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メールより悠兎さんからのメッセージで『仕事が押してるので少し遅れます』と飛び込んで来た。
関東には臨時のバイトで上京しているそうだ。
確か男だらけのUNO大会の時には、フリーターで知人の手伝いをしてるって言ってたけど…関東まで来るんだね。移動だけで疲れそうだな。
「チャダ、悠兎さんすぐには仕事が終わらないんだって。どうしようか?」
「じゃあお散歩する?」
悠兎さんとの待ち合わせで今日は臨港施設界隈を歩いている。
GW最終日でも沢山の人が行き交い賑わいを見せていた。
「マラサダ食べた時以来だね!」
そう言えばそうだな。
あの時は今後どうするか悩んでいて、バレンタインイベントが楽しくてやっぱり音楽やりたいって悩んでた春前の事。チャダは丸っこいボディで全身砂糖まみれでマラサダ食べてたっけ。
あれから気持ちも季節も進み今日も初夏の様な陽気の中、2人で同じ街中を歩いている。
音楽をやり切ると決めてからたった2ヶ月ちょっとの間。
チャダ自身に変化があり、名古屋遠征とアルバム制作。中々濃密でまるで物語の中の様な展開が続いている。
「チャダは…楽しく過ごせてる?」
ふと思ったままの言葉を口にする。すると「うん!」と嬉しそうな表情で笑っていた。
「太郎!あそこ人がいっぱいだね!」
臨港パークを散策中にちょっとした人だかりを見つける。
「大道芸の人とか、何かパフォーマンスやってるのかな?」
「チャダ見たい!芸見たい!」
時間もあるし人だかりの方へと向かってみる。
結構いるなぁ…ってか殆ど俺と同い年の女の子だ。この感じは大道芸とかじゃ無いな。
人だかりの隙間から覗き見えたのは撮影機材。テレビか雑誌の撮影での人だかりだったのか。恐らく俳優さんとかかな。
「太郎!見える?」
「うん…多分テレビか何かの撮影だね。パフォーマンスじゃ無いな。どうする?見てく?」
「うーん…。」と隣でぴょんぴょん飛びながら人だかりの先を見ようとしてる。それで見えるのかな?
「別の場所に移動しようか?」
「うーん…あ!ちょっと待って!」
飛び跳ねたままのチャダが今度は両腕をあげて振り出す
「あ!やっぱ悠兎だ!おーい!」
「悠兎さん?この人だかりの中に居るの?」
「1番奥にいる!なんかしてる!」
何かって何だよ。此処で何かバイト中って事か?
自分も背伸びしたり隙間を覗いたり跳ねてみた。うん。これが1番見やすいかもしれない。
ふわっと見えた瞬間、漆黒のオーバーコートを着た悠兎さんが見えては消えた。何か無茶苦茶格好良い雰囲気だった。
見学中である周りの女の子達の会話から導き出した答えは
「え…悠兎さんのバイトってモデル?」
「モデルって何?おーい!悠兎気付かないかなぁ!」
相変わらず手を振りながら飛び跳ねてるチャダ。
人の波が動きようやく悠兎さんの姿が見えると、長い髪をラフに纏めてボルサリーノを被る。コートを羽織りチャコールグレーのマフラー、黒革のグローブと冬の装いの彼がいた。多分秋冬用なんだろう。
しかし名古屋で会った時と全然違う。もっとダウナー系の気怠い雰囲気だったのに、今日は服装のせいもあってかイタリアマフィアのアンダーボスって感じで美しい妖しさを纏っている。
モデルの仕事だからだろう。その切替が出来るって凄い。
「悠兎君が見れるなんてラッキー!」
「あの美しさは貴族だよね!」
「絶対に牛丼とかカレーとか食べたりしないよね!」
「ビールなんて以ての外!ブランデーを嗜んでそう!」
女の子の膨らむ話を聞きながら打ち上げで酔ってカレーを飲んでた悠兎さんを思い出す。確かアルコールもビールだったよな。
「あ!気付いた!」
まだ飛び続けていたチャダの腕が更に動く。悠兎さんの方を改めて見ると視線が合い、此方を見たまま妖しい笑みが溢れると一斉に女の子達が騒めき始めた。
いやいや。流石に今のあの笑顔の破壊力は半端ないって。
「チャダ。悠兎さんの邪魔になるし場所変えるか。」
「おっけ!でさ、モデルって何?」
ゆっくりと人だかりを離れてあてもなくビル群へと向かった。
悠兎が笑ったのは飛び跳ねて見え隠れするチャダが面白かったそうで。




