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新年度、新学期、新生活。何かと新しいが持て囃される季節到来となった。
無事俺も大雅も3年へと進級し、雷華は家業の傍ら時間があればバンド活動し、尚典もウェブライター等をしつつ様々なパイプを広げてる具合だ。
これからの活動内容やら目標、何をしたいかをブラッシュアップし円堂さんに相談した結果が
「名古屋に行ってみないか?」だった。
第一目標がオーディエンスを増やす。にした。
ライブハウスscreamではなんだかんだ集客も旅人宣言前ほどに戻ってきたし、新規獲得と掘り起こしを行う話の中、突然そんな円堂さんの提案だった。
scream以外でもライブハウスの経験値はあるよ?でも関東圏しか無く、此処まで離れた場所は初めてだ。
「GW前に知り合いの箱で定期イベントがあるんだけど、最近マンネリ気味だからコッチで面白い子、いるかって聞かれたんだよ。」
3月終わりに近いある日、そんな切り出し方だった。
「学生も居るから開催が週末なら紹介するって話したのさ。」
正直、そんな会話の中で自分達の名前が上がるのは光栄だ。
「君達の名前を出したら知ってるってなってね。どうやら動画見ていたそうだよ。来て欲しいってさ。どうする?」
ネットは地球上で環境さえ整っていれば何処でも誰でも見れる事は出来るが、改めて知らない土地の知らない人が見てくれていたのは嬉しい話である。
「え?勿論行くよ?」
大雅のそんな一言で初の地方遠征が決まった。
「そんな訳で来週いっぱいは可能な限りシフトに入りますので、この期間中のお休みをお願いします。」
シフト変更用紙をバイト先の店長に手渡し深々と頭を下げる。
「いいよー。繁忙期も今週の入学式さえ終われば落ち着くからねぇ。そうは言っても毎回店の融通聞いてくれるのは、蕪木君くらいだからね。我々も聞いてやらなきゃ。」
ポンと書類に承認印を押しながら店長は笑ってくれた。
「しかし凄いね。地方のライブハウスに呼ばれるなんて。そろそろ蕪木君のサイン貰っておいた方が良いかな?」
「偶々です。偶々自分達の事を知ってくれてただけで。」
「偶々や偶然も実力の内だよ。勿論それだけじゃダメだけど、そうじゃないから話が来るんだよ。」
「ありがとうございます。」
店長は何時も嬉しい言葉を用意してくれるんだよな。
可能な限り店長や円堂さんの期待に応える様にしたいと改めて思った。
「そういや自主制作の費用は貯まったかい?」
「はい。名古屋遠征が終わったら収録予定です。」
「店にCD置いちゃおっか。本部にバレない様に。」
「有難いですが、何かあった時、店長が怒られるのは…」
まあまあ、冗談だよ。と店長は笑ってくれた。
春の文房具屋は矢張り忙しい。
新学期、新年度は筆記用具がとかく売れる。
入学・入社祝いは勿論、新年度なので新しく鉛筆やシャープペンシル。新しいノート、ファイルに切り替えたりする人が多いのでガンガン売れる。
毎度お馴染み、ギリギリにやって来る地域の子供会役員さんも新入生を祝う会の景品としてノートと鉛筆の組み合わせで今回も沢山ラッピングもやった。
今週中に入学式は各所行う予定だから、店長の言う通り忙しいのは今週までだろう。頑張ろ。
今日も忙しない中、閉店迄働き片付けてタイムカードを押す。
そっと見下ろし胸ポケットを見るとチャダは眠っていた。
最近は着いてくる事が多く、今日みたいに学校からのバイトで終日部屋にいない場合はこんな感じで一緒に過ごしている。
そして気付いた事がある。
「たろ…おはよ…」
「今、思いっきり夜だけどな。」
地下鉄に向かう街の喧騒の中、ポケットの中からチャダが声を掛けてきた。
「なら、こんばんわ?」
それも違う気がするけど、まあいいや。
「最近よく寝てるけど、チャダ、大丈夫か?」
「うん。なんかすごいねむいんだよね。はるだから?」
絶対それだけじゃないよね。でも気付いた事とはこの事だ。
外出中に様子を見る度に眠っているのが特に最近多い。確かにずっとポケットの中だと寝るくらいしかやる事ないけど、それにしたってちょっと長すぎる。
部屋に帰れば起きて何時もの通りに過ごしているが、それでも夜は一緒に就寝するからな。
「何も無ければいいんだけどな。」
「なにもないよぅ!きょうもげんき!」
とりあえず本人の申告を信じるか。考えを名古屋遠征に切り替えていこう。
新年度です。
良く大雅は進級出来たな。私が驚きだわ。




