
「元気元気。何だか急に行きたい大学があるそうで、今必死になって勉強してるよ。」
大学受験の傍らアルバムとレコ発か。中々ハードだな。
でも彼が持ち合わせている勢いで全てやり退けてしまいそうな感じもする。虎太郎君はパワフルだからな。
「辰治は相変わらず平日は真面目な会社員だしな。俺達はそんな感じだよ。」
みんな相変わらずで良かった。
ほんの先日の事だけど、あのライブが遠い日の様な気がする。緊張もしたし及第点って所だったけど楽しかったのは確かだ。
「アカシャグマはどうだい?」
「俺達は先日アルバムの収録をして、一昨日完成しました。」
300枚の内の悠兎さん達分の3枚を差し出した。「へぇ、ジャケ写カッコいいじゃん」と1枚手に取って見てくれる。
「虎太郎君と辰治さんにも渡してください。」
「こんなに良いのか?利益の事も考えな?」
「あ…コスト削減しまくってる部分もあるので大丈夫です…」
なんて言ったってCDとジュエルケース以外は全て商店街の組合価格でとんでも無い低価格で制作してるしね。まぁこれ以上ばら撒く事は出来ないけど…
「なら有り難く頂戴するよ。何かイベントとかやるの?」
「あ、はい。6月にscreamでワンマンやります。後は定期イベントにちょっと出て…って感じですかね。」
「そうか。ワンマン行きたいな。」
「是非!」
名古屋からわざわざ来るのは大変だろう。社交辞令でも嬉しい。
「チャダは最近どうだい?」
凄い勢いで胡麻団子を頬張るチャダ。食べ過ぎじゃね?
「ハニー&バニーで時々働いて時間ある時は図書館に居る!」
「ハニー…?」
「俺の従姉妹のバイト先で、喫茶店なんですけどオーナーに気に入られて時々働いているんです。」
「へぇ…」
随分と驚いた表情でチャダの方を見ながら
「天使が働くのは初耳…いや、チャダなら出来なくは無いか…これだけ人の姿で生活していれば難しくないか…」
まじまじと見つめたままプーアル茶を口にする。
そうだ。店のHPがあったな。雷華が作ったヤツ。確か由紀恵とチャダの写真が掲載されてた筈。
スマホで検索して「これです。」とHPを見せると「本当だねぇ。」と様々なページを開いて見ている。
「時々コーラス参加する天使の話は聞いた事はあるけど…偉いね、チャダ。」
えっへん!と誇らしい表情を見せながら杏仁豆腐を食べてる。
「図書館か…本は好きかい?」
「うん。太郎の家近くに図書館があるの。面白いよね。テレビじゃ分からない事とか色々あるの!」
「ウチの天使も良く読んでたよ。それは共通点なのかな?」
「その子はどんなの読んでた?」
「確か…魔女裁判…魔女狩りの伝記だったかな…」
「まじょ…?」
「チャダ。これだけは参考にしなくていいから。」
流石…安定だよ悠兎さん。とりあえずチャダに注意を促した。
後日、虎太郎にハニー&バニーのHPを見せたら五体投地をした。と悠兎からメールが来たそうだ。




