side 9
虎太郎side
悠兎や辰治に言われなくても自分が良く分かってる。
古川本人に言った事で何の意味も無い事だっても理解してる。
こんな事は父親が俺にやってる事と同じ事をやってる自覚もある。無意味に俺がギャーギャー喚いてるだけ。分かってる。
やってる事は小学生のガキでもやらない事だ。辰治に指摘されてぐうの音も出なかった。
本当なら反論出来る位に俺の中では最大に腹が立つ話なのにだ。
つくづくダサいな。俺。
「おーい。」
誰が迎えに来たか?声の方へ振り向く。
「虎太郎?大丈夫?」
意外だ。アカシャグマの天使が来やがった。
しゃがみ込む俺の横にやって来て同じ様に座って来た。
「ここ、汚いぞ。」
「じゃあ何処なら清潔な地面がある?」
ああ、この天使は喋るんだったな。
そう。トドメは古川の所に天使が居て羨ましかったんだ。
昨日一緒にパーパーにやって来た瞬間に分かった。あの女は天使と同じ生き物だって。
しかも俺達の天使と違って話して笑っている。姿形も人間そのものだから堂々と一緒に行動をしている。
おまけに可愛いときた。この前振られた女より何倍も良い女を連れてるなんてそりゃあ
「嫉妬しか無いのは分かっとる。」
天使は此方を見てゆっくりと頷く。
「俺も父親もただ彼奴らが羨ましいだけで、誰かに喚いてるだけだって分かっとる。器がちっさい男や。」
「器って大事?」
中々面白い事を聞く奴だな。
「そら大事だろが。」
「その前に器って、なに?」
「先ずそこからかい!要は心の広いとか、朗らかなとかそう言った気持ちや考えの事。こっすい奴より良いだろ?」
「まぁ、そうだねぇ。心が広いのもいいけど、虎太郎は自分の気持ちを素直に言えるから凄いと思うな!」
……………この天使はこんな事を言うのか。こんなん言われ方されたのは初めてだわ。
「器が小さかったら大きくすれば良いんじゃない?出来そうでしょ?もしかしたら悠兎や辰治が広げてくれると思うんだ。」
確かにあの2人と出会って、バンドをやる様になって色々な人と付き合う様になってからは視野は広くなったと思うが
「広げられっかなぁ。」
「悠兎のピアスの穴みたいになろうよ!」
いや、俺から見たらピアスであれは広げすぎだろ…
「でもね、大雅はチャダの大事な仲間なの。ああ見えるけど裏では凄く努力してるんだ。だからあんな風には思って欲しくないの。」
分かっとるよ。
時々会う事があったけど、古川大雅も奴の兄貴達も俺よりも努力しているのは分かっている。
彼奴の家に揃う表彰状やトロフィー達で充分に分かってる。
「それにさ。」
ぐっと天使の顔が近づいて
「本当に虎太郎の器が小さいなら、チャダの話なんか最初から聞かないもん。」
「それはおみゃーが天使だから…」
「チャダは天使じゃないよ。チャダはチャダだよ。」
お前は絶対天使やろ。いや、そう言うんじゃないか。
でもこの感じ。高揚感って言うのか?懐かしさと嬉しさが徐々に俺の気持ちに入って膨らむ感じがする。
「何、自分はチャダって呼ばれてるん?」
「そうだよ。雷華がつけてくれたの!いいでしょ!」
「演歌歌うインド人やん。もっと良いのは無かったん?」
「え?インドの人は演歌歌っちゃいけないの?」
「そうじゃなくて…」
この天使もといチャダって、つくづく面白い奴だな。
固定観念が無いと言うか、想像力が豊かと言うか。
ルックス可愛いが騙されてはいけない。話してみたら中身は幼稚園児とほぼ変わらん。ただ、難しく考えないどうでも良い話していると最近忘れていた楽な気持ちになる。
「なぁ、チャダ。」
「何?」
「アカシャグマじゃ無くて俺等…俺と一緒にいてくれん?」
答えなんて分かりきってる。でも言わずにはいれなかった。
「えーと、無理!」
当たり前の回答を満面の笑みで返され、思わず俺もつられて笑ってしまった。
高校生が元ネタのチャダが知ってる謎。




