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「何故、俺はその場に居なかったんだ?」
テーブルに項垂れる様に力無く雷華はうつ伏せた。
話は少しだけ遡る。
月末の名古屋遠征について話は出来るか。そんな雷華からの連絡によりメンバー召集となった。
確かにぼちぼち色々詰めなきゃならないとは思っていたけど、チャダの件で少し忘れていたのも事実である。
あれから数日経過したが。チャダは丸っこに戻る事も無く人型をキープしたまま今日も元気に過ごしている。
相変わらず距離感近めでチャダはやってくから、対応にドギマギしてしまう。まだまだ慣れない俺がいる。
俺か大雅のどちらかに時間がある方がチャダの様子を見る様にしていたが、昨日からは由紀恵も顔を出す様になった。
バイトが休みだったらしく、俺の部屋に来てチャダとおしゃべりを楽しんでいた。矢張り女性同士が良いのかもしれない。
俺が給料前だったので集まりは今回も俺の部屋となった。
珍しく大雅は少し早めにやって来た。チャダに用がある様で
「チャダ!明日姉さんが来て良いってよ!」
「本当!わあい!行く行く!」
明日の俺は朝から学校からの夕方までバイトだから、そのまま大雅にチャダを託す事になりそうだな。
そんなやりとりの中、チャイムが鳴る。誰か来たのだろう。
「開いてる!入っていいよ!」
大きな声で返事を返すとやって来たのは雷華で、入るなり此方を凝視したと同時に開いた言葉は
「………ね。太郎、大雅。もしかしてあの子、チャダ?」
「え。雷華、怖。」
また大雅がどストレートに斬った。
確かに正解なんだけど初見で見抜いたのは正直俺も引いた。
「何、太郎!チャダに何かあった⁈」
「実は俺達もよく分からなくてね。2〜3日前なんだけど…」
朝起きたらチャダが女の子になってた事、大雅や由紀恵の助けで初日は乗り越えた話をした。
今では家事手伝いをしたり本を読んで学んだりと、普通の人間とほぼ変わらない生活をこなしている。
そういや初めて連れて来た日も日本語を一晩で習得してたな。元から学習能力は高いんだろう。乾いたスポンジの様に色々な事を日々吸収して過ごしている事を伝える。
「待って。太郎。」
「うん?」
「買物とか俺、初耳なんだけど。」
雷華が頭を抱えながら続ける。うん。だって今初めて全てを話したからね。そりゃあ初耳でしょうね。
「何故、俺はその場に居なかったんだ?」
そんな感じで冒頭に繋がる。
「俺もその課金イベントに参加したかった…。」
これはイベントじゃない。課金イベント違うよ。
しかも雷華が居たら散財確定だから絶対一緒に居たらダメだ。
「雷華。」
項垂れる雷華の隣にチャダが座って様子を伺う。
「雷華は元のチャダの方が良かった?」
そっと雷華の頭を撫でながら不安そうな顔を覗かせた。
「いや、違う。そうじゃないんだ。チャダの初めての事に俺も一緒に触れる事が出来なくてショックを受けてるだけで。」
「本当?」
「そもそも今の姿でもチャダを嫌いになる理由がない。会った時から俺はチャダがす…」
「本当に?良かったぁ!今のチャダが嫌かと思ったよ!」
雷華の言葉を遮る様にチャダの細い腕で雷華を抱き留めた。
実は俺も未だに慣れないのがこのチャダの行動で、こうやって抱きついて来る事が多い。
しかし本人曰く丸っこ時代からだと話をしてるが、よくよく思い出すと何時もくっついてたのは実はハグをしていて、単に対象物である俺達がデカ過ぎてくっついてるだけに見えていた。が真実だったようだ。
「ねぇ。雷華、大丈夫?生きてる?息してる?」
大雅の言う通りチャダの腕の中で固まったままになってる。
とうとうキャパオーバー起こした様だ。多少の事はチャダの件で話が滞るのは予測していたけど、これで今日の話し合いは続行不可能だろう。
「おーい。返事無いから入っちゃうよー!」
お邪魔しますー。尚典が入って来た。全然気付かなかった。
「ああ、ごめん。」
「別にいいよー。これ、渚ちゃんからの差し入れ。シュークリームだから冷蔵庫…って、あれ?」
尚典の視線が固まったままの雷華とチャダに向く。
「あれ?チャダだよね?会わない内に随分と成長したねぇ!」
流石だ尚典そうきたか。彼らしいまさかの斜め上の台詞だ。
彼の受け入れるスピードの速さに驚きしかなかった。
尚典は地味に色々な場数を踏んでるので受け入れる要領がレベチ。その話はいつかの機会に。




