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「開けてぇ入れて。閉めてぇ外観。袋入れてホラ!完成!」


キラキラ・デコ盛りが激しいネイルなのに、器用に眞子ちゃんはアルバムの印刷物の封入作業をスムーズに進めた。

GWも終盤に差し掛かった昨夜、雷華からCD納品の連絡が来た為、俺とチャダと尚典は山口家へとお邪魔している。

大雅は家族行事の為本日不参加だが、こう言う作業は不向きなタイプなので居なくても問題は無いだろう。

雷華の部屋で最近ではすっかりアカシャグマ・グッズ担当になってる眞子先生の作業手本を見ていた。

「バッチのパッケージも綺麗だと思ってたけど…眞子ちゃんはこう言うの得意なんだね?」

「うん!こーゆー単調作業大好き!スッゴイ楽しい!」

手は止まる事無く話しながらもサクサク作業をしていく。

「チャダ、良い事教えてあげる。この薄い線に合わせると綺麗に袋、止めれるよん。」

「本当だ!ありがとう眞子先生!」

「いーよ、いーよ。もう番長って呼んで!」

「眞子番長!」

番長の肩書きはどうかと思うが、本人が楽しそうならいいか。

設置された小さなテーブルを5人で黙々と作業してる中、女の子達は楽しそうに作業している姿を見ると何だか微笑ましく見える。あれだ。文化祭の準備中みたいなノリだ。

「そう!この雰囲気…文化祭の準備ん時だ!」

手を止めずに俺の思っていた通りの事を眞子ちゃんがそのまま口にした。

「文化祭?文化祭って何?」

「えー?チャダも文化祭やったっしょ?学生の頃とか!」

「一般的には文芸に関連した学校行事だよ。文化祭と言わないで〇〇祭とか言う学校もあるからね。もしかしたらチャダは文化祭名義は馴染みが無かったかもね。」

スッと尚典の言葉でチャダのボロが出る前に回収する。

「眞子の高校は6月にあるよな。文化祭。」

「そそ。だからGW終わったら本格的な準備が始まるんよ〜もう楽しみしかない!」

大学にも文化祭的な物はあるけど、アカシャグマが優先だったし属してるサークルも無いしで自分とは無縁だった事に気付く。大々的に文化祭をやる大学でも無いから、余り気にもしてなかった。

「ねえ!チャダも一般公開に来てよ!アタシと一緒に回ろ!」

「うん!行く!」

そんな他愛の無い会話を交わしながら封入作業は続く。




「これで…300枚!終わった!」

そう眞子番長の嬉しそうな声で最後の1枚を袋に詰めて完成品の箱へと詰めた。

「終わったね。みんなご苦労様でした!」

尚典の労いの言葉で一斉に拍手が生まれた。この達成感も気持ちが良いなぁ。

「終わったなら祝杯よ!何かジュース持って来るから…チャダも手伝って!」

「はい!番長!」

眞子番長に連れられて女子2人が部屋を出た時にふと先日の事を思い出す。

「そういや、鳰君の話聞いた?」

彼の話だとそろそろメジャーデビューの情報解禁されてる筈だから2人の耳にも入っているだろう。

「オイラは昨日聞いた〜。用があって出版社に原稿直接持って行ったら担当から『知ってる?』って聞かれたから。」

「俺も今朝友達から聞いた。太郎は彼と仲良いから恐らく本人から聞いたんだろ?」

雷華の台詞に頷く。嬉しそうな鳰君の顔は記憶に新しい。

「まぁ…彼の楽曲は非の打ち所がないからね。オイラに言わせれば上手いの一言だもん。」

小さな音楽雑誌ではあるが、音楽のコラムを書いてる尚典が言うんだ。やっぱりメジャーデビューが出来る実力が備わっているんだよ。

「俺達もこのアルバムが足掛かりになるといいな。」

「そうだね〜」

300枚の完成したCDが入るアルバムの山を俺達は見上げる。

300枚。

初めてだしとりあえず捌ききれるであろう数で今回は作った。

在庫になるのもアレだし、screamとパーパーにも扱ってくれると言ってくれた事も考慮した数だ。

「大量の在庫は凹むじゃん?初回は少数にして評判良ければセカンド作れば良いじゃん?」と大雅の意見を参考にした。

後はHPからと物販と、商店街のCDショップでも少量置いてくれるそうだ。いよいよCD屋もアカシャグマ活動に賛同してくれる事になったよ。

此処まで期待してくれると物凄いプレッシャーにも感じるけど、それに負けないアルバムを作ったつもりだ。何か爪痕を残せたら良いなぁ。

爪痕でもう1つ思い出した。悠兎さんの事。

「そういやGW終わりに悠兎さんと会う約束をしてんだけど、雷華達は来る?」

「5日とか…か…。ああ俺は組合の集まりがあるから。今年の縁日会合。」

「オイラは先約があるからな。悠兎さんには宜しく伝えておいてね。」

確か大雅もダメだったんだよな。となるとやっぱり俺とチャダが会いに行くかな。

「はいはーい!ジュース持ってきたよ!ウチにあったのコレしかな無かったけど良い?」

パタパタと女子達が賑やかに帰って来る。

こうしてアカシャグマのファーストアルバム完成に一旦の祝杯をあげるのであった。

「眞子…これ、母さんの隠し在庫の不知火ジュースとチョコパイだぞ…?」

「いーよ、いーよ。意外と母ちゃん気付かないよ?」


山口家の母は賞味期限を5年前に迎えてもそのままにしてしまうタイプ。娘がお菓子ちょろまかしても案外バレない。

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