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55/95

side5-1

大雅side

名古屋遠征の話し合い翌日。


あの後そのまま太郎の部屋で一泊し、チャダと太郎の3人で近くの地下鉄迄歩いていた。

「一応形式上」と太郎が駅近くのコンビニで買って来た煎餅の折り菓子を渡すと授業があるからと電車へ乗っていった。どうやら訪問の手土産らしい。マメだなぁ。

今日は朝から学校で夕方もバイトらしく、18時過ぎ迄は部屋に戻らないそうだ。

そのタイミングで姉より赤ちゃんの訪問が許されたので、これから実家に向かいチャダとは1日一緒にいる事となった。

「あの時の赤ちゃんに会えるの楽しみ!」

ウキウキしたチャダの笑顔を見る一方で、姉の破水から入院した事を思い出す。


突然の浮遊感、チャダ自身からの閃光、気付いたら病院の車寄せにいた事。未だに不思議としか言い様が無い。


一緒に居た姉も陣痛でそんな事は覚えて無く、一連の出来事をハッキリ記憶しているのが僕だけだ。

以降は母子共に身体で何か起こった訳も無いから忘れていたけど、結局はこの説明出来ない現象のお陰で病院で直ぐに処置して貰えたからな。今は良しとしよう。




電車を乗り継いで実家に辿り着く。

表向きは初めてだが、チャダは2回目の訪問となる。


「大雅、帰って来たのね。彼女がお友達?はじめまして。」

玄関に着くなり姉が出迎えてくれる。実はチャダは初めてじゃないんだけどね。何となく変な感じ。

「初めまして。今日はお招きありがとうございました。詩(ゆき)と申します。これお土産です。」

「あらあらご丁寧に。お友達って言ってたから男子だと思っていたけど…もしかして大雅の彼女?」

「違う。尚典の姉さんだよ。保育士資格の一環で赤ちゃんを見たいんだって。身近な赤ちゃんはウチしか居ないってさ。」

さっそく昨日口裏合わせの設定を発動させる。

昨日尚典が提案した段階ではそんなの不要と考えてたけど、意外と必要なんだと確信した。

相手が知らない人程聞いてくるもんなんだな。そうか。

「ほら、2人共上がって。そろそろ莉子が起きる時間だから、先ずはお茶にしましょう。」

そう姉に促されて客間へ向かう。途中廊下を歩いてる最中にチャダが小さな声で「莉子ちゃんって言うんだね」と微笑んだ。

あれ。名前言ってなかったっけ?

姪っ子よりもチャダの事で慌しかったから忘れていたかも。

莉は可憐なイメージで、子は人生を「一」人で完「了」する事が出来る人になる様にって兄夫婦と親父が命名したのだ。

客間にチャダと一緒に通され姉がお茶の準備で席を外すとチャダがソワソワした表情で僕の隣に座って来た。

「凄い緊張する…前とは違うから…チャダ大丈夫だよね?」

「大丈夫っしょ。」

しんと静まり返った客間ソファーで並んで座る。

そういや初めて女の子を家に連れて来たな。

女の子以前にそもそもチャダが謎の生物なんだけどさ。

実家暮らしなせいか、歴代の彼女達は基本外で遊ぶだった。

そう言う意味では普段使わない客間で見慣れない姿の女の子と一緒に居る。チャダの緊張が此方にも伝わって来る気がする。

無言の時間がどれだけ経っただろう。

ノックと共に入って来た姉からトレーのお茶一式を渡され

「大雅、ごめん。莉子起きたみたいだから詩ちゃんにこれ、お出しして。今連れて来るから。」

耳をすますと、確かに遠くからふにゃにゃと泣いてる声がする。

トレーを受け取りチャダの方を見るとまだまだ強張った姿で座っている。

「チャダ、これから連れて来るってさ。ほら茶飲んでリラックス。すげえ顔してるぞ。」

「本当?チャダ変な顔してる??」

「変ってか、すげえ面白い顔。」

ニコニコしたり緊張したり微笑んだりでチャダの表情は忙しなく変わるな。まぁ僕個人的には全然飽きなくて寧ろいいわ。

姉が用意してくれた紅茶を頂き、再び静かな時間が流れた。

暫くサイドストーリーが続きます。

先ずはあの時の赤ちゃんと対面。

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