44
「皆様、お待たせしましたー。」
ガチャリと扉が開くと最初に由紀恵が外に出て来た。
「ねぇ太郎ちゃん。チャダの靴はないの?」
「靴?ああ、そう靴、無い…んだな…。」
ある訳ないよね。昨日迄の移動手段は俺のポケットだし。
「無いって、じゃあチャダはどうやって此処まで来たの?」
「あの靴、片方壊れちゃってね、そのゴミとして…。」
不審そうな目で由紀恵は俺達を見る。もっと上手い言い訳をしたかったが出てこなかった。
深く溜め息をついて由紀恵は改めて俺達を見渡すと
「もう!靴は修理できるのよ!太郎ちゃんが勝手に靴を捨てたのならちゃんと弁償してね。それと私達、これからお買い物に行くから。」
「は?え?買物??誰と??」
「誰って私とチャダしかいないでしょ?太郎ちゃんも靴買うんだからついて来るのよ!」
「あ、は、はい。」
「大雅さんはどうする?一緒にお買い物行く?」
「僕も行く。何か面白そう。」
何が面白そうなのか全然分からないが、一緒に来てくれるなら俺1人よりは心強い。
「じゃあチャダの靴は…太郎ちゃんのサンダルを一旦借りようかな。先ず最初に靴だね。時間も時間だし余り遠出したくないから、今日は隣駅の駅ビルに行きましょう。ね、チャダ。」
「うん。」
扉奥からおずおずとチャダが現れた。
最初に選んだギンガムチェックのワンピースと由紀恵が選んだんだろう上着を羽織っている。髪も纏めていて雰囲気が今朝と全然別次元の仕上がりだった。
「太郎、大雅、どう?」
「……………う、うん。」
ちょっと待って。ちゃんとすれば女子ってこんなに変わるの?
確かに一美ちゃんも外に出る時は普段より三割り増しで綺麗になるし、仁衣那ちゃんもTVで見る時は「一体誰だ」レベルに変わる。
もしかして今回はそれ以上かも。意味無く緊張してきた。
「チャダ、ホラ、みんな戸惑っているわよ。」
「とまどう?」
「可愛くてびっくりしてるのよ。」
可愛い。うん。ぶっちゃけた話、人に変化したチャダは普通に可愛いと思う。
だけど、俺が昨日まで見ていた5センチ程しない小さな雪だるまみたいな丸っこい生き物がコレだよ?食い意地あり過ぎて夕飯のポテトサラダにダイブする様な生き物だよ?普通に語彙力失くすわ。
たださえ丸っこい生き物から女の子になるのか分からないのに、更に綺麗になったらもう思考が消失してしまいそうだ。
「さあて。お買い物行きましょうか。殿方達は準備は良い?」
由紀恵の一言で我に返る。
大雅は学校帰りだから直ぐ外出が出来るけど、俺は部屋に居たままだった為ラフ過ぎてしまうのでみんなに待ってもらう。
買物か。由紀恵達は一体何を買う気なんだろう?
最初から靴は買う気だったから想定内だけど、他にチャダに必要な物があれば由紀恵が居る今、買い揃えるチャンスは此処しか無いだろう。
そっと自分の通帳を見る。女の子へ何か買ってあげたりした事がホワイトデーのお返ししか無い俺には未知数な話だ。
ちょっと覚悟してみんなが待つ外へと出掛けた。
化けるよね。女子。




