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愛知県名古屋市。

日本中部地方、最大の都市とされている。

自分達が住む横浜も繁華街は人が凄いが、名古屋も行き交う人の多さに驚いた。

招待されたライブハウスも地図上では繁華街外れに見えたが、実際にはかなり賑やかな場所にある。

今回呼んでくれたライブハウス「パーパー」は日中はランチ営業をし夜はライブハウスになるらしい。

ここのオーナーさんが昔有名な飲食店で修行もした料理人で、色々あって店舗を継いだ時に生バンドも演奏出来る様に改装したのか始まりだそうだ。

最初に伺った時もランチ営業中だったが、ランチ終了間際にも関わらずお客さんの入りが多かった。人気なんだろう。


「はじめまして。私がオーナーの関口です。」

自分の母親よりも少し上位の年齢かな。だけどパワフルな雰囲気を持つ女性と握手を交わす。

「円堂君から噂は聞いてし動画も見たわ。正直アタシの好みで今回は呼んだ様な物だから、ありがとうね!」

1人1人と握手を交わしていく。そして地味に握力凄いな。

「あら、随分可愛いメンバーがいたのね。」

チャダの前で手が止まり、早速このタイミングがきた。




先日俺の自宅での話し合いの時だった。

チャダの素性がバレない様に口裏合わせの最中を思い出す。




「太郎は少し調べれば世界的指揮者の蕪木次郎の息子だとバレちゃうし、大雅も同様でこの界隈では超有名な総合病院の息子だと分かっちゃうから2人の血縁者設定は外した方が良い。」

俺と大雅は顔を見合わせて納得した。

「雷華も自営業だから探られたらバレるので、ここは1番素性が複雑なオイラの血縁者にした方が無難だと思うんだ。」

確かに。そう言う理由で考えれば尚典が適役かもしれない。

「チャダは尚典の兄弟?」

「他の人達に対しての設定上はね。本当は太郎の方が良かったんだろうけど、他人にツッコまれた時にオイラが1番都合が良いんだよ。ごめんね。」

「そんな事ないよ!じゃあ!チャダは尚典のお姉さんね!」

発言やビジュアル的にチャダは妹って方がしっくりくるが「うん。いいよ〜」と尚典も答えていたのでまぁいいか。

「あと名前。流石にオイラは日本人だからね。チャダは愛称としといて、表向きの名前も決めた方が良い。チャダが何か好きな言葉とかあればそこから決めよう。」

室内がしん…と鎮まり、視線がチャダに集中した。

「うーん。そうだなぁ。」

幾つか目のシュークリームを頬張りながらチャダは答えた。暫しの沈黙し見守る事、数分。

「チャダ、ユキって名前がいい。」

そう言い切って此方を見た。

「良いね。オイラはそれて良いと思うよ。ちなみに理由は?」

「太郎と会ったのが雪の日だったから。あの時、太郎に拾って貰わなかったら、こんな良い思いはしてないと思う。」

理由を聞いてちょっと俺の中でグッとくるものを感じる。

「でもさ、確か季節の名前とか自然の名前って余り良く無いって名前つけ辞典に載ってたから、漢字の雪は避けた方が良くね?」

最近まで初孫フィーバーで賑やかだった古川家三男坊が聞いてくる。そうなんだ。初めて知ったわ。

「なら他の漢字で考えよ?組み合わせれば無限に作れるし。」

尚典がスマホを出して漢字検索を始めると、大の男4人がネットで黙々と名付けサイトや姓名判断で調べる。

「べ…別にとりあえずの名前だから、チャダは何でもいい…」

「名は体を表すって言うからね。大事だよ。」

雷華の圧により、こくんとチャダは頷くと俺のスマートフォンを覗きこむ。

「……………チャダ、コレは?」

沢山並ぶ名前の中から1つの名前に指を挿す。

「コレでユキって呼ぶんだって。お洒落じゃない?」

「お洒落なの?」

「この漢字でユキって余り呼ばないかならなぁ。俺も初めて知った。音楽やってるって感じで良いと思うんだけど、嫌なら他のも探すよ?」

「ううん。これで良い。太郎の名前で行く!」





「はっ…はじめまして。詩(ゆき)と言います。」


ガッシリと詩ことチャダの手を取り関口さんと固い握手を交わした。

「詩ちゃんはサポート?ローディ?メンバーっても動画では観た事が無かったかったけど。」

「一応メンバーですが、どちらかと言うと裏方寄りですね。曲の事とか、色々な事をやって貰ってます。」

雷華は関口さんに真っ向から設定を並べていく。凄いなぁ。俺はボロが出そうだから未だ黙っておこう。

「ビートルズで言うジョージ・マーティンかしら。いいんじゃない?誰かの彼女だったりして。」

「違います。実は僕の姉なんですよ。」

笑顔でさらっと尚典も用意した嘘を並べてきた。やっぱり姉設定でいくんだ。

「そっか。男ばっかで部屋どうしようかと思ったけど、弟君と一緒なら大丈夫か!」

ちょっと待ってて!と関口さんは奥へと戻って行く。

そのタイミングで全員顔を見合わせて軽く安堵に浸った。名古屋に居る間はこんな感じでこなせば良いだろう。

「はい。雷華君にはメールで伝えてるけど、近くにウチの宿があるからこの番号の大部屋使って良いわよ。大きな機材はバックヤードにもう置いちゃっていいからね。先ずは名古屋観光でもしてきたら?」

軽い金属音をたてて、雷華に鍵を手渡される

「ようきたねえ!名古屋へ!」

名古屋上陸です!

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