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「どうだった?名古屋は回る所、あったでしょう?」
一通り名古屋観光をした後に関口さんから連絡があり、夕飯をご馳走してくれるって事でパーパーへ戻って来た。
「熱田神社から名古屋港界隈を歩いて来ました。」
「変なモアイ居る所でしょ?若いのに神社行くんだね!」
「暫く僕の義姉の安産御守りを買い歩いてたら、何となく行く様になっちゃったんですよ。」
「やっさしー!」
流石コミュ力半端ないな大雅。もう関口さんと和気藹々と話を弾ませている。
その一方で関口さんは押し寄せるかの如くに目の前に大皿料理が次々と並べられて行く。しかし
「パーパーって余り無いライブハウスの作りですよね。」
俺が思った通りの言葉を尚典が口に出した。
今居る場所は箱の中の所謂2階部分。此処からステージを見渡せる様に作られているのだ。
「ランチタイムは1階も2階も飲食スペースだけど、夜の1階はオールスタンディングの箱に変わるのよ。2階は終日食事も出来るけど、今日の出演者のお客は殆ど利用しないから気軽に食事してて良いわよ。」
確かに。幾つかある席は俺達しか居ない。
そして吹き抜けから見下ろせる1階は満員で客層は自分達と同世代の子が待ち侘びた様に見える。
夜は殆ど何かしらのステージがあるらしい。客層から見て俺達みたいなバンドが出るのだろうか。男女比が5対5って所かな?きっとバランスが良い演者なんだろうな。
「関口さん!今日はどのバンドが出るの?」
出された唐揚げをつまみながら大雅も1階の客席を見下ろす。
「今日はワイルド・ドックよ。」
「ワイルド・ドックって…」
大雅が言いかけたタイミングで暗転、重く伸し掛かる様な重厚なベースラインが響き上がる。
ワイルド・ドック。彼等は明日の対バン相手だ。
名阪界隈で活躍する男性スリーピースバンドで、インディーズの世界でも少し名の知れたバンドである。
事前知識として彼等の動画を見てきたけど、硬派とまでは言い難いが、凛々しい風格を持っているバンドだ。
ざわついた空気は一瞬鎮まり、次には破裂するかの如くに弦楽器の圧が箱全体に押し寄せてきた。
凄い。それが第一印象だった。
動画でも格好良い印象だっけど、実際には格好良いだけでは無い。雄々しい、まさにバンド名通りの人達だ。
「化けるバンドだね。」
「あのドラム、良いね。重い叩き方が上手い。」
目の前の料理に目もくれず、我がリズム隊2人がバンドチェックに入る。
一方で余り興味が無いのか、大雅とチャダは仲良く食事を始めている。今更だけど自由だな。全員。
しかし折角出して頂いた料理が冷めてしまっては失礼なので、つまみやすい料理から俺も頂く。
スタートから3曲ノンストップで終えるも、箱の中はただただ興奮の坩堝の中でボーカルの彼が一息つくとマイクを持ち替えて此方を見上げた。
「ゴルァ!アカシャグマァ!!」
突然の名指しと怒号でビックリと言うか引いた。え?怖、俺達、何かしたっけ?
「ビックリしたぁ!」
ビックリした割には凄い口の中がいっぱいだね。チャダ。
それとも演奏中に飯食ってたのが不味かった?
「ああ、悪い。飯食いながら見てて。」
「そうじゃねえ!ベース!」
そうじゃないんだ。
でもあの雷華にツッコミをちゃんと返すから、多分ボーカルは口が悪いだけなのかもしれない。
「居るんだろ!古川大雅!!」
全員が大雅の方を見る。滅茶苦茶他人事の様に焼きそば食ってるな。当事者。
「何、大雅の友達だったん?」
「いや友達ってか僕等の親父同士が友達なだけで、僕的には友達でも無く知り合い以下だけど?」
「そうか。でもその手羽先食べる前に返事してあげなよ。名指しで呼んでるんだからさ。」
「えー?食事中なんだけどー?」とやや渋りながら2階手すりまで来ると大雅は顔を出して手を振った。
「久しぶりだねぇ!虎吉君!」
「違うわ!俺は虎太郎だわ!!!」
パーパーのイメージとしては、今は亡き日清パワーステーション。




